前田健太、独占ロングインタビュー 復帰プランと後輩・鈴木誠也へのエール
誠也は「どこに行っても生きて行ける人間」
今シーズンからメジャーに挑戦する鈴木誠也にもメッセージをくれた。走攻守の三拍子が揃い、「変化を恐れない」後輩に、マエケンは太鼓判を押す 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】
僕がアメリカに来た後くらいから、誠也はすごくいいバッターになったんです。一緒に広島でやっていた時も、もちろん良かったんですけど、まだレギュラーには定着していなかった。最近はテレビ画面越しにしかプレーを見ることはできませんでしたが、それでもすべての面においてトップレベルだと思っています。打撃、守備、さらには肩も強いし、走力もある。あとは、「変化を恐れない選手」という印象もあります。“自分はこうだ”と固定概念に縛られるのではなく、その時々でやり方を変えながら成長してきた。こっちに来てからも、そうした対応力は生かされるんじゃないかと思います。
――3年間、チームメイトだった頃を思い返して、何か覚えていることはありますか?
当時から「モノが違う」と言われていましたし、いつかすごい選手になるんだろうなと思っていました。それに、人としてすごく明るくて、誰からも愛されるキャラクターなので、アメリカに限らず、どこに行っても生きていける人間だと思いますよ(笑)。
――入団会見では、「マイク・トラウト、アイ・ラブ・ユー」とコメントして笑いを取っていましたが、緊張していると言いながら、実に楽しそうでした。
ここ最近、メジャーに来た選手の中でも、あまりいなかったタイプです。とても面白いキャラクターなので、きっとチームメイトからも愛されるでしょうね。
――メジャー挑戦に際し、先輩として何か言葉をかけられたんですか?
自分で行くと決めたわけですから、僕から言うことは何もないです。(カブス入団決定後に)「おめでとう」と連絡はして、「困ったらいつでもなんでも言って」とは伝えましたけど、彼の場合、きっとそんなに困ることもないでしょう(笑)。
――カブスは鈴木選手にフィットするチームだと思いますか?
誠也だったらどこでもフィットするんじゃないかな(笑)。それに正直、このチームがこの選手に合うというのはないんじゃないかとも思っています。チームのルールに従いながら、選手からそのチームカラーに合わせていかなければならないのは、どこに行っても同じですから。今シーズンのカブスはメンバーがかなり入れ替わって、新しいチームになった印象です。ファンがすごく熱いし、プレーするには良い環境だと思います。ただ、あの球場(リグレー・フィールド)は外野フェンスに生えているつるの下がコンクリート(レンガ)なので、そこに激突してケガをすることだけは気を付けてほしいですね。他の球場よりも守備は難しいかもしれません。
――前田選手に話を戻しますが、今シーズンのツインズの状態をどう見ていますか?
昨年の後半にトレードで一部の選手を放出したんですが、今年になってまた補強をしていますね。カルロス・コレアが来ましたし、キャッチャーのゲイリー・サンチェスや内野手のジオ・ウルシェラも加わって、勝ちにいく雰囲気が出ています。チームが勝ち続ければ、それだけ僕のシーズン中の復帰の可能性も高まる。なんとかプレーオフまで勝ち残ってくれたら嬉しいですね。
――チーム内の雰囲気はどうですか?
ツインズはラテン系の選手がすごく多くて、今年はサンチェスが入ったので、今のところ内野陣はすべてラテン系。全員、英語があまり得意じゃないので、マウンドに集まった時とか面白そう(笑)。みんなノリが良くて、すごく明るいチームです。
――前田選手にも合っていそうな気がします。
僕も英語が話せないので、話せない者同士、頑張って片言の英語でコミュニケーションを取っています(笑)。英語が話せないことを理解してくれる選手がたくさんいる環境は、僕にとってはすごくやりやすい。あと、経験豊富な選手がたくさんいたドジャースとは違って、ツインズはとても若いチーム。僕がベテランの部類になるので、そういった面でも気持ち的には楽ですね。
――先ほども少し触れましたが、前田選手はYouTubeもやられていて、そこでモノマネを披露したり、絵を描いたりと多才ぶりを発揮しています。YouTubeで表現したいこととは何でしょう?
最近は更新してないんですけどね(苦笑)。僕はダルビッシュさんがやられていたので、興味が湧いて始めてみたんですが、それ以前から、日本の子どもたちに向けて自分から発信する機会が、特にアメリカに来てから少なくなったと感じていたんです。野球教室で指導することもほとんどなくなってしまいましたからね。だから、そういう場所を作りたかったというのが、動機としては大きかったんです。
――前田選手がYouTubeを始めたタイミングで、新型コロナウイルスによるパンデミックが始まりました。YouTubeでの活動を通じて、「withコロナ時代」を実感することはありますか?
自宅で過ごす時間が多くなって、みなさんSNSを見る機会が増えたんでしょうね。僕のYouTubeも、子どもたち、アマチュアの選手、草野球をやっている大人の方と、本当に多くの人たちに見ていただいて、すごく喜んでもらえた。それまでもOBの方のYouTubeチャンネルは数多くありましたが、僕みたいな現役選手による発信は珍しいし、少なからず意義があることだと思っています。
※後編に続く
(企画構成:YOJI-GEN)