J2で過去最低成績の大宮に何が起きていたのか? 主将・富山が語る「迷い」

平野貴也

シーズン途中で新主将に就任、心掛けた「得意なプレーを出させること」

富山が大宮に在籍するのは3度目。クラブに強い愛着がある 【(C)1998 N.O.ARDIJA】

――7月末に主将を務めていた三門雄大選手がJ3の今治へ移籍し、富山選手が主将を任されました。どんなことを心掛けましたか?

 主将はやったことがなかったので、重圧を感じました。今まで三門選手や菊地光将選手(山口に所属、今季限りで引退。大宮で長く主将を務めた)にふざけて「主将だろ? 率先してやれよ」とかふざけて言ったこともありますけど、もうそんなことは言えないですね(笑)。どのチームでも主将をやる人はすごいな、大変だなと思うようになりました。

 ただ、あまり、やることを変えたつもりはないですね。唯一、もっとやろうと思ったのは、周りの選手の得意なプレーを出させたい思いで声をかけたことです。ドリブルが得意なMF柴山昌也には「もっとカットインして、顔を上げてゴールを見ろ。FWに当てて落としてシュートを狙え、攻撃の選手はアシストよりゴールだぞ」とか。ツートップを組むFW中野誠也には「あまり中盤に下りずに(得意とする)相手の裏で勝負しろ」とか。FW河田篤秀は、チームプレーの面で守備を頑張りますけど、アイツは外国籍選手みたいに得点にこだわってすごい感覚があって、どこからでもシュートを狙えるのが特長だから「守備はオレがやるから、ずっと前にいろ」とか。それぞれの特長が出やすくなるように声をかけていました。

――主将になって大きく変えるところがなかったのは、元からチームを引っ張る意識があったからだと思います。プロ10年目で31歳。キャリアを始めた大宮に在籍するのは3度目(ほかに鳥栖、新潟、北九州で4シーズンプレー)で、新体制発表会見から意気込みを感じました。

 同じチームで3回も新人としてあいさつする選手は、あまりいないですよね(笑)。何か分からないですけど、大宮、好きなんですよ。この順位だし、あまり結果は出ていないですけど。僕のときだけ、応援の声や音がちょっと大きいと感じるところもあって、チームに何かダメなところがあっても、ここで結果を残したい気持ちになります。3回目の在籍ですし、どんな形でもいいから結果を残して恩返ししたいという気持ちで臨んでいました。

――新人の頃からチームに貢献したい気持ちが伝わってきていましたが、以前は寡黙にプレーで頑張るスタイル。周りに声をかけて鼓舞するタイプではなかったですよね。

 確かに、黙々とやるタイプでしたね。でも、主将になって、声を出して盛り上げるとか、チームを引き締めるとか、そういうことも大切だと学ばせてもらいました。やらなければいけない立場に追い込まれた方が、力を発揮できるのかなとも感じました。

「ゼロからやり直さないといけない」

最終節で選手を代表してあいさつをした富山。出直しを誓う来季の巻き返しに期待がかかる 【(C)1998 N.O.ARDIJA】

――あまり主張をしない選手が多いのは、このチームの特徴であり、課題ではないかとも思います。仲間への要求はあまりせずに黙って周りをサポートしようとする選手が多いとも感じます。

 今の選手は、みんな、優しすぎるかもしれませんね。上のステージに上がっていく選手は個性があるものだと思います。昔の方が、我が強いというか、個性が強い部分は、ありますね。ノヴァコヴィッチやバンさん(播戸竜二)は味方のパスに対して要求がハッキリしていました。自分の特長を発揮するために、味方に要求することは、すごく大事。渡邉大剛さんは、コミュニケーションが上手くて、位置取りやタイミングの話をよくしました。アキ君(家長昭博=川崎F)は多くを語らないけど「困ったらオレに出しとけ」という感じで、マークされていても常にパスを受けた。要求に限らず、自分の中で譲れないものを持っている選手は、昔の方が多かったかもしれません。チョ ヨンチョル君(栃木シティ)と渡部大輔(相模原を今季で契約満了)は、練習でも全然譲り合わずにバチバチとやり合っていました。

 今の選手も、もっと要求や主張はしていいと思います。主張しかしないのはダメですけど、主張ありきの意見交換であるべきです。戦術通りか、個人の判断かのバランスが少し極端で、ずる賢く間を取れる選手が少ない気もします。

――最終節には、ホームスタジアムでファン、サポーター向けのあいさつも行いました。ゴール裏には厳しいメッセージの横断幕もありました。

 当たり前のことだと思います。お金を払って応援に来てくれて、この結果では文句を言いたくなるのも分かります。しっかりと受け止めて、イチからというより、ゼロからやり直さないといけません。やるというのは簡単ですが、どうやるのかが難しいもの。その細かいところで段階ごとに目標を立てて、チームを一本にまとめるか。それがないと同じ繰り返しになると思います。

――最後に、まだ来季の体制が固まっていませんが、どんな気持ちで来季に向かいたいか、ファン・サポーターへのメッセージも含めて、聞かせてください。

 まず、支えてくださった方たちへ。声出し応援が解禁されてから、あれだけの声援があったにもかかわらず、結果を出せませんでした。6位以上でJ1昇格を目指すという目標が下方修正でJ2残留に変わり、不甲斐ないシーズンになったことを申し訳なく思っています。今後は、大宮アルディージャとして、皆さんの力を借りながら、しっかりと積み上げていくものを見せて、大宮という町の人や企業が応援しようと思える、「大宮は、アルディージャがあっていいよね」と言われるような価値を見出せる、そんな存在になって恩返しをしなければいけないと思っています。全部の試合を勝つのは難しいですけど「引き分けだったけど、最後まで熱く戦っていたな」とか「あの選手はすごく頑張るから、期待しよう」とかポジティブな気持ちになってもらえるように頑張りますので、これからも応援をよろしくお願いします。
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選手から見える光景だけが、すべてではない。クラブの運営には、当事者しか分からない難しさもある。しかし、自分たちのプレーに大きな責任があると感じて言い訳を嫌う選手が、厳しい結果を「なるべくしてなった」と受け止めていることは、クラブとしての臨み方に課題があると指摘せざるを得ない部分があるということだ。来季、チームは創立25周年を迎える。立ち直るシーズンにできるか、注目される。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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