U23アジアカップ優勝を目指す大岩剛監督「代表監督は相当な覚悟がないとできない」

飯尾篤史

対戦相手は2歳上のチームばかりだが、「優勝を目指す」ときっぱり語る大岩剛監督 【スポーツナビ】

 スペインやメキシコと激戦を繰り広げた東京五輪の記憶も新しいが、2022年3月、24年のパリ五輪出場を目指すU-21日本代表チームが発足。同月にUAEで行われたドバイカップでは3連勝を飾って優勝を成し遂げた。このチームを率いるのは元鹿島アントラーズ指揮官の大岩剛監督だ。DAZNで全試合が中継される「AFC U23アジアカップ ウズベキスタン2022」の初戦を6月3日に控え、熱血監督にビジョンを聞いた。

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Jクラブからのオファーもあったが……

――昨年、パリ五輪代表監督のオファーをもらったとき、どんな心境でしたか? 当時はJリーグのクラブからもいくつかオファーが届いていたはずですが。

 昨年の夏前、J1のクラブからシーズン途中での監督就任の話をいただきました。ただ当時、僕はS級のインストラクターをしていて。受講生の熱意にすごく刺激を受けていたし、僕自身、勉強になることが多かった。自分の中ではその仕事をまっとうすることが大事だったので、検討したうえでお断りしたんです。それからしばらくして、オリンピック代表監督のオファーをいただき、その後、いくつかのクラブから声を掛けていただきました。

 これらはすべて22年シーズンからの就任だったので、インストラクターの仕事をまっとうできると。そこでフラットに考えたとき、(代表監督は)必要とされて初めて就ける職業なので、条件は抜きにして、最初にオファーをくれたということが大きかった。それにやはり、日本を背負うというのは名誉なことだし、重責でもある。そうしたことを考えて、日本サッカー協会からのオファーを受けるという決断を下しました。

――初陣となった22年3月のドバイカップでは、U-23クロアチア代表、U-23カタール代表、U-23サウジアラビア代表を下して優勝を飾りました。この2年間、コロナ禍で国際大会への出場経験が少ないU-21日本代表の選手たちに対して、どんなアプローチをしたのですか?

 海外遠征は、いろいろとイレギュラーなことが起きる中で戦わないといけない。忘れているかもしれないけれど、それが国を背負うということだよな、という確認作業ですよね。戦術的なアプローチをする時間はそんなになかったですけど、やらないわけではなかったです。セットプレーも含めて、試合で起こり得ることへの準備は、それぞれのゲームに向けてやったつもりです。それを選手たちがしっかり認識してくれた。メンバーを毎試合入れ替えたので、意思統一するのは難しいんですけど、選手たちが意識して取り組んでくれて、結果が出た。そのイメージ作りは今後も引き続きやっていく必要があると思っています。

――チームコンセプト、プレーモデルや原則の浸透度については、どう感じていますか?

 実行力や理解力がすごくあるんだな、ということを再確認できましたね。質の高い選手たちなので、普段やらないポジションであっても、役割をしっかり訴えていけば、その通りのアクションを起こしてくれる。これは選手たちにも言いましたけど、今回が最低限の基準になったと。俺たちは成長しながら、チームとしてこれ以上になっていくんだよと。ドバイカップは我々が今後、前進していくうえでの一番下の基準になったんじゃないかな、と思っています。

僕の顔が日常的に浮かぶように

「熱い監督」「オーラがある」「モチベーションが高まる言葉をかけてくれる」とは選手の大岩監督評 【飯尾篤史】

――アグレッシブな守備からのショートカウンターはピッチ上で表現できた部分だと思います。一方、後方から狙いを持ってビルドアップしてボールを動かしていくところは、トライしていたものの、苦労しているように見えました。

 攻撃に比べると守備は意識を落とし込みやすいというか。特に日本人の集団なので、真面目に守備をしようという意識があります。『我々は前線からしっかりと連動して、高い位置から守備をしていくよ』ということは口酸っぱく言っていて、試合前のミーティングでも、動き方、立ち位置を訴えてきたつもりです。練習は数回しかなかったんですけど、ミーティングでしっかり理解して、あれだけ意識してくれたのは、今後も強みにしていきたいと思います。

 と同時に、おっしゃられたように、ビルドアップはもっと自信を持ってトライしてほしかった。立ち位置は意識しているんですけれど、ボールの付け方やタイミングは、日頃練習していない分、お互いのタイミングが合わないところが多々あった。その整理をしなければならない。もちろん、一人ひとりのプレー精度も求めていますが、こればかりは所属クラブで意識してもらうしかありません。今後も選手に求めるものを明確に、シンプルに、伝えていきたいと思います。

――代表チームは練習時間が少ないから、ミーティングがカギを握りますね。鹿島アントラーズ時代との違いを、すでに痛感されているのではないですか?

 回数がまったく違いますからね。1回1回の練習と1回1回のミーティングの質がより問われてくる。いかにシンプルに、熱量を持って簡潔に伝えるか。その作業はずっと続いていくと思います。ただ、我々のターゲットの選手たち、現状50人から60人くらいいるんですけれど、ベースの部分は、ラージグループにひと通り伝えられたかなと。ここからは、できない選手はこのグループに入って来られないし、できる選手をいかに増やしていくかが大事になってくる。それこそが、この世代の最前線にいるということだと思うので。ハイレベルなものを選手に求めていきたいですね。

――熱量ということで言えば、選手たちがよく大岩監督の第一印象として挙げるのが「熱い人」ということなんですよね。

 雑ですね(笑)。でも、代表は活動期間が短いから、何かを残すということになると、選手の頭に、パッとフラッシュバックのように、僕の顔が日常的に浮かぶことが必要なのかなと。そこは意識的に、インパクトを残せるようにはしています。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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