連載コラム「工藤公康の野球ファイル」

工藤公康さん執筆コラムの連載がスタート! ネット裏から見えたプロ野球の世界

工藤公康

チームマネジメントをどう考えるのか?

ソフトバンク監督時代、チームを5度の日本一に導いた工藤氏が考えるチームマネジメントとは? 【写真は共同】

 私はよく、監督という仕事の大変さや、どういったマネジメントをしていたのかという話を問われます。正直なところ、私自身はあまり大変だと思ったことや、「どうチームをマネジメントすべきか?」など考えたことはありません。

「チームが勝つためには?」「日本一に向けてチームがひとつになるためには?」「個の力を引き上げるためには?」「選手が1年でも長く野球を続けられるためには?」私は、いくつもの「?」に対して、どのようなステップを踏んで答えを導き出していくのかを常に考えていました。それが結果的にチームマネジメントになるのだと思います。方法や考え方は何通りもあります。どれが正しいというわけではありません。

 私自身は、これまで多くの経験をさせていただき、たくさんの方々から学び、ときには選手にも話を聞き、「勝つためには何をしなければいけないのか?」「負けないチームを作るために必要な要素は何か?」その方法を模索してきました。自分自身の信念や情熱をもとにチームを作り、選手に未来を見せてあげることが監督の仕事であり、大きな魅力ではないかと思っています。

目の前の勝敗よりも大切なこと

 今シーズンは、セ・リーグはヤクルト、パ・リーグはオリックスが優勝し、オリックスが日本一となりました。日本シリーズの戦いを見て、両チームの監督としての信念、シーズンを通してやってきた野球を信じてやろうとする想いがとても伝わってきました。

 結果に関して言えば、野球というスポーツ、ましてやプロの世界なので、うまくいくこともあれば失敗してしまうこともあります。結果や勝敗というよりは、今まで話してきたように過程や経緯、そしてその結果をどのように未来に結びつけるのか、私はそこが一番大切だと思っています。

 純粋に勝ったチームを称え、結果に関わらず、まずはシーズンを戦い抜いた選手を労う気持ち、これはすべての監督さんが思っていることでしょう。勝つことができたチームは、その経験をどのように次のシーズンにつなげていくか。惜しくも負けてしまったチームは、その悔しさを自分自身の成長にどのようにつなげていくか。

 勝つ喜び、負けた悔しさ、そういった経験のすべては自らを成長させてくれる貴重な財産だと思います。学びや気づきを与えてくれる、その中で新たな自分を発見させてくれる機会でもあります。その経験から得られる学びを私は大切にしていきたいです。

 オフシーズンになり、それぞれのチームが今年の結果を受け止め、秋季練習からオフシーズンの練習に励んでいることでしょう。選手個々がじっくりと粘り強く、腰を据えて取り組めるのがこの時期になります。時間をかけることの大切さや人の身体の仕組み、トレーニングやコンディショニングなど、さまざまな知識を貪欲に集めることで、見えてくる部分もたくさんあります。

 ぜひ次回以降にそういった話もできればと思っています。

<第2回へつづく>

(企画構成:スリーライト)

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著者プロフィール

1963年5月5日生まれ。愛知県出身。名古屋電気高校(現:愛知名電高校)から1981年、西武ライオンズからドラフト6位指名を受け、入団。西武黄金期を支え、福岡ダイエーホークス、読売ジャイアンツ、横浜ベイスターズに在籍。現役時代は14度のリーグ優勝、11度の日本一に貢献し、優勝請負人と呼ばれた。現役通算で224勝を挙げ、最優秀選手(MVP)2回、最優秀防御率4回、最高勝率4回など数多くのタイトルに輝き、正力松太郎賞は歴代最多に並ぶ5回受賞。2016年には野球殿堂入りを果たした。2011年に現役を引退後、2015年に福岡ソフトバンクホークスの監督に就任。7年で3度のリーグ優勝と5度の日本一に導いた。現在は野球評論家として活動しながら、筑波大学大学院博士課程に進学。スポーツ医学博士取得に向け研究や検診活動を行っている。

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