部活動としては日本初の“トークン”発行 仙台大サッカー部が新たな資金調達法に挑戦する理由
全国大会の常連、仙台大サッカー部がトークン発行で資金を集める狙いとは? 【写真提供:全日本大学サッカー連盟/飯嶋玲子】
部活動の運営費は、一般的に教育機関の支給や部員からの徴収で成り立っている。外部からの募金は、全国大会出場の機会などに行われる「寄付」があるが、近年は、クラウドファンディングと呼ばれる募金の形が普及。仙台大も、2019年の天皇杯出場時に、応援団を含むチーム遠征費の約170万のうち6割にあたる約102万円を募った実績がある。今回のトークン型クラウドファンディングは、返礼品を渡すだけに終わらず、支援者とのコミュニティーを形成する狙いがあるという。トークンとは何か、大学の部活動がトークンを用いて資金調達に挑戦する理由は何か。仕掛け人である吉井秀邦総監督に話を聞いた。
トークン購入者がチームの企画に参加できる仕組み
新たな時代に対応するチーム運営を進める吉井総監督 【写真提供:仙台大学サッカー部】
仙台大サッカー部のトークンは、株式会社フィナンシェが提供するサービスを利用したもの。取引履歴を暗号技術によってつなげ、データの破壊や改ざんを難しくするブロックチェーン技術を活用したファンジブル(代替可能な)トークンの一種だ。フィナンシェのアプリ内でのみ売買可能なデジタルアイテムであり、チームを応援している「証」と位置付けられている。国内外の多くのプロチームが、コロナ禍によるチケット収入減少の対策として、トークン発行による資金調達を始めており、注目度が高まっている。応援の証となるトークンの購入者は、発行者が作るコミュニティーで実施する投票企画や抽選応募企画において、トークンを利用することができ、保有トークン数に応じて投票権利数が増える、当選確率が上がるなどのメリットが付与される。つまり、トークンの保有は、チームの応援者である証となり、今後、仙台大が行う企画の参加者になることを意味する。
企画については、新しいユニフォームデザインを決める投票などが発表されているが、今後は、学生から企画のアイデアを募るという。なお、フィナンシェのトークンは、初回のファンディングが終了すると、マーケットプレイスと呼ばれる二次流通マーケットがオープンになり、一般ユーザー同士でトークンの売買が可能になる。トークンを保有したいファンが増えると、マーケットにおける価値が上昇し、プロジェクトの活性化に繋がる仕組みにもなっている。
吉井総監督「売れるか心配だったが、支援者がほかにもいると知った」
「完売して、ホッとしました。最初は、売れないのではないかと不安でした。それで、最初は30万円で提案したのですが、少額過ぎてもどうかという話になり、目標50万、上限60万という形になりました。4時間半ほどで50万を超えて安心しましたが、すぐに上限に届いて良かったです。見知らぬ方が購入されて、知人が購入できなかったという話も聞きました。応援、支援してくださっている方が、自分が知るほかにもいるのだと知り、責任を持って学生の環境改善に取り組みたいと、改めて思いました」(吉井総監督)