「スポーツビジネスは結局、権利ビジネス。」 日米のスポーツシーンで活躍する中村武彦氏に聞く、スポーツビジネスと権利が切っても切り離せない理由。
【BLUE UNITED CORPORATION】
第4弾は、メジャーリーグサッカーやFCバルセロナなどで活躍し、スポーツビジネスの最先端を走り続けるBLUE UNITED CORPORATIONの中村武彦氏をお招きし、これまでのキャリアやビジョン、アメリカにおけるスポーツと法律の関係性などについて意見を伺った。
【BLUE UNITED CORPORATION】
中村 武彦(なかむら たけひこ)
青山学院大学法学部公法学科卒業。マサチューセッツ州立大学アマースト校スポーツマネジメント修士課程、及びマドリーISDE法科大学院修了。現・東京大学工学部社会戦略工学共同研究員。NEC海外事業本部を経て、2005年に日本人として初めて米メジャーリーグサッカー国際部入社。パンパシフィック・チャンピオンシップを創設。スペイン、ラ・リーガのFCバルセロナ国際部ディレクター(北米、アジア、オセアニア担当)などを歴任後、独立し2015年ニューヨークにBlue Unitedを設立。並行して鹿島アントラーズ・グローバルストラテジーオフィサー、MLSコンサルタント、パ・リーグマーケティングの海外事業開発ディレクターなども務める。2018年、ハワイにプロサッカー国際大会パシフィックリムカップを創設し、SPIAアジア「年間最優秀国際スポーツイベント賞ファイナリスト」を2年連続で受賞。同年プロeスポーツチームの「Blue United eFC」も創設し、2021年にはFIFAe Club World Cup Zone2で優勝。米コロンビア大学、レアル・マドリーMBA、Jリーグヒューマンキャピタル招待講師などを歴任し、青山学院大学地球社会共生学部非常勤講師及びぴあスポーツビジネスプログラムやHALFTIMEグローバルアカデミーなどの学長を務める。
結局、スポーツは権利ビジネスである
初めはNEC(日本電気株式会社)でサラリーマンをやっていました。当時、スポーツビジネスの概念はまだ日本に定着していませんでしたが、2002年にアメリカのマサチューセッツ州立大学の大学院に入学したことをきっかけにスポーツビジネスへの認識を深めました。留学後は、設立間もないメジャーリーグサッカー(以下、MLS)でインターンシップを経験しました。MLSでは、インターンシップを8ヶ月間経験し、そのまま就職したのちに6年間働きます。その6年間は、国際AマッチのメイキングやFCバルセロナのUSツアーなど、アメリカと国外を繋ぎMLSを盛り上げるために尽力しました。
2010年にはご縁があり、FCバルセロナに転職しました。MLSでは興行主として国際マッチメイキングをオーガナイズする立場でしたが、FCバルセロナではチーム担当として国際マッチやツアーを販売する立場となり、北米ツアーや中国ツアーの販売を担当しました。その後、ニューヨークのスポーツコンサルティング会社に誘っていただき、サッカー事業部の立ち上げなどに携わりながら5年強在籍した形になります。
2015年、39歳で現在代表取締役を務めるBLUE UNITED CORPORATION(以下、BLUE UNITED)を設立しました。MLS在籍時にパンパシフィックチャンピオンシップというハワイの大会を創設したのですが、自分がFCバルセロナに転職したタイミングで、MLSがその大会を売却してしまったことから活動が止まっていたんですね。その大会を復活させたいという思いが、設立のきっかけです。
また社会人としてアメリカやスペインで働きながらも学生として学ぶことも並行して取り組んでいました。MLS在籍前はマサチューセッツ州立大学のスポーツマネジメントの修士課程で学び、FCバルセロナ在籍後はISDE法科学院で法律について学び、現在は東大でスポーツの持つ価値について研究をしています。常に自分自身をアップデートしないといけないという危機感を持ちながら、自分のお客様そして会社に還元したいという思いで歩みを進めています。
【FCバルセロナ在籍時の中村氏】
ありがちな話ですが、設立直後は借金をしてノートパソコンを買い、事務所もないのでネットカフェで仕事をするところから始まりました。もちろん社員もおらず仕事は1人でやるしかなかったので、コンサルティング業しかできることがありませんでした。コンサルティング業を営んでいて痛感したのですが、コンサルティングをしていても、スポーツ業界に対して大きくインパクトを与えることはできないんですよね。スポーツビジネスに関わってる以上、結局は権利ビジネス。コンサルタントである限りは、ライツホルダーの支援しかできず、自分が主体的に動くことはできません。そのような経緯で、この5年から6年はライツホルダーを目指しています。
