B1西地区首位でも「課題」と向き合う琉球 伸びしろは“1対1頼み”からの脱却と、セカンドユニット

大島和人

ハンドラーに挑戦するウイング陣

牧(中央)は9カ月振りの復帰を果たした 【©B.LEAGUE】

 田代直希、牧隼利は負傷による長期離脱から復帰したばかりで、ここから状態を上げていくだろう。また新加入の松脇圭志は185センチながら2メートル級の外国籍選手に対応できる守備力を持ち、オフェンスの能力も低くない。3人の主戦場はウイング(SG/SF)だが、ハンドラーとして可能性を持っている。そんな彼らがボールを運ぶ、守備を引き寄せてパスをさばくといったプレーをスムーズに遂行できれば、相手は的を絞りにくくなる。

「PGへのディナイ(筆者注:ボールを持たせないようにする対応)、PGからボールを離させる(守備)というのはどのチームもやってきます。僕たちのチームにとっては、それが有効でない状態を作った方がいい。ハーフコートに入ったとき、ハンドラーの3人いるチームが一番強いと思っています。彼らがそこをできるようになれば、自ずといいバスケットができるようになる」(桶谷HC)

チームと選手の成長を考えて

 チーム作りはもちろんだが、選手のキャリアを考えても「ハンドラー/ガードへの挑戦」は意義のある取り組みだ。44歳ながら17シーズン目のキャリアを迎える指揮官は、こう述べる。

「この選手が出ているときはどのプレーを使おうとか、相手のここにウィークネスがあるから攻めようということを、しっかり密に話しながらできています。そこは自分たちにとってかなり大きい。それにPGをやれば(選手の)IQは絶対に上がってくる。いい挑戦かなと思っています」(桶谷HC)

 キャプテン田代の復帰にはこのような意味合いもある。

「田代は色んなことを考えて、失敗を一杯しながら、泥臭く成長していくタイプ。ただ最終的にはネガティブなことも、ポジティブに持っていける選手です。(琉球は)どちらかというとシンプルに考える選手が多いですけど、違うタイプがいて、アイディアが出てくる。田代しか持っていない思考は、チームにとってすごく重要かなと思っています」

より「チームで崩す」スタイルへ

 牧は24歳で、188センチ・88キロのSG。11月19日の滋賀レイクス戦で9カ月ぶりのリーグ戦出場を果たし彼はこう口にする。

「昨シーズンはどちらかというと1対1、個の力の強い選手が多かったイメージです。今年はもう少しチームとして、組織的にバスケットをしていかなければいけない。個の力は引き続きあるので、自分はうまくバランスを取って、回せる存在になりたい。得点やアシストに直接つながるプレーというより、チームの流れを作るハンドラー、起点となれたらいい」

 4日のFE名古屋戦後には、新しいスタイルへの手応えも語っていた。

「今日の第3クォーターはボールを動かしてズレを作って、そのズレを使ってシュートをクリエイトしたり1対1を使ったりして、ボールを停滞させずにやれる場面が要所要所で見られました。ここまで見られなかった動きだったと思います」

 PGに頼らず、ウイングも含めた3人がハンドラーの役割を果たす。1対1に頼り過ぎず、チームでボールを動かして崩す。それが今季の琉球が目指すスタイルなのだろう。西地区の首位でありながら、まだ“伸びしろ”を充分に残している――。そんなチームの成長が楽しみだ。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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