F1 2022ドライバー戦力ランキング

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 F1ドライバー全10チーム/20名を『マシン戦闘力』『チーム力』『一発の速さ』『決勝の強さ』『精神力』の5項目に沿って点数づけしてみると、現在置かれている環境での真価が見えてくる。 ドライバーとチームの総合力をランキング形式にして解説していこう。
(企画構成:autosport、文:柴田久仁夫)

※各項目それぞれ20点満点、総合100点満点で採点

順位 ドライバー(チーム) 合計 マシン戦闘力 チーム力 一発の速さ 決勝の強さ 精神力
1 M.フェルスタッペン(RedBull) 94 18 18 18 20 20
2 S.ペレス(RedBull) 86 18 18 14 18 18
2 L.ハミルトン(MERECEDES) 86 14 17 17 18 20
4 G.ラッセル(MERCEDES) 85 14 17 18 18 18
5 C.ルクレール(FERRARI) 83 16 12 19 17 19
6 F.アロンソ(ALPINE) 79 10 15 17 18 19
7 C.サインツ(FERRARI) 78 16 12 16 16 18
8 L.ノリス(McLaren) 73 8 15 16 16 18
9 E.オコン(ALPINE) 67 10 15 13 14 15
10 D.リカルド(McLaren) 65 8 15 12 12 18
10 V.ボッタス(ALFA ROMEO) 65 7 10 15 16 17
10 A.アルボン(WILLIAMS) 65 6 11 15 16 17
13 P.ガスリー(ALPHATAURI) 63 6 9 15 16 17
14 周冠宇(ALFA ROMEO) 59 7 10 13 13 16
15 角田裕毅(ALPHATAURI) 58 6 9 15 14 14
16 K.マグヌッセン(HAAS) 57 7 12 14 12 12
17 S.ベッテル(ASTON MARTIN) 56 5 10 13 14 14
18 L.ストロール(ASTON MARTIN) 53 5 10 12 13 13
19 M.シューマッハー(HAAS) 52 7 12 10 11 12
20 N.ラティフィ(WILLIAMS) 46 6 11 8 9 12

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マシンの仕上がり具合が勝敗に影響を及ぼすことは確かだが、セッティングにはドライバーからの適切なフィードバックが欠かせない。ドライバーはマシンを作り上げ、チームを率いる能力も試される【Red Bull Content Pool】

 F1は『究極のハンディキャップスポーツ』と言われる。道具であるF1マシンの優劣が、ドライバーのパフォーマンスを大きく左右するからだ。圧倒的な強さで選手権独走中のマックス・フェルスタッペンでさえ、ハースやウイリアムズのマシンだったら勝利どころか表彰台も難しいだろう。

 という前提で5つの項目を設定し、全20人のドライバーの総合力を評価してみた。『マシン戦闘力』は車体、パワーユニットを合わせたパッケージとしての戦闘力、そこに信頼性も加味している。『チーム力』は、グランプリ週末の状況、コンディションに応じて、いかに最適なマシンセッティングを施せるか、いかに最適な戦略を立案し、それをミスなく遂行できるかを評価した。

 つまりドライバー本人の能力が高くても、この2項目の点数が低いためにランキングが下がってしまう場合も当然出てくる。

 残り3項目はドライバーに関するもので、『一発の速さ』は予選での速さに限らず、たとえば未知のコースでいきなりトップタイムを叩き出すなど、『素の速さ』とでもいうべきものだ。そして『決勝の強さ』は、スタートの巧さ、危機回避能力、タイヤの持たせ方、臨機応変の判断力などを含む。

 最後の『精神力』は、数値での評価が一番難しい項目だった。そもそもF1に来るほどのドライバーの精神力が、弱いはずはない。それでも言動や戦いぶりから、相対的な優劣は見えてくる(と思う)。

 では具体的に、内訳を見てみよう。

 ランキングトップは、2連覇目前のマックス・フェルスタッペン。全20人のドライバー中、満点項目があるのは彼とハミルトンだけだ。ただしフェルスタッペンは『精神力』に加え、『決勝の強さ』でも20点をつけた。今季のマックスは、持ち前の安定した速さ、しぶとさに加え、レースで一歩引く戦い方もできるようになった。そして他人の非難などまったく意に介さない図太さ、苦境をクールに切り抜ける冷静さは、デビュー当時から変わらない。