その一つが、先ほども紹介したハワイの大会「パシフィックリムカップ」です。その他にも2018年にプロのeスポーツチーム「Blue United eFC」を立ち上げています。こちらは幸運なことにFIFAeクラブワールドカップ2021アジア部門でチャンピオンになることができました。
もう一つは、コロナ禍に入ってから「教育」というスクール領域の仕事が増えてきました。チケットぴあを運営する株式会社ぴあさんや、スポーツビジネス専門メディア「HALFTIME」を運営するHALFTIME株式会社さんとの共同事業として取り組んでいます。
繰り返しになりますが、事業展開するポイントは自分たちがスポーツビジネスのコアであるライツホルダーになることです。今後数年間は、パシフィックリムカップ・プロeスポーツチーム運営・教育の3つの事業をメイン事業とし、コンサルティングをサブ事業にしていきたいと考えています。コンサルティング業務の事例としては鹿島アントラーズのニューヨーク拠点設立や、パシフィックリーグマーケティング(以下、PLM)のスポーツ業界特化型人材派遣事業「PLMキャリア」の支援、セビージャFCのSNSアカウントの日本展開、アイントラハト・フランクフルトの広報業務代理などがあり、机上の空論に終始することなく現場のオペレーションまで介入するので、担当できる案件数には物理的に限りがあります。
【eスポーツチーム「Blue United eFC」】
失敗から生まれたMLSの合理的なビジネスモデルとは?
シングルエンティティシステムは、MLSが創設される前の1960年代に流行った北米リーグの倒産に起因しています。ニューヨーク・コスモスというチームがペレやベッケンバウアーといったスーパースター選手を獲得し一世を風靡しましたが、コスモスの一強状態が続き、徐々に尻窄みになっていきました。この北米リーグを反省材料として「潰れないリーグを立ち上げよう」としたところがMLSの出発地点ですね。というのも、今では想像がつかないですが、当時のアメリカは「サッカー不毛の地」と言われるほど、プロサッカーは成功しないと言われていました。そんな風潮の中、スーパースターを集めても成功しなかった北米リーグの次に創設されたMLSが失敗すれば、未来永劫アメリカでプロサッカーリーグは成立しないだろうとまで言われていました。そのような経緯から、MLSはリーグ創設前に様々な角度から深く議論がなされたことが特徴です。
そもそもアメリカスポーツはリーグ中心主義で、リーグ全体の繁栄がリーグに所属する全チームを繁栄させるという考え方をベースとしており、その上でMLSはリーグ中心の考え方をさらに深化させた「シングルエンティティシステム」を採用しています。「シングルエンティティシステム」を簡単に説明するとチームのオーナーが存在せず、出資者がリーグの共同オーナーとなる点が特徴です。まずはMLSのオーナーとなるために出資をし、その後に各チームとオペレーション契約を結びます。ですので、出資者がロサンゼルスのチームとオペレーション契約を結んでいても、あくまでMLSのオーナーであって、ロサンゼルス・ギャラクシー(以下、LAギャラクシー)のオーナーではありません。ピッチ上では優勝争いをするライバルですが、ピッチ外ではみんなでMLSを儲けさせよう、繁栄させようというビジネスパートナーとなっています。
自由競争の場合は、オーナーの資金力やチームの立地によって、チーム運営やチーム強化に有利不利が発生し、戦力が不均衡になるので、試合の魅力が損なわれていきます。誰もスーパーカーと中古車のレースなんて見たくないんですよね。これがかつてニューヨーク・コスモスが倒産した理由です。「どうせニューヨークが勝つよね」と周りがしらけていき、周りのクラブが倒産していきました。リーグが存在しなければどんなビッグクラブも存在意義がなくなってしまいます。アメリカでは、NBA・MLB・NHL・NFLなどどんなスポーツもリーグの繁栄がまず第一に来て、戦力を均衡化してスタートラインを整えることから始まります。例えると、みんな同じ車でスタートして競争した時に、誰が一番いい運転手なのかを競う形です。それだけにピッチ外の選手(事業部・強化部共に)の重要性が非常に高まります。
シングルエンティティシステムの賛否と参考にすべきポイント
