八村塁のチームメイト2人が躍動して初B1は連勝スタート FE名古屋を支える“ゴンザガ大の文化”

大島和人

今季からFE名古屋でプレーするゴンザガOBのジョナサン・ウィリアムズ 【©B.LEAGUE】

 10月最初の土日で、B1の全チームが開幕戦を終えた。今季のB1は24チームで争われているが、新昇格はファイティングイーグルス名古屋と仙台89ERSの2チーム。FE名古屋は1試合平均失点が70.0の堅守を武器に、2021-22シーズンのB2を制した。1日の今季初戦は茨城ロボッツを88-79で下すと、2日も72−69で勝利し、上々のB1デビューを飾っている。

“スモール”だが万能なビッグマンがそろう

 FE名古屋は川辺泰三ヘッドコーチ(HC)が「B1とB2を合わせて下から2番目の平均身長」と明かすスモールラインアップ。一方で相手のガードを封じられる、ハードワークのできる万能ビッグマンがそろっている。日本代表でもプレーした帰化選手のPFエヴァンスルーク、2019-20シーズンのB2 MVPだったSFアンドリュー・ランダル、機動力と3ポイントシュートに優れたSF/PFジェレミー・ジョーンズは、そろって昨季のB2で猛威を奮った面々だ。

 加えて開幕戦は新加入のジョナサン・ウィリアムズがダブルダブル(16得点・10アシスト)の大活躍を見せた。彼はヨーロッパのクラブはもちろん、NBAのキャリアも持つ27歳だ。206センチ・103キロとB1のセンター(5番ポジション)にしては小柄だが、大きなアーチを描く左手のフックショットは脅威。跳躍力を生かしたリバウンド力、相手を選ばない守備力もあわせ持つオールラウンダーだ。

 1日のFE名古屋は最大16点のリードを第4クォーターに3点差まで詰められる展開だった。しかし残り3分で突き放して、B1初勝利を挙げた。

 川辺HCは追い上げられて突き放す展開について、こう説明していた。

「その時間帯はJ3を少し休ませた時間帯で、こちらもスモールラインアップで挑んでいた。タイムシェアの時間帯でもあったので、必要な時間だった」

“J3”が早速の活躍

 J3とは「Johnathan Lee Williams III(3世)」のフルネームに因んだウィリアムズの愛称だ。ウィリアムズをベンチに下げた時間帯の連続失点は、彼の価値を示すものかもしれない。

 川辺HCはウィリアムズのプレーをこう評価する。

「5番5番しないというか、しっかりフルコート走れます。(茨城の大型センター)ジェイコブセン選手との1対1をしっかり守れるフィジカルもあった。フルコートでボールプッシュするアジリティもあって、本当に器用な選手だなと思います。合流してそんな長くないので、小さなミスや『こうしてほしい』という課題はあるけれど、彼も日々成長している選手の1人です。愚直に成長しているのが素晴らしい」

 FE名古屋のスタイルとウィリアムズの相性についてはこう述べる。

「僕たちは上のカテゴリーに来ても、ディフェンスのチームです。スイッチしたとしてもガードにつけるところは大きい。ビッグマンでもしっかりボールプッシュをして、しっかり走っていけるところも今日は表現していた。そういった意味で、いい選手が加入してくれたと思います」

 1日の初戦は第4クォーターの勝負どころで、ウィリアムズのプレーが効いた。残り2分39秒には208センチのエリック・ジェイコブセンと競ってブロックショットに成功。そして残り2分16秒には自ら切れ込んでレイアップを決める。鋭いフェイクでジェイコブセンを抜き、チェハーレス・タプスコットのファウルも誘う技ありのプレーだった。

 ウィリアムズは軽いジョークをまじえて、自らの強みについてこう述べる。

「リバウンドと、ペイントエリアで強くフィニッシュするところです。ただ今は隠していたいので、フックショットくらいにしておきます」

 チームの印象と目標についてはこう語っていた。

「コーチ陣はとてもフレンドリーで、チームもコート上でもコート以外でもみんな仲良くする文化がある。試合のたびに少しずつ成長を積み重ねて、良い形でチャンピオンシップに出ることが目標です」

「日々成長」でB1に適応

FE名古屋をB1昇格に導いた川辺泰三HC 【©B.LEAGUE】

 あまり選手が入れ替わらなかったことで、チームの連携は維持されている。とはいえB2とB1は明らかにレベルの差がある。そこについて指揮官はこう口にする。

「一番の違いはサイズ感です。僕らはいろいろな(B1)チームとプレシーズンにやらせてもらいましたけど、相手は3ポイントのパーセンテージがみんな50%以上なんです。スイッチをしても上から3ポイントを打たれてしまって、そこにどう対応していくかという課題をこの1カ月で感じました」

 ビッグマンがスイッチして外からのシュートに対処すれば、一般的に相手の成功率は落ちる。しかしB1は外国籍選手だけでなく日本人も大柄で、なおかつシュートの質の高い選手がいる。FE名古屋はプレシーズンでB1に適応し、外角のオープンショットに対して「競っているつもりで競れていない」悪弊の修正を進めた。茨城の3ポイント成功率は1日が38.9%、2日が20.8%で、FE名古屋はプレシーズンの成果をしっかり出した。

 彼らにとって開幕は決してゴールではない。新昇格チームにとってはB1残留ですら容易でなく、長いシーズンで結果をつかむためには連携の深化が不可欠だ。川辺HCは「日々成長」という言葉を繰り返していた。

 PGの石川海斗もこう述べる。

「僕らのチームは決して1対1で戦うスタイルではないので、チームでどれだけ戦っていけるかと、遂行力が問われる。オフェンスもディフェンスも『最後の試合まで成長しなければいけない』と思っています」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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