「楽しんでいいんだ」村田諒太が見せた笑顔と涙 激闘を終えて両雄の行く末
2ラウンド、ゴロフキン(左)を攻める村田諒太 【写真は共同】
「1ラウンドの流れが一番大事。思ったよりプレッシャーをかけられるとなったらチャンスがある。入りが一番大事なポイントだと思う」と村田が3月28日の公開練習でプランの一部を明かしていたとおり、序盤は強打を誇るゴロフキン相手に一歩も引かずに圧力をかける。近距離で放つ左ボディーは何度もゴロフキンを捉え、村田が押し込む時間が目立つ。
しかし「試合中に距離感をアジャストしていった」とゴロフキンが試合後の記者会見で語ったように、中盤以降は効果的であったボディーブローが減る。逆にジャブや様々な角度から放たれるゴロフキン独特のフックを徐々に被弾し、守勢に回る展開が増えた。
劣勢の中でも、幾度となく反撃に転じ会場を沸かせた村田だが、最後は強烈な右フックを側頭部に受けプロ初ダウンを喫する。膝から崩れ落ちたところで陣営からタオルが投入された。
※リンク先は外部サイトの場合があります
「楽しんでいいんだ」思わず流れた涙
試合後の記者会見で目元を拭う村田諒太 【写真は共同】
会見の冒頭では「まだ感情が湧いてくる時点ではなくて、試合が終わって『ああ負けたんだ』と。そういった事実をもうちょっとしたら受け入れられて、そして感情が色々と湧いてくるんだと思います」と冷静に語っていた。
しかし「試合中に楽しそうな笑顔も見えた。心境は?」との質問を受けると、徐々に感情をあらわにした。
「会場に向かう時に、本田会長(帝拳ジム会長)にいい意味で楽しんで来いと言われた。そうだよなと。楽しんで来いと言われたのが嬉しかった。プロになって苦しくて、勝たないといけないし。だけど“今日”は楽しんでいいんだって思えた」と涙を流した。
2012年のロンドン五輪、当時多くのボクシングファンが想像もできなかった、ミドル級での金メダル獲得を手土産にプロデビューを果たしてから9年。そして初めて世界王座に就いてから4年半。ミドル級という世界で人気を博す階級での活躍を期待する声や、金メダリストとしての責任。村田が様々な重圧を人知れず背負ってきたことを、改めて感じさせられた。
村田自身が “トップ”と認めることができたゴロフキンとの一戦だからこそ、純粋に「楽しんでいいんだ」と思える試合だったのかもしれない。