MLSは合同会社で上場もしていないので、会計に関する数字は一切外に出ていませんが、恐らくまだ赤字で、未だに投資の時期との公表もされています。歴史的にもリーグ創設からまだ30年しか経っておらず、プレミアリーグやブンデスリーガなど100年以上の歴史があるリーグと短絡的に比するのはナンセンスです。逆に、今は投資の時期だからこそ、これだけ投資家が集まってきて、お金が集まってきている。アメリカでサッカー人気は若者を中心に伸びているので、リーグオーナーになるための1口当たりの出資金額も大幅に伸びてるようです。立ち上げ当初は出資が1口あたり約5億円でしたが、もの凄く成長し、今は1口あたり約300億になっています。出資金額は上がっていますが、お金を払えばリーグに参入できるわけではなく、既存の出資者であるリーグオーナーたちが認めない限りMLSへの参入はできません。現在は新たに参入するチームの数と売上をコントロールし、得た売上をさらに投資に充ててリーグが大きくしているフェーズです。リーグ全体で見ているので、チーム単位の損益計算書で評価せず、貸借対照表を見て、チーム全体の価値が向上しているかどうかを重要視しているのではないでしょうか。
各国によって背景が異なるので、MLSを丸ごと真似することは難しいと思います。ただ勝敗よりも「ブランド力」や「みんなに楽しんでもらう」ところに焦点を当てていることや、選手の人件費という一番大きなコストをコントロールする仕組みが整備されている部分は参考になりそうです。人件費は価格の競り合いによって上昇するので、サラリーキャップを儲けてコスト管理を行うことは黎明期のMLSに対して効果的に働いているのではないでしょうか。ただ選手から搾取しているわけではなく、リーグが拡張していくことでサラリーキャップも上がっていきます。シングルエンティティシステムなので、オーナー同士がスポーツクラブの運営に割く予算や求める利益が一致しているため整合性が取れた状態でビジネスが進捗しています。
MLSの場合はビジネスに振り切っている部分もあるので、国内ではもちろん批判はあるんです。「もっと選手にお給料を払わなきゃ選手はヨーロッパ行っちゃうじゃないか」とか。全てMLSがいいとは思わないんですけれども、ビジネスとして見ているので非合理的なお金の使い方はしません。それをそのまま日本に当てはめることはできませんが、例えばJリーグは100年構想があるので、中長期的な目標に沿って、リーグ経営がちゃんとできてますし、それがブレない限りは、JリーグはJリーグなりの面白い経営ができていくと思います。日米で一概に比較することは難しいですが、例えば日本でNTTグループが大宮アルディージャを持っている理由と、アメリカでエンターテイメント企業であるアンシュッツ・エンターテイメント・グループがLAギャラクシーのオペレーション契約を結んでいる理由は異なります。
Jリーグの動きを見ていると放映権の販売やNFT導入などには、リーグが積極的に動き各チームをコントロールしている印象です。権利ビジネスのあり方として、シングルエンティティシステムとも似ている部分があると思います。
ライツビジネスをやる上で、Jリーグのアプローチは正しいと感じています。権利を集約することでレバレッジが働きますし、それぞれが別々に権利を売買をしていると、交渉の得手不得手、チームの人気、地域差などで差が出てきてしまうので価値の最大化が測りづらいです。一方で交渉の窓口を一つにしていると、より良い条件を引き出せる可能性が高まります。Jリーグはデジタルシステム導入、DAZNとの契約などうまくやっている印象ですね。
権利ビジネスを通じて得た収益の再投資の状況はいかがでしょうか?
スポーツビジネスで難しいのは、経営の視点の長さです。中長期の視点が必要でもあるし、短期の視点も必要なんです。中長期で見た時の利益や、チームを未来永劫存続させていくにはどうすれば良いのかを考えることが必要です。その反面、選手は現役で活動できる時間が限られているので、1日単位・1週間単位とすごく短いサイクルで勝負してるんですよね。MLSの場合は、選手にはあまり投資はせず、中長期視点でスタジアムや練習場の建設や整備、優秀なGMの招聘、ブランディング、新しいテクノロジーに投資することが現段階では多いと言われます。ただ、育成では指導者を留学させたり、アカデミーの施設を作っています。例に挙げた、中長期の部分に積極的に投資をしている印象です。
中長期目線の話ですと、MLSでは選手の年金制度が存在するなどセカンドキャリアへのサポートについて日本と大きな差がある印象です。こちらもリーグ主導で動いているのでしょうか?
