“Bリーグ最小”の選手が最下位・新潟を救う!? 27歳の冨岡大地が初B1で起こしていること

大島和人

プロになるために独学で英語を習得

記者会見に臨む冨岡大地 【©B.LEAGUE】

 冨岡に話を聞けば聞くほど、唯一無二の“激レア”なキャリアに驚かされた。小柄なPGと言っても、例えば富樫は中学で全国制覇を達成して、留学から帰国すると19歳で華々しいプロデビューを飾ったエリートだ。冨岡は小中高と「中国大会なら出たことがある」レベルで、全国大会とは無縁だった。そんな若者がプロになろうと志を立てることが、まず異色だ。

 彼には人並み外れた意志の強さがあった。例えば通訳レベルの英語力は短期留学を除くと日本国内で、独学で身に着けた。

「プロになりたかったので、英語を喋りたかったんです。ずっと自分でやっていました」

 広陵高時代には人づてに紹介を受け、アマチュアアスレチックユニオン(AAU/アメリカではメジャーな高校生年代のリーグ戦)に参加したことがある。その経験は、彼をさらなる英語習得に駆り立てた。

「英語をかなり準備していたけれど喋れなくて『うわ、英語を勉強しなきゃ』と思いました。友達に、一緒にバスケをしているアメリカ人の英語の先生がいて、その人に教えてもらいました。家庭教師をしてもらったというより、一緒にご飯食べに行ったり、一緒にバスケしに行ったりして、できるだけ英語に触れるようにしていました」

自ら運命を切り開いてきた男の価値

 冨岡は言う。

「別に特に何かきっかけがあったわけでなく、小さい頃からバスケが好きで続けていたら、周りの人の助けがあって、コネクションを使わせてもらった。バスケが好きでやり続けていたら、プロになれた」

 文武両道という使い古された言葉がある。冨岡は“武”を志す中で、目的を達成する手段として「文」を磨いた。プロになるために英語を磨こうという発想を持つバスケ少年がまず珍しいし、それを独学で達成できる若者はもっと希少だ。しかし小柄なPGの努力は実った。

 160センチ台半ばの身長で、いわゆる名門校を経由しなかった青年は、文武の努力を続けてB1のコートに立っている。ようやくたどり着いたB1でも、周囲が期待していた以上のパフォーマンスを発揮している。

 2022-23シーズンのB1は降格制度が復活した。渋谷には勝ったものの、新潟はまだ3勝16敗と全24チームの最下位に沈んでいる。チームがB1でサバイバルするために、立て直しは急務だ。しかし努力を続けて運命を切り開いてきて、プレーに人並み外れた貪欲さを持つ冨岡の価値は、そんな状況だからこそ引き出されるに違いない。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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