世界ランク1位に胸を借りる、カーリングSC軽井沢クラブの大きな挑戦

竹田聡一郎

「おっさん若者おっさん若者で投げるうちは…」

今季からチームにナショナルコーチのロバート・アーセル氏(中央)が帯同。冷静に分析のできる存在が加わり、チームに貴重な情報をもたらしている 【(C)SC軽井沢クラブ2022-2023】

 その点では今季、SC軽井沢クラブにはロバート・アーセル ナショナルコーチが帯同している。「客観的にチームを見る目が常にあるのは本当に助かる」と山口が感謝を口にしたように、前がかりで得点を獲りにいくのか、リスクを排除すべきか、チーム状況は上向きなのか、疲れがあるのか。アイス内外での現状を分析してチームに共有してくれる存在は貴重だろう。

 また、大会1週間前からフィフスとしてサポートに回る谷田康真も現地で合流した。「自分にはない作戦の考え方があると思うので、そのあたりの話をしていきたい」と栁澤が期待したように、世界選手権やこの大会の前身であるパシフィック・アジア選手権で結果を出している経験豊富なカーラーがチームに新たなオプションを与えてくれるはずだ。

 山口、谷田以外の3選手は日本代表として初のオンアイスとなり、プレッシャーなどはあるのかという問いに山口は「心配はしていません」と笑う。

「おっさん若者おっさん若者(の順番で投げる)のうちは、いい意味で調子に乗りやすいチームなので、初めての舞台でポジティブなことを起こすイメージしか今はありません。しっかりコミュニケーションを取りつつ、この大会でさらに成長したいと思っています」

 男子の出場国は8カ国。上位5カ国に入り、来年4月の世界選手権(カナダ・オタワ)の出場枠を獲得するのが最低条件だ。初戦の韓国、序盤で当たるカナダ、中盤のアメリカとの対戦が上位進出の鍵を握るだろう。今季の好調を見る限り、もちろん油断も慢心も大敵ではあるが、オーストラリア、ブラジル、台湾、ニュージーランドとの試合ではアイスの情報を集めながら勝つという強者のタスクが求められる。

 特に注目すべき試合はカナダとの1戦だ。カナダ代表として出場するブラッド・グシューは、2006年トリノ五輪、2017年世界選手権でそれぞれ金メダルを獲得し、今季もランキング1位の間違いなく世界トップに君臨するチームのひとつだ。ここでどういった試合を見せるか、どんな結果を残すかが、今後のSC軽井沢クラブの、日本男子のカーリングの指標となるだろう。

 大会の抱負について「勝つことにこだわっていきたい」と、若き司令塔は力強く断言した。SC軽井沢クラブの世界挑戦が幕を開ける。

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著者プロフィール

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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