セカンドキャリアという言葉はあまり海外では聞かなくて、もしかしたら日本の造語なのかなという気もしています。MLSでは選手会にリーグは介入していないので、年金制度は選手会が独自に運営しているものです。ただリーグの労使協定は数年置きに交渉されているので、待遇の改善は図られています。またリーグが選手に行うサポートとしては、選手が勉強したい時にスポンサー契約を結んでいる大学でオンラインで授業を受けられるといったことはしています。このサポートは働くスタッフも受けることができます。また高校在学時に契約を結ぶ選手や、大学を中退・休学してプロになる選手には、引退した後に学業をきちんと終えられるように、その学士は保持したままプロになったり引退後に復学できる契約形態もあります。
アメリカにおける法律とスポーツの関係性
MLSは稲垣弁護士がおっしゃる通り反トラスト法で何度が危険な目に遭っていますが、反トラスト法違反を主張する選手からの訴えを棄却した判例があります。そもそもサッカーはグローバルな競技ですので、所属チームや報酬などの選択肢が絞られていません。良いオファーがあれば、イギリスやドイツなど海外に行っても問題ありませんし、リーグが移籍を阻止することもないです。選手の自由や権利は守られていて、プロとして活躍する場を用意しているだけで、反トラスト法には抵触していないという考え方ができます。
まずアメリカは訴訟大国なのですぐに訴える風習があります。数年前に倒産してしまった独立リーグが、アメリカサッカー協会とMLSを訴えました。MLSとは因果関係が全く関係がない団体にも関わらず、です。
スポーツにおける法律家の役割とポスト
おっしゃる通り、ここがかなり重要なので自分も意識的に勉強しました。特にアメリカのビジネスシーンでは口約束は存在せず、全て契約書の通りに物事が進みます。全てを契約で縛りすぎずに、仁義や口約束で回る部分は日本の良さでもあるのですが、アメリカの場合は企業の幹部は弁護士でなくても法律的な知識や理解は必ずと言っていいほど持っていますね。あらゆるスキルや能力よりも法律が重要視されているので、アメリカのプロスポーツでは基本的に元選手ではなく法律とビジネスができるビジネスマンがGMになります。そのGMの下で、スポーツを理解してるスポーティングディレクター(以下、SD)やテクニカルディレクター(以下、TD)がいます。日本に当てはめると、強化部長の上にGMがいるイメージです。
そもそもチームを作る際にオーナーが任命するのが社長とGMで、2人は並列で平等な関係なんです。社長の下にGMがいるのではなく、社長はビジネス側の総責任者、GMが強化側の総責任者と言う形です。ロサンゼルスFCのアシスタントGMは元々ヤンキースの人ですし、コロンバス・クルーの社長は弁護士です。各競技のスペシャリストがGMに就任するのではなく、ビジネスマンや弁護士がGMになります。加えて、とても若いことが特徴で20代〜30代で活躍している方が多い印象です。
全部が全部欧米の真似をする必要はなく、日本にフィットする形を追求すべきだと思いますが「強化部が事業部の一つである」という意識はもう少し持っても良いかもしれません。強化部はスポーツチームの大きな割合の予算使う部署であり、契約交渉を代理人や選手の数だけこなし、時には海外の代理人とも交渉をします。スポーツビジネスには、交渉・契約・権利が常に付き纏うので、全員が弁護士になる必要はないですが、法律的な理解とビジネスバックグラウンドは非常に重要であると考えています。
日本においても球団・チームによっては選手の査定の方法が曖昧だという話も聞きます。今後は、チームの強化に携わる強化部の方々にも、経営的なスキルが必要になってきますでしょうか?
この20年間で日本のスポーツマーケティングはすごく成長していて、既に世界レベルになってきています。次は強化部が躍進すると思っています。弊社も現在は、WEリーグさんや大宮アルディージャさんと取り組みを進めており、徐々に成果が出てきています。オーナー企業も闇雲に投資しているわけではないので、資金の使い方については理解を求めるでしょう。そのためにデータに基づいて選手の評価を下したり、オーナー企業への説明を行うためのビジネスマインドが必要になります。結果的にチームも強くなるのではないでしょうか。
代理人を悪く言う人もいますが、切磋琢磨ですよね。代理人は海外チームとも交渉するので、国内外問わず色々勉強しています。それに対して今度は強化部も、勉強することは健全なことです。自分たちも理論やデータを活用して、納得してもらえるように査定する必要があります。切磋琢磨し、強化部も代理人も強くなると、日本のサッカー自体も強くなっていくのではないかと思います。
日本のサッカー界では既に選手代理人が相当数いるイメージですが、弁護士は少ない印象です。
私は逆に、まだ日本では代理人が少ないので、選手が特定の代理人に偏っている印象です。今後は選手も代理人を選べるように勉強し、切磋琢磨しないといけないと思います。自分のキャリアを預ける代理人を考えるようになりますし、日本のサッカー文化が深まっていくことに繋がると思います。代理人も自由競争なので、いい選手を取るためにサービスを良くしなければなりません。
繰り返しにはなりますが、強化部も代理人も選手も弁護士資格を持っておらずとも、法律や契約について十分に理解していることが大切です。少なくとも自分が取り扱っている規約・規則・ルールはきちんと理解し、法的に論拠を持って話せるようにしないといけません。主観・客観・リーガルの3つを意識して交渉をすることが必要です。
法的な課題も含め、今後日本のスポーツビジネスが発展していくにはどのような取組みが必要でしょうか?
