W杯・日本代表のドイツ対策 『5バック崩し』を凌げるか…サイドからカウンターを狙え!
ドイツの中心といえば、キミッヒ。的確なパスでチームをたばねるコントロールタワー。試合の流れを読む力もたしかだ 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】
スペインよりもアグレッシブで縦へ、縦へ
その丸いボールを足で扱う。手で掴むことは許されない。常にボールは誰のものでもなく、ただ、その空間を漂い続ける。「ボールを持った」は擬似的な表現であり、実際には足もとに置いているだけ。簡単に転がり、簡単に相手に突っつかれるので、攻守がいつ入れ替わるのかは、誰にも予測できない。ボールは丸いのだ。
スペイン代表は、その丸いボールを圧倒的な技術と戦術で、まるで「本当に持っているかのように」コントロールする。丸いボールの不規則性を、世界一抑制できるのがスペインの特徴だ。
それは相手が誰でも変わらない。直近のUEFAネーションズリーグ・リーグAにおけるスペイン代表は、平均ポゼッション率が70.8%と、サッカーの不規則性を抑えた圧倒的なゲームの支配者になっている。
一方、ハンジ・フリック率いるドイツ代表も、同大会の平均ポゼッション率が65.7%と、スペインに次ぐ高さを誇る。こちらも主導権を握るチームであることは明らかだ。
ただし、ドイツのアプローチはスペインとは志向が異なる。ひと言で言えば、よりアグレッシブだ。ボールを回してはいるが、回すことに力点はなく、すぐに縦へ、縦へとゴール方向に運ぶ。
安定したポゼッション状態でも、それに落ち着かず、距離の長いクサビをバンバン入れて勝負するし、ロングボールも蹴る。休まない。落ち着かない。常に、フリック、フリック。
当然、そこではボールを失う可能性が上がり、何が起こるのかわからないサッカーの不規則性は増すことになる。
最初のクサビのパスをいかに封じられるか
左サイドバックのラウム(左)が高い位置を取り、3-2-5の形で攻撃を組み立ててくる。伊東との攻防は見ものだ 【写真:ロイター/アフロ】
シュートに近いようなクサビを入れ、それをワンタッチで事もなげに落とす精度が、呆れるほど高い。横パスで振る回数が少ないので、鋭くクサビを入れた先のスペースは狭いが、入れて落として、入れて落として、敵が食いつけば、一気に背後を攻め落とす。速い、とにかく速い。
また、仮にそうした果敢なプレーでボールを失っても、ドイツは周囲の密度を生かし、すぐにゲーゲンプレス(カウンタープレス)で襲いかかる。奪ったら、またゴールへ突撃だ。攻守に切れ間がなく、常時、圧が強い。それがフリック・ドイツ流のゲーム支配術だ。
丸いボールをコントロールするのではなく、丸いボールを囲って制圧する。不規則に動くボールが、一時足もとから離れても、囲いの外へ出さない。すぐに奪い返す。まるで攻守のフェーズなど存在しないかのように、連続的にボールを囲い込み、その不規則性とともに支配しようとするのが、ドイツのやり方だ。
今のドイツは相手をまったく休ませない。そのゲームスピードに付き合って、まともに殴り合えば、大量失点も覚悟。日本はどう戦うべきなのか。
細かい話をしよう。ドイツの基本システムは4-2-3-1だ。ビルドアップは最後尾を3枚に変形し、左サイドバックのダビド・ラウムを高く上げた3-2-5をベースに、縦パスを刺してくる。
中盤のヨシュア・キミッヒ、イルカイ・ギュンドアンは、ポストプレーで落とされたボールを、まずは背後へダイレクト、それが無理なら自ら運んだり、サイドへ展開したりと変化を加える。
やはり厄介なのは、最初のクサビだ。これを通されると、日本のボランチなど守備者の目がいったん後ろへ振り回されるため、ポストプレーが入ったとき、キミッヒとギュンドアンがフリーになりやすい。彼らが前向きにボールを持つと、ドイツはテンポが上がり、襲いかかってくる。