Bリーグ月間MVP特集

横浜の河村勇輝が月間MVP受賞 Bリーグを沸かせる現役大学生プレーヤーが初の栄冠

大島和人

東海大でも日々成長、「自分の軸はブラしたくない」との強い覚悟も

現役大学生の月間MVP受賞はもちろん初のこと。20歳とは思えないほど落ち着いた雰囲気で取材に応じた 【(C)B.LEAGUE】

――河村選手は高校3年生の時から特別指定選手の制度を使って、もう“プロ3シーズン目”です。ただ昨シーズンは数字が出せず、苦しんでいる様子に見えました。大学2年生になった今季との違いはどういう部分ですか?

 去年は自分の強みを生かしていなかったというか、自分のスタイルが何なのかを見失っていた時期がありました。(時間や手数をかける)ハーフコートオフェンスを重視しているHCだったので、そちらに考えを置きすぎてしまった。トランジションやスピードを生かしたプレーといった部分を発揮することができず、負のサイクルにハマっていたんです。東海大も結構ハーフコートのオフェンスに重点を置いていますけど、陸さん(陸川章HC)から「そこにフォーカスするのもいいけど、自分の特徴を生かしながらやることが一番大事だ」と言われたんです。スピードを生かしたプレー、トランジションをしっかりやりながらハーフコートもやるというバランス、緩急を1年間で学べました。今回戻ってきて、そのバランスが取れてきていると思います。

――大学1年生の時点で、そういう悩みはなかったんですか?

 そこは本当に、ハーフコートオフェンスも何もわからない状況でしたから。大学1年生としてとにかく学ぶべきもの、新しいことがいっぱいありすぎて“自分の悩み”はまだなかったかもしれないです。

――陸川HCは大学に少し慣れた頃合いを見計らって、アドバイスをしたのかもしれませんね。いつ頃の話だったんですか?

 いつ頃だろうな……。特指(特別指定)から戻ってきて、大倉颯太(現千葉ジェッツ)選手がケガをしていました。そこで自分が正PGとしてやらないといけない、ツーガードでなく一人でやらないといけない……という時ですね。(昨年の)7月か8月か。トーナメント(第70回関東大学バスケットボール選手権大会)に負けてからだったと思います。

――東海大は毎年3人、4人と複数の選手をB1に送り込んでいるチームですが、「ここがすごい」と感じるはどのような部分ですか?

 すべてにおいてプラスになっている部分があるんですけど、特にトレーニングの環境ですね。トップに小山孟志さんという素晴らしいストレングスコーチがいて、その方を中心に学生のトレーナーも含めて素晴らしい人材がそろっている。スタッフ同士のコミュニケーションがスムーズで、選手の疲労度をしっかり見てケガのリスクを減らして、自分たちのプレーを試合で最大限発揮できるようにマネジメントしてくれています。

――2年前に三遠ネオフェニックスでプレーした時は172センチ63キロの登録でしたが、今は明らかに大きくなっていますよね?