F1 2022年シーズン開幕特集

角田裕毅は「今季どこまでやれるのか?」 F1ジャーナリストがひいき目ナシで検証する

柴田久仁夫(auto sport)

今季のF1はもう間もなく新シーズンが幕を開ける。日本のファンの期待と注目を集める角田は、果たしてどれほどの活躍を見せてくれるのか 【Red Bull Content Pool】

 F1は道具の良し悪しに大きく左右されるスポーツだ。したがって、角田裕毅の2年目を占うには、ドライバーとしての角田本人のポテンシャルはもちろんのこと、所属チームScuderia AlphaTauri(スクーデリア・アルファタウリ)が開発した新車AT03の戦闘力も検証する必要がある。それらを踏まえ、今季の角田が、いったいどれほどのパフォーマンスを見せてくれるのか?

攻めた印象の空力デザイン

アルファタウリの新車AT03は、これまで順調にテストを重ねている。ここで得られた情報によってドライバー、エンジニアともにクルマに対する理解がいっそう深まるはずだ 【Red Bull Content Pool】

 この原稿執筆時点では、まだバーレーンでの開幕前テストは終わっていない。それでもアルファタウリはここまで、相対的に充実したテストを送っているように見える。最初のバルセロナテスト(2月23〜25日)ではピエール・ガスリーが総合2番手タイム、バーレーン初日にはトップタイムをたたき出した。

 もちろんチームごとにテストメニューも違えば、燃料搭載量も違う。ガスリー自身、「トップタイムは気分いいけれど、特に大きな意味はない」と、決して浮かれていない。ガスリーがクラッシュを喫したバルセロナ3日目を除けば、両ドライバーは連日100周以上の周回をこなした。まったくの新車にもかかわらず、信頼性のレベルは高そうだ。

 角田が所属するアルファタウリは、レッドブルとの協力関係を年々強化してきた。これまでは型落ちパーツの供給を受けることが多かったが、今季はギヤボックスやリヤサスペンションなど車体後部のコンポーネントは、レッドブルの最新型をそのまま搭載している。そのぶんチームは、車体前部の開発に専念できたはずである。

 その成果が出たというべきか、AT03の空力デザインはかなり攻めた印象だ。特に目につくのがフロントウイングの形状で、他の多くのチームがグランドエフェクト効果を最大限発揮させようと技術規定で許される最大限までノーズを下げている中、あえて中心部を地面から上げた。この部分では空気をできるだけ多く取り入れ、気流制御はその後方のフロア前端で行なおうということなのだろう。

バウンシングには手こずっているが……

新車AT03の特徴的な部位はやはりフロントウイングだろう。左右の翼端板(エンドプレート)から中央部分(ノーズ)にかけて持ち上がっている 【Red Bull Content Pool】

 その試みが成功しているかどうかは、現時点ではまだはっきり見えていない。テクニカル・ディレクターのジョディ・エギントンも、序盤の戦闘力次第で今後のデザイン変更の可能性に言及している。大きく変わった技術規約に対し、より正解に近い解決策が明らかになった時点で、柔軟に対応していこうということなのだろう。

 一方でガスリー、角田の両ドライバーは、AT03にポジティブな感触を持っている。ただし、40キロ以上重くなった車重や新たに導入された18インチタイヤが、マシンバランスに大きく影響を与えている。中でも直近一番の課題は、「バウンシングの解消」だ。

 この激しい縦揺れ現象は、主にストレート全開走行中に発生する。事前のプライベートテストで明らかになり、バルセロナテストでは車高を上げるなど、セッティング変更などで対処を試みた。しかし大きな改善はなく、バーレーンテストに対策パーツを持ち込んだ。

 だが、バーレーンサーキット特有のバンピー(でこぼこの多い)な路面も相まって、根本的な解消にはやや手こずっている。とはいえドライビング自体が妨げられるほどではなく、エギントンも「解決への方向性は見えている」と楽観視しているのが現状だ。

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