U23アジアカップ優勝を目指す大岩剛監督「代表監督は相当な覚悟がないとできない」

飯尾篤史

韓国代表の監督はあのファン・ソンホン

ドバイカップでは久しぶりに国際大会を経験。隣は羽田憲司コーチ、浜野征哉GKコーチ 【松尾祐希】

――6月1日からU23アジアカップがウズベキスタンで開幕します。対戦相手はU-21日本代表よりも2歳上のU-23代表ばかりですが、メンバー発表会見では「6試合戦いたい」「優勝を目指す」とおっしゃいました。

 日本を背負って戦う試合に負けていい試合はないと思っていますし、決勝まで進めたら6試合戦えるわけです。選手たちの成長や経験を考えると、6試合戦いたい。ただ、まずはグループステージを勝ち抜かなければ、優勝は見えてこない。もっと言えば初戦ですよね。UAE戦に向けてしっかりとした準備ができるかどうか。それがグループステージを勝ち上がるための第1条件。そこから一戦一戦、勝ち抜いていく。その先に優勝が見えてくる、という風に考えています。

――U23アジアカップのグループステージではサウジアラビアと再戦します。ドバイカップでは勝利しましたが、かなり苦戦した印象です。今度の対戦では、どこを改善しなければならないと考えていますか?

 自分たちがボールをしっかりと握りながら、スペースを支配できるかどうか。これに尽きると思います。ドバイカップでは相手のプレッシャーが強かったので、自分たちからボールを放棄してしまったところがあった。自分たちがいかにゲームをコントロールし、スペースをコントロールするかが重要なので、そうした意識付けを選手たちにしてきたいと思います。サウジアラビアは個人としても、グループとしてもレベルが高いので、自分たちが受けるというよりも、こちら側からアクションを起こしていくというゲームプランを実行していきたいと思っています。

――隣のグループDには韓国がいて、ベスト8で当たるかもしれません。

 まだ韓国のことはそこまで分析していませんが、ファン・ソンホンさんが監督をされているんですよね。現役時代に何度も対戦しましたし、例えば、鹿島時代にACL(AFCチャンピオンズリーグ)で対戦した水原の監督がソ・ジョンウォンさんだったり、GKコーチがイ・ウンジェだったりと、同年代の韓国代表選手が指導者になっている。かっこよく言えば、永遠のライバルというか。現役時代に切磋琢磨した人たちと指導者になっても戦っていく。そういうことがこの先も続くと思うので、対戦したらしっかりと勝っていきたいですね。

――メンバーは、ドバイカップやトレーニングキャンプに呼ばれてきた選手たちが中心ですが、今回はU-19日本代表と活動の日程が重なる中で、その世代である松木玖生選手とチェイス・アンリ選手をU-21日本代表に選出しました。U-19代表の冨樫剛一監督とすり合わせながら、「上で起用できるなら上で」というのがコンセンサスですか?

 これは、我々の世代の選手がA代表に選ばれれば、そちらを優先するのと同じように、冨樫監督も常日頃からそういうことを言ってくれています。日本サッカー協会としても、選手の成長を促すうえで、それが最優先だと。より高いレベルでやることが選手のためになるのではないか、と認識しています。

オシムジャパンの試合は見あさった

ベンゲルやオズワルド・オリヴェイラといった実際に指導を受けた監督だけでなく、オシムの影響も受けた 【Photo by Kaz Photography/Getty Images】

――先のカタールワールドカップ・アジア最終予選では、A代表がかつてないほどタフで力強い戦いを見せました。最終予選後、A代表の戦いぶりについて、A代表のスタッフと共有する機会はありましたか? また、五輪代表の戦いに生かしたいヒントや情報は?

(高円宮記念 JFA)夢フィールドにいれば、森保(一)さんをはじめA代表のスタッフとは日常的に顔を合わせるので、情報交換、情報共有はしています。当然、最終予選の厳しい戦いの最中も話をしているので、その空気感、緊張感を身近に感じて、我々も刺激を受けましたし、我々の活動にもしっかりと生かしていきたいと思っています。スタッフを含めた内側の人たちのプレッシャーの大きさが、ひしひしと伝わってくる状況でしたので。これが日本を背負うということでしょうし、プレッシャーの中でも選手たちにしっかりと伝えられるように準備することが重要なんだなと認識しました。そういう意味でも、この夢フィールドという場所は、我々にとって重要な拠点になっていると思います。

――先日、イビチャ・オシムさんがお亡くなりになりました。オシムさんとは鹿島時代に何度も対戦していますが、オシムさんのサッカーや考え方に影響や刺激を受けた面はありますか?

 多大に受けていると思います。これはまた別の機会にしっかりお話しできれば、と思いますが、僕は現役時代、オシムさんが監督に就任してからのジェフの変貌を目の当たりにしていますから。あれだけ走るチームは、当時の日本にはなかった。日本人の考え方を壊したというか、日本人の良さとは何かとか、どんなことを武器にして戦っていくのかとか、いろんなことを考えるターニングポイントだったと感じています。

 僕自身、コーチから監督になるとき、オシムさん時代の日本代表の試合を見あさって、参考にさせてもらった記憶があります。それくらい影響を受けたというか、インパクトのある方だったので、非常に残念に思いますし、お会いして話をしてみたかったですね。

――影響を受けた指導者としてアーセン・ベンゲルさんやオズワルド・オリヴェイラさん、トニーニョ・セレーゾさんの名前を挙げられていましたが、五輪代表監督に就任したことを報告する機会はありましたか?

 できていないんですよ。でも、ベンゲルとオリヴェイラは知ってくれているみたいです。オリヴェイラは共通の知人を通して、「ゴウによろしく伝えてくれ」と言ってくれました。

――ベンゲルさんと、パリで会えるといいですね。

 ハハハ、うまくまとめようとして(笑)。でも、会えるといいですね。実は、ベンゲルが仕事で日本に来たときには、お忍びで会っていたんですよ。いろんな話を聞かせてもらって、その中に学びもあった。本当にベンゲルからの影響は大きいです。

――高校・大学の後輩である西ヶ谷隆之さんがシンガポール代表の監督に就任しましたね。

 電話で報告を受けましたよ。「行ってきまーす」って軽い感じでした(笑)。小さい頃から知っている仲なので、ひいき目で見てしまいますけど、やっぱり一国の代表を率いるって、私もそうですけど、相当な覚悟がないとできないこと。誰にでもできる仕事ではないので、強い責任感で素晴らしい仕事をすることを期待しているし、お互い刺激し合いながら頑張ってやっていこう、ということを伝えました。

(企画・編集/YOJI-GEN)

大岩剛(おおいわ・ごう)

1972年6月23日生まれ、静岡県静岡市清水区出身。清水商業高から筑波大を経て、95年に名古屋グランパスに加入。アーセン・ベンゲル監督に左サイドバックからセンターバックにコンバートされる。その後、ジュビロ磐田、鹿島アントラーズでプレーし、2010年シーズン限りで現役を退き、指導者に転身。鹿島のコーチから17年5月にトップチームの監督に昇格し、18年にはチームをACL優勝へと導く。19年シーズン限りで鹿島の監督を退任し、21年12月にパリ五輪代表チーム(現U-21日本代表)の監督に就任した。
大会情報
AFC U23アジアカップ2022
グループステージ第1戦
UAE代表 vs 日本代表
6月3日(金)22時キックオフ
DAZN独占配信

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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