F1 2022年シーズン日本GP特集

角田裕毅の日本GPを忖度ナシで予想 初めてF1マシンで鈴鹿を走る影響は?

柴田久仁夫(auto sport)

全体的に実力が底上げされている今季、アルファタウリは昨年に比べ苦戦を強いられている。そんな状況下においても一戦ずつ成長を続ける角田。かつて走り込んだ鈴鹿で、どれだけの奮闘を見せてくれるだろうか。期待は高まる。 【Red Bull Content Pool】

 3年ぶりの日本GPが、いよいよ今週末に開催される。角田裕毅にとっては、満員の母国ファンの前でF1マシンを初めて走らせる凱旋レースとなる。舞台となる鈴鹿は、16歳でHRS(ホンダレーシングスクール)に入校し、フォーミュラカーの腕を磨いてきた角田の原点のサーキットでもある。ここでは3つの観点から、角田の日本GPの行方を占ってみたい。

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1. 中団勢に追いつきたいアルファタウリ

 今季のアルファタウリは、激烈な中団グループの争いの中で厳しい戦いを強いられている。アルピーヌやマクラーレンといった中団上位のチームに離されているだけでなく、昨年までは下位に沈んでいたハースやアルファロメオもコンスタントに入賞している。いわばF1全体の実力が、底上げされた状況といえる。

 そんななか、アルファタウリの戦力は、相対的にかなり劣っている。昨年110ポイントを稼いで選手権9位だったピエール・ガスリーが、今季はわずか23ポイントで13位にとどまっているのを見ても明らかだ。

 今季のAT03は冬のテストでガスリーがトップタイムをたたき出すなど、ポテンシャルの高さが大いに期待された。しかしいざ開幕すると、序盤は何とか入賞を重ねたものの、ダウンフォース不足とマシンバランスの悪さが露呈し、ライバルたちに遅れを取っていった。

 夏前に大きな空力アップデートを投入したが、中団上位勢に追いつくほどの戦闘力回復は果たせずにいる。予選、レースと立て続けにトラブルに見舞われた3月のサウジアラビア、入賞目前でリタイアを強いられた9月のオランダなど(いずれも角田)、信頼性も万全とは言えない。

 ではアルファタウリは、鈴鹿でどんな戦いができそうか。鈴鹿は優れた空力特性と、エンジンパワーが要求されるコースだ。シケイン立ち上がりからターン1までの全開区間では、ホンダパワーが存分に威力を発揮してくれることだろう。一方で高速S字からデグナーまでは、ダウンフォース不足が大きな足かせになりそうだ。今季のアルファタウリはアゼルバイジャンやシンガポールなど、直角コーナーの連続するストップ&ゴーサーキットで速かった。まったく対照的なコース特性である鈴鹿は、AT03にとっては不得意なサーキットと言わざるをえない。

2. 目に見えて成長し続ける角田

シンガポールGPまでの17戦を終え、角田が入賞したのは第1戦バーレーン(8位)、第4戦エミリア・ロマーニャ(6位)、第6戦スペイン(10位)の3戦。リタイアが5回と多く、全ドライバー中ワーストタイとなっているのが気がかりだ。 【Red Bull Content Pool】

 ここまで17戦を終えた時点で、角田は入賞3回。11ポイントを獲得して、選手権17位という成績だ。ガスリーの入賞6回、23ポイントで選手権13位と比べると、確かに見劣りがする。ただし上述したトラブルや、戦略ミスなどがなければ、より多くのポイントが獲得できていたはずだ。さらに予選では対ガスリーで6勝11敗。1年目の昨年が1勝21敗だったことを思えば、今季の角田が着実に成長しているのは間違いない。

 ドライビングミスも、大きく減った。昨年はガスリーを意識しすぎて、フリー走行でいきなりクラッシュということが何度もあった。それが今季は、レース週末のスムーズな流れを意識した結果、ガスリーと同等か、それをしのぐ速さを身につけつつある。Q2落ちしたガスリーを尻目に、9番グリッドを獲得したオランダGPはその典型だった。

 そんな安定性を発揮しているだけに、ミスを犯すと逆に悪目立ちしてしまう。カナダ決勝レースのピットアウト直後のクラッシュ、そして先週シンガポールのレース中の二度のミスが、まさにそうだった。本人も「完全に自分のミス」と認めており、これは課題のひとつであろう。

 前項で述べたようにAT03のマシンパッケージは、鈴鹿ではかなり苦労しそうだ。普通に考えれば、Q3突破はかなり高いハードルといえる。さらに抜きにくいコースレイアウトであるために、グリッド後方から入賞圏内までたどり着くのは決して簡単ではない。ただでさえ難易度の高い鈴鹿を、F1マシンで走った経験がないのも大きなハンデとなるだろう。とはいえ同じく初走行だった前戦シンガポールは、初日のトラブルや二日目の雨で満足に周回を重ねられなかったにもかかわらず、見事にQ3へ進出してみせた。もちろん鈴鹿とはまったくコース特性が違うし、こちらはアルファタウリマシンの美点が出やすいコースだった。しかし難易度に関しては、シンガポールもかなり高い。限られた周回数だったにもかかわらず、そこで速さを見せたことは大きな自信になったはずだ。

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