『テクノロジーとの融合で加速する、スポーツ産業の拡張』 INNOVATION LEAGUE 2021受賞各社がスポーツ庁 室伏長官と語り合う!

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【INNOVATION LEAGUE】

3月14日(月)に東京ミッドタウン日比谷 BASE Qにて開催された「INNOVATION LEAGUE 2021デモデイ」ではアクセラレーション・コンテストの受賞各社より本年度プログラムの成果が発表され、オフライン開催の熱狂もあいまって盛況の内に幕を閉じた。

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続く、3月29日(火)にINNOVATION LEAGUE 2021アクセラレーションの採択4社が、3月31日(木)にINNOVATION LEAGUE 2021コンテスト受賞4社がスポーツ庁を訪問し、今回のプログラムにおける取り組みと成果、今後の展望について室伏長官とディスカッションを行った。

本記事ではINNOVATION LEAGUE 2021受賞各社とスポーツ庁 室伏長官によるディスカッションの様子をお届けしながら、議論の中で見えてきたスポーツ産業拡張のヒントをお伝えしたい。

体験のデザインを通じて、スポーツ実施率向上にも寄与して欲しい

ユーザーの休日を“勝手に決めちゃう!”サービスを展開するスタートアップ「休日ハック!」は、ジャパンサイクルリーグと実証実験を実施。来場者を対象に『応援グッズ×謎解き』をテーマとした周遊型イベントを行い、試合観戦以外の愉しみを提供した。

また「6割以上の来場者に応援グッズが行き届いた一方で、謎解きを全てクリアした人は20名程度に留まった。告知とサービス体験の導線を改善していきたい。」と改善点を挙げ、室伏長官からは「スポーツ庁はSports in Lifeという日本国民の運動実施率を上げる取り組みを行っている。休日ハックのサービスを通じて、人々の日常や休日にスポーツ実施の選択肢が増えることを期待したい」とエールが送られた。

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音声配信でマイナースポーツの魅力の更なる発信を

新しい音声配信サービス「CHEERPHONE」を活用し、ジャパンサイクルリーグと連携して新しい観戦体験の実証を行った「パナソニック株式会社」は、スポーツの音声配信の可能性について室伏長官と議論を交わした。

「試合を見ながら、音声配信を通じて選手のキャラクターやストーリー、チームが取り組んでいる地域貢献活動について知ることで、よりリッチな観戦体験を提供することが可能。これまで様々な競技でアンケート調査を実施し、9割以上の方に『試合観戦が楽しくなった』『選手やチームが好きになった』という回答をいただいた。」と取り組みの成果を伝えると、室伏長官は「パラリンピックの種目も含め、まだまだ知られていない競技が沢山ある。日本は種目が偏ってしまう傾向にあるので、そうしたマイナー競技の多様な魅力を届けて欲しい」と、特にマイナー競技への貢献に期待を寄せた。

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新技術でファンコミュニティを活性化・拡張するフィナンシェ

ブロックチェーン技術を利用したトークンを発行することで、スポーツチーム等の資金調達と参加型ファンコミュニティ形成を支援する「株式会社フィナンシェ」は、ジャパンサイクルリーグとの連携で得た手応えについて「ジャパンサイクルリーグさんは初回のトークン発行で約4,000万円の売上があり、二次流通も生まれている。また、トークンを持ってもらうことでファンの参加意識の高まりに貢献できていると感じる。」と述べた。

室伏長官からは「コミュニティが盛り上がることで、トークンを持っているファンにもメリットがある点が非常に面白い。運動やエクササイズ、食事や睡眠、コンディショニングなど全て引っくるめてスポーツなので、コミュニティに対してそういった体験の機会が提供できると尚嬉しい。」と、更なるリクエストも投げかけられた。

【INNOVATION LEAGUE】

世界初の医療・スポーツ・ヘルスケアサービスの実現に期待

スマートウォッチのような軽量デバイスを装着することで連続的に汗の乳酸を計測し、従来と比べて乳酸計測のハードルを一気に下げることに成功している「株式会社グレースイメージング」とのディスカッションでは、オリンピアンならではの視点から「同じ動きをしていても、選手によって使う筋肉や疲労のタイミングは違う」「リアルタイムで乳酸が計測できるのは素晴らしい」と室伏長官からのメッセージがあり、併せて「国内のみならず世界でも通用する技術・事業を作っていって欲しい」と大きな期待も伝えられた。

今後、同社はコンディショニングだけでなく、ファンエンゲージメントにもデータを活用していくとのこと。「涼しい顔して走っているあの自転車選手も、乳酸が溜まっていて疲れているんだな、とか。競技の凄さをわかりやすく伝えるチャレンジにも取り組んでいきます。」と意欲を覗かせた。

【INNOVATION LEAGUE】

スポーツを通じて、世の中の女性が抱える課題の解決を。

INNOVATION LEAGUE 2021コンテストでソーシャル・インパクト賞を受賞した「1252プロジェクト/一般社団法人スポーツを止めるな 」は、1年52週間のうち12週間が生理であることに由来したプロジェクト名を持つ取り組み。女子学生アスリートが抱える『生理×スポーツ』の課題に対し、メディアを通じた情報発信をはじめ、直接学校を訪問したワークショップ等を実施してきた。女子学生アスリートを対象に実施したアンケート調査では「月経について知ることが大切だと思う」との回答が7割以上に及ぶ。競泳元日本代表の伊藤華英氏は「保健体育の授業で習う機会が一定あるにも関わらず月経に関する知識の量と質が定着してない。もっと楽しく学んだり、知る機会が必要」と述べる。

