江川卓と工藤公康が初の対談を実施! 「カーブの達人」「現代の魔球」などを語る

柴山高宏(スリーライト)

江川、工藤が語る「現代の魔球」

 第3回(最終回)はカーブ以外の変化球にテーマを広げ、両氏が思う“現代の魔球”を選定してもらい、その優れた使い手を挙げてもらった。

 現代の魔球について、両氏の意見はフォークで一致。その優れた使い手として、江川は佐々木主浩、工藤は千賀滉大と佐々木朗希を挙げた。なかでも千賀のフォークは工藤がソフトバンクの監督時代に横から見ていても驚くべき、凄まじい落ち方をしていたようだ。「打てんわ、これは」という工藤のコメントが、その凄さを物語る。

工藤が魔球と語る、千賀のフォーク 【写真は共同】

 これは余談だが、今季は千賀と佐々木朗希という球界最高峰の投手によるマッチアップがすでに2回も実現しており、結果は佐々木朗希が投球内容でも挙げた勝ち星の数(1勝)でもリードしている。千賀はいずれの試合でもQS(クオリティスタート:先発投手が6イニング以上を投げ、自責点3点以内に抑えること)を達成することができていない。本調子の両投手による手に汗握る投手戦に期待したいところだ。

 また、両氏に共通するのはフォークへの憧憬の念だ。「投げられる人がうらやましかった」と語る工藤は現役時代、村田兆治の真似をしてフォーク習得に励んだエピソードを、江川は“フォークの神様”杉下茂からフォークを教わったエピソードを披露する。結局、両氏ともに断念したようだが、もしもフォークを極めていたら、一体どのような成績を残していたのだろうか。

現代の魔球・チェンジアップの使い手・山岡泰輔 【写真は共同】

 さらに話は近年のトレンドである変化球・チェンジアップにも及んだ。江川は「投手の球速が上がったことで(チェンジアップが)打ちにくくなっている」と分析し、工藤はその優れた使い手としてモイネロと山岡泰輔を挙げる。なかでも山岡の投じる110キロ台、ストレートとの球速差が40キロ近いチェンジアップに対し、工藤は「よくあんなに腕を振って抜けるな」と驚いていた。

名ホスト・江川卓の卓越した“進行力”

 番組の収録は約1時間で終了。その後、スチールの撮影を行い、両氏は「次はカメラのないところで会いましょう」と言いながら、現場を後にした。月並みな表現だが、球界を代表する理論派の両氏の話はおもしろいという他なく、その場にディレクターとして立ち会った筆者が味わった喜びと興奮を、番組を通じて1人でも多くの野球ファンと共有できたら、望外の喜びだ。

 ディープなテーマでありながら、適度に笑いのある対談になったのは、名ホスト・江川のウィットに富んだ会話と軽妙な進行のおかげだ。江川が長年の解説業で培ったと思われる、視聴者がきっとわからないところ、知ることで野球の醍醐味をもっと味わえるポイントを的確に察し、深掘りしていく様はさすがとしか言いようがなく、ゲストである工藤の魅力を最大限に引き立ててくれた。

 昨季まで監督として常勝集団を率いていた工藤は、プロ野球の“今”を熟知している。千賀、佐々木朗希、モイネロ、山岡など、工藤の現役選手評は非常に聞き応えがあり、かつ、進化と変化を続ける現代の野球に対応しようとさまざまな試みを行っている現役選手に対するリスペクトを感じた。また、番組の第2回で工藤が語った「最近の投手の球種が増えている理由」は説得力があり、筆者のように同様の疑問を感じている人にはぜひ観てもらいたい、番組の見どころのひとつだ。

 スポーツナビでは今後も野球ファンがあっと驚くようなプロジェクトを計画している。期待してほしい。

(動画編集:井上祐太、企画構成:スリーライト)

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