 一方で『一発の速さ』は、ルクレールにわずかに劣ると判定した。ルクレールには、何としてでもポールを奪い取るという気迫で、時に神がかった走りを見せるところがある。フェルスタッペンに、そこまでの必死さは感じられない。もちろんマシン特性の違いもあるが、フェルスタッペンは基本的にレース重視という印象だ。

 次代を担うこのふたりは、ドライバーとしての資質という点では大きな差はないはず。それでもランキングでルクレールが5位に沈んだのは、まず何よりもフェラーリマシンの壊れやすさ、そして戦略やオペレーション上の度重なるミスで、『マシン戦闘力』と『チーム力』で大きく減点したからだ。サインツもその影響を受けて7位にとどまった。フェラーリのチーム力がメルセデスはいうまでもなく、アルピーヌやマクラレンにも劣るという評価は、決して不当ではないはずだ。

ドライバー能力で突出するアロンソ

中団勢であっても、チャンスがあればトップチーム相手に果敢にオーバーテイクを仕かけていく、そんなドライバーの姿にチームスタッフは鼓舞され、結束力が高まっていく【Alpine】

 ルクレールとは逆に、ペレスは『マシン戦闘力』『チーム力』の点数が高いおかげで、2位につけた。ただドライバーとしてのペレスの弱点は、やはり一発の遅さだろう。小林可夢偉のチームメイトだったザウバー時代から、それは変わらない。

 そして同率2位にルイス・ハミルトン、3位にジョージ・ラッセルと、メルセデスの二名が続く。今季苦戦中の『マシン戦闘力』で大きく減点したものの、メルセデスの現行ラインナップの強力さは、レッドブルやフェラーリをしのぐ。ラッセルは『予選の速さ』で上回ったが、『精神力』で差をつけられている。タイトル7回獲得のハミルトンのメンタルの強さは文句なしに20点であろう。

 中団勢で注目すべきは、現在選手権9位のフェルナンド・アロンソが、サインツらを抑えて6位に浮上したことだ。アルピーヌの『マシン戦闘力』はフェラーリに劣るが、『チーム力』では負けていない。さらにアロンソはドライバーの能力を示す3項目で、フェルスタッペン、ハミルトン、ルクレールに次いで、ラッセルと同率4位につけた。41歳にして彼らと同等のパフォーマンスを発揮しているのは、驚異と言う他ない。

 その意味ではもうひとりの現役世界チャンピオン、セバスチャン・ベッテルが下位に沈んだのは残念だった。アストンマーチンの戦闘力のなさに加えて、今季のベッテルはドライバーとしても、全盛期の迫力はない。とくに引退表明後は、心が折れてしまったかのよう。大好きな鈴鹿で、奮起してくれればいいのだが。

 そしてダニエル・リカルドも、今季の低迷を反映した結果になった。本来、『一発の速さ』『決勝の強さ』が、12点のドライバーであるはずがない。改善の打つ手がない状態、さらに来季のシートも決まらない。それでも努めて明るく振る舞う態度に、精神力だけは18点とした。

浮かび上がる角田の成長と課題

予選でのパフォーマンスに成長が感じられる角田。決勝でもその好調さをキープできるか、技術と精神のブラッシュアップが今後の課題か【Red Bull Content Pool】

 最後にアルファタウリのふたりについて触れよう。昨年以上の躍進が期待されたが、チームはマシン作りに失敗し、選手権8位に低迷している。AT03は戦闘力が低いだけでなく、トラブルも多い。さらにコースによって、予選が速い時はレースペースに難あり、あるいはその逆と、週末の一貫性に大きく欠ける。

 それらを考慮すると、『マシン戦闘力』『チーム力』ともに、かなり低く評価せざるをえない。では、ドライバーはどうか。

 今季のピエール・ガスリーは、マシンセッティングに手こずることが多い。初日に方向性を見失うと、改善できないまま予選、レースでズルズルと沈んでいく。その点は角田裕毅のほうが、うまく対処している印象だ。今季のマシン挙動が、比較的角田好みであることとも無関係ではないだろう。

『一発の速さ』でも、たとえば角田だけがQ3進出を果たしたオランダGP予選が象徴するように、角田はこの項目で大きく進化している。予選成績自体は6勝10敗だが、その伸び代を評価して同じ15点とした。

 角田の課題はフランツ・トスト代表も指摘するように、メンタルな部分だ。ここが改善されれば、予選、レースを通じてガスリーと互角の走りも見えてくるだろう。

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