F1 2022年シーズン開幕特集

[開幕直前スペシャル対談]中野信治×サッシャ 今季F1は「フェラーリの逆襲」が濃厚!?

柴田久仁夫

今季の規則変更は角田にとってポジティブ

「(角田)裕毅はブレーキの使い方がすごくうまいし、彼にとってはポジティブな規約変更だと思いますよ」と今季の角田に期待する中野信治さん 【DAZN】

──角田裕毅選手にとって今季F1のレギュレーション変更は、どう影響すると思いますか?

中野 裕毅はブレーキの使い方がすごくうまいし、彼にとってはポジティブな規約変更だと思いますよ。去年はスタート直後とかに遠慮もあって順位を落とすこともありましたけれど、今年はそれも改善されるでしょうし。まあF1の1周目の激しさは、F2などとは別次元ですからね。もう少し学ぶ必要はあるかもしれない。裕毅はどちらかというと待つタイプですから。

サッシャ 相手が弱ったところを狙うドライバーですよね。

中野 ええ。でもF1は、そのあたりはみんな理解している。

──本来、彼が得意としていたはずのタイヤマネージメントも、去年はあまり目立ちませんでした。

中野: F1を戦うレベルのドライバーはみんな、普通にできちゃっていますからね。

──タイヤといえば18インチ化は、車体以上に影響が大きいと角田選手は言っていました。

中野 大きいでしょうね。タイヤは去年のようにたわまないので、ドライバーは「いま滑っているな」とか、路面とタイヤの接地状態をいっそう感じやすくなっているはずです。実際、テストの映像を通しても、けっこう滑らせている姿を見かけました。もちろん、スライドさせることはタイヤには良くないのですが、限界を探る過程で、今年のタイヤだとそれができる。乗りやすいかどうかは、また別問題ですけれどね。

サッシャ ゴム量の多い13インチのほうが遊べるかと思ったら、そうでもない。

中野 違いますね。13インチの場合、ギリギリまでゴムが動いて、その先でストンと限界が来る。そこまでいくとドライバーは何もできない。でも、18インチは動いてないところで限界がきて滑り始めてくれるのでコントロールしやすい。

ベテランと若手、そして全10チームが入り乱れる

サイドポッドの上面を大きくくぼませるなど、攻撃的なスタイリングが注目を集めているフェラーリの新車「F1-75」。ちなみに、車名は「創業75周年」に由来する 【Scuderia Ferrari】

──各チームの勢力図はまだ見えないかと思いますが、タイトル争いはどんな展開を予想していますか。

サッシャ フェラーリが速いのは、間違いなさそうですね。

中野 優勝者は、去年以上にいろいろ出そうですね。苦戦しているように見えるメルセデスがこれから速さを取り戻したとしても、(ルイス・)ハミルトンと(ジョージ・)ラッセルが勝利を分け合うだろうし、レッドブルも乗りやすそうだから、ペレスが勝つチャンスは去年以上にありそうです。フェラーリのふたり、マクラーレンの(ランド・)ノリスにもチャンスあるでしょうしね。

──フェラーリ、マクラーレンが優勝争いに絡んでくると、去年この2チームと時に互角の速さを見せていたアルファタウリは厳しいかもしれない?

中野 まさにそうですね。

サッシャ ウイリアムズとかも確実にポイント争いに食い込んできそうですしね。伝える立場から言うと、毎回勝者が違う展開は堪えられないですけれどね。でも、ハミルトンは去年の敗北を経て、今年さらに強くなっている気がします。

──よくあんなにモチベーションが続きますね。

中野 負けず嫌いの権化が、この世界は最後に強い。かつての(ミハエル・)シューマッハもそうですし、(マックス・)フェルスタッペンもそう。すべてのドライバーは負けず嫌いですけれど、でも多くの場合は勝ってそこそこの実績を得たら満足する。それが彼らは、負けず嫌いのレベルが違う。金とか名誉か、そんなの関係ないんですよね。あれだけ勝っているのに、さらに誰よりも努力する。

 ハミルトンは言動というか、人間的な成長も連動してきましたよね。アイルトン・セナやシューマッハもあそこまでの変化はなかったと思うんですよ。彼らの時代よりいまのほうが、強いライバルがたくさん出ている。そこで勝ち続けるためには、自分の内面も変えないといけないと痛感したんでしょうね。

サッシャ そこにラッセルという、ハミルトンに憧れてレースの世界に入った男が、チームメイトになって牙を剥く。

中野 そうなったときにハミルトンが、さらに変貌を遂げるのか。そこも今季の大きなみどころのひとつですね。

サッシャ 王者として後進を育てる様子を見せるのか。

──去年のフェルナンド・アロンソは、ちょっとそのような素振りを見せていましたよね。

中野 でも全然、そこから本気を出してきましたよね。ハミルトンにとっては、あのアロンソの生き方は、見本になるかもしれません。

サッシャ フェラーリのふたりもそうだし、いろいろな人間模様も見逃せないですね。そして、今年のDAZNは初日フリー走行からの全セッションで、『F1 ZONE』でデータを見まくりです。僕が見てもただの数字の羅列でしかないですが(笑)、そこは中野さんがしっかり解説してくれるはずです。

中野 レースを大画面で楽しむのもいいですが、DAZNの特徴である『F1 ZONE』は本当におすすめです。メインの国際中継に加えて「オンボードカメラ」「タイミングモニター」「ドライバートラッカー」の4つをひとつの画面で同時に見られますからね。視聴者の方にとってはレース週末がさらに楽しめるアイテムだと思います。

──テストで話題のバウンシング現象など、外からの映像を見ているだけでは理解できない部分が今年は例年以上に多そうですからね。

サッシャ そうなんですよ。だからこそ『F1 ZONE』でのデータを映像とともに中野さんに解説してもらうことが欠かせないですね。それとシーズン中の毎週水曜に配信される『WEDNESDAY F1 TIME』、ここでも話すことが山ほど出てきそうです。

中野 序盤戦のレース展開はとくに興味深いですし、週末の解説で話しきれなかったことをできるだけ『WEDNESDAY F1 TIME』でお話しできればと思っています。

サッシャ レースがあって、それを水曜日に振り返って、そこからまた新たなレース週末を楽しむ。最高です。いい時代になりました(笑)。

──ありがとうございました。

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著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

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