連載小説:I’m BLUE -蒼きクレド-

[連載小説]I’m BLUE -蒼きクレド- 第18話「元主将の“介入”」

木崎伸也 協力:F
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舞台は2038年。11月開催のインド・ワールドカップに向けて、日本代表は監督と選手たちの間に溝が生じていた。
日本代表の最大の弱点とは何か?
新世代と旧世代が力を合わせ、衝突の中から真の「ジパングウェイ」を見いだす。
木崎伸也によるサッカー日本代表のフィクション小説。イラストは人気サッカー漫画『GIANT KILLING』のツジトモが描き下ろし。
 千葉アリーナ、日本対中国――。
 バックスタンドの最上段で、上原丈一はベースボールキャップのツバを強く握り締めた。キャップを投げ捨てたい衝動にかられたが、元代表キャプテンとしての知名度は理解している。バレたら客席で騒ぎになるだろう。ピッチを見つめてぐっと堪えた。

【(C)ツジトモ】

 0対0。
 後半30分をすぎても、日本はゴールを決められる気配がない。意味不明なポジションチェンジを繰り返し、自分たちで混乱を招いている。
 戦術以上に気になったのは、ミスが起きたときの態度だ。表面上は互いに意見をぶつけ合っているが、丈一の目からすると本気に見えない。コミュニケーションだけでなく、次第にプレーからも熱が失われ始めた。限界を超えて200%を出そうとする者は存在しない。その場しのぎの80%のサッカーだ。
 わざわざアメリカから観に来た試合がこれか――。
 かつての仲間たちに、新しい選手たちに、腹を立てずにはいられなかった。

 ことの発端は、4日前のチリ戦だった。
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著者プロフィール

1975年、東京都生まれ。金子達仁のスポーツライター塾を経て、2002年夏にオランダへ移住。03年から6年間、ドイツを拠点に欧州サッカーを取材した。現在は東京都在住。著書に『サッカーの見方は1日で変えられる』(東洋経済新報社)、『革命前夜』(風間八宏監督との共著、カンゼン)、『直撃 本田圭佑』(文藝春秋)など。17年4月に日本と海外をつなぐ新メディア「REALQ」(www.real-q.net)をスタートさせた。18年5月、「木崎f伸也」名義でサッカーW杯小説『アイム・ブルー』を連載。

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