もっと若い人たちが入ってくれるような業界にならないといけません。マーケティングなどビジネスの方面は、近年開かれてきて様々な人が入ってきてると思います。その最たる例が、メルカリと鹿島アントラーズです。まずはビジネス側で結果を残した後に、今度は強化部の方にも関心が移っていき、大きな予算に対してビジネスとして回さないといけない風潮になっていくことが自然な流れでしょうか。ビジネスとして改善するために、人材・テクノロジー・ノウハウについて議論が盛んに行われていますが、もちろん一朝一夕には上手くいかないと思います。例えば、鹿島アントラーズでジーコさんが退任する際には、チームを牽引する後任について議論になると思うんですよね。そこで議論の中心になるのは、まだ若くてビジネスバックグラウンドを持つ代表取締役の小泉文明さんになるわけです。その時にどのような決断が下されて、広がっていくのかはとても楽しみです。
稲垣弁護士もお若いですし、私が教えている生徒も若い方が多いです。ですが、教育はあくまで教室の中の話です。授業ではいつも言っていますが、教室に来て学んでだけで、何かすっきりして帰らないでください、と。ただ、原理原則は必ず教えるので、皆さんが進んだ先で応用して形にしてくださいと伝えています。自分自身も今も学校にいくつか通っていますが、そこで学んだ原理原則を実社会や実体験で応用しながら、自分なりの答えを出しています。原理原則をきちんと抑えれば、あとは人の数だけ正解があると思っています。
【パシフィックリムカップ 2019】
自分の得意分野でどのように日本のスポーツビジネスに貢献できるのかがメインです。自分がアメリカに来た当時だったら、色々なことを考えられたかもしれませんが、スポーツビジネスに20年ぐらい携わっていく中でスポーツビジネスもかなり成長しています。その中で新しい視点や新しい気づき、まだ日本に入ってない手法や考え方を探し出すのが自分の仕事かなと思っています。それをコンサルタントあるいは批評家として、口で言っても意味がないし、むしろ嫌がられるので、自分自身で取り組んで見せる方法を探したい。例えば、国際大会のメリットを説明しても伝わらないので自分で作ったり、これから伸びるであろうeスポーツについて説明するためにチームを作ったり、海外での広がりを説明するためにニューヨークに駐在所を作ってみたり。
自ら取り組んで実際に見せないと、なかなか人は動きません。もう45歳なので自分が生きている間に日本のスポーツビジネスの高みはおそらく見れないとは思いますが、その過程に対してインパクトを与える仕事がしたいです。
インタビューアー:稲垣 弘則
西村あさひ法律事務所・弁護士。2007年同志社大学法学部卒業、2009年京都大学法科大学院修了、2010年弁護士登録。2017年南カリフォルニア大学ロースクール卒業(LL.M.)、2017年〜2018年ロサンゼルスのSheppard, Mullin, Richter & Hampton LLP勤務。2018年〜2020年パシフィックリーグマーケティング株式会社出向、2019年〜SPORTS TECH TOKYOメンター、2020年〜INNOVATION LEAGUE ACCELERATIONメンター、2021年〜経済産業省・スポーツ庁「スポーツコンテンツ・データビジネスの拡大に向けた権利の在り方研究会」委員。スポーツビジネスにおける実務経験を活かしつつ、日本企業やスタートアップを含めたあらゆるステークホルダーに対してスポーツビジネス関連のアドバイスを提供している。
執筆協力:五勝出拳一
『アスリートと社会を紡ぐ』をミッションとしたNPO法人izm 代表理事。スポーツおよびアスリートの価値向上を目的に、コンテンツ・マーケティング支援および教育・キャリア支援の事業を展開している。2019年末に『アスリートのためのソーシャルメディア活用術』を出版。
執筆協力:清野修平
新卒でJリーグクラブに入社し、広報担当として広報業務のほか、SNSやサイト運営など一部デジタルマーケティング分野を担当。現在はD2Cブランドでマーケティングディレクターを担いながら、個人でもマーケティング支援を手掛けている。
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