室伏長官は「月経も大きな枠組みではコンディショニングの一部。自分のピークパフォーマンスを発揮するために、月経の仕組みやタイミングを正しく理解して、逆に利用するくらいの状況まで持っていけたら女性アスリートの可能性はもっと広がるのではないか。」と、今後の「1252プロジェクト」の更なる情報発信と活動のバックアップを約束した。

【INNOVATION LEAGUE】

企業スポーツの価値向上に貢献する「Player!」

アクティベーション賞を受賞した株式会社ookamiは、さまざまなスポーツコンテンツのライブ配信を行うスポーツライブエンターテイメントアプリ「Player!」を運営するスタートアップだ。インナー向けに企業スポーツのオンライン応援を可能にした取り組みが評価された。「コロナ禍で試合会場へ足を運んで応援することが難しい中、企業スポーツの在り方が改めて問われている。室伏長官も仰っていたように、日本のスポーツ文化において企業スポーツは非常に重要な位置付けなので、我々としても企業スポーツの価値をより高めていく取り組みをしていきたい」と代表の尾形太陽氏は語る。

室伏長官は「パラリンピックの競技やマイナー競技の魅力を発信していく部分への貢献も是非期待したい。Player!には大学スポーツの盛り上げにも、引き続き貢献していって欲しいと考えています。オンラインイベントなどお声掛けいただければ、私も喜んで出演させていただきます。」と、同社の取り組みを改めて讃えた。

【INNOVATION LEAGUE】

大学スポーツが、真に日本社会に貢献するために。

パイオニア賞を受賞した「筑波大学アスレチックデパートメント/国立大学法人筑波大学アスレチックデパートメント」は、国立大学として初めてアスレチックデパートメントを開設、スポーツアドミニストレーターやアスレティックトレーナーを設置。大学スポーツ改革のフロントランナーとして地域貢献や情報発信を行う他、先日はソフトバンクとの連携も発表された。「放映権をはじめ、商業化の部分でアメリカの大学スポーツにすぐ追いつくことは難しいが、NCAAは『スポーツはeducationである』と明確に定義していて、スポーツの教育的な側面への取り組みは非常に参考になる。」という意見に対し、室伏長官も「客観的に見ても、スポーツを一生懸命やる意味の大きな構成要素として教育は外せない。スポーツは競技力とエンターテイメントの二つの側面を持つが、大学スポーツとしてはそのバランスを取ることも求められる。」と答えた。

筑波大学アスレチックデパートメントでは部活動を通じて培われた能力・コンピテンシーを認定するような制度の立ち上げも検討しており、部活動の価値を再定義する取り組みには引き続き注目だ。

【INNOVATION LEAGUE】

スポーツとテクノロジーの融合で社会課題の解決を

イノベーションリーグ大賞を受賞した「Project Guideline/Google」は、視覚障がいのあるランナーがスマートフォンを用いて、Googleの機械学習技術を活用した画像認識AIによって一人で自由に走ることを目指す研究開発プロジェクト。実際に本プロジェクトでランナーを務めた御園氏は「初めて、1人きりで走り切ることができて、スポーツとテクノロジーはこのように融合できるんだと、とても感動しました。朝日を浴びながら、誰の力も借りずに海岸線を走れたことが1番嬉しかった。」と語り、全盲ランナーとして安全を確保しながら10kmを走り切った喜びを室伏長官に伝えた。

【INNOVATION LEAGUE】

室伏長官も実際に「Project Guideline」を体験。目を瞑った状態でデバイスを装着し、専用テープの上を歩いた。室伏長官は「とても貴重な体験をありがとうございます。普段視覚に頼っている私でも、この仕組みを使えば目を瞑って真っ直ぐ歩くことができる。視覚障害をお持ちの方は聴覚が発達しているので、すんなり使いこなすことができそうですね。」と、自らの体験も踏まえて改めて賞賛を伝えた。

ランニング以外でも、通学時の道標や病院等の施設内で順路を示す機能など、スポーツとテクノロジーを起点に誕生した「Project Guideline」は、今後様々な拡がりを見せてくれそうだ。

【INNOVATION LEAGUE】

INNOVATION LEAGUE 2021の受賞者とスポーツ庁 室伏長官とのディスカッションを通じて、スポーツとテクノロジー、他産業の更なる融合の形が見えてきた。

INNOVATION LEAGUEは今年度の成果と課題を踏まえ、スポーツビジネスの拡張をより一層推し進めて参ります。本記事を読んでくださった皆様と、協業できる日を楽しみにしています。


執筆協力:五勝出拳一
『アスリートと社会を紡ぐ』をミッションとしたNPO法人izm 代表理事。スポーツおよびアスリートの価値向上を目的に、コンテンツ・マーケティング支援および教育・キャリア支援の事業を展開している。2019年末に『アスリートのためのソーシャルメディア活用術』を出版。

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著者プロフィール

スポーツテックをテーマにした世界規模のアクセラレーション・プログラム。2019年に実施した第1回には世界33カ国からスタートアップ約300社が応募。スタートアップ以外にも国内企業、スポーツチーム・競技団体、スポーツビジネス関連組織、メディアなど約200の個人・団体が参画している。事業開発のためのオープンイノベーション・プラットフォームでもある。現在、スポーツ庁と共同で「INNOVATION LEAGUE」も開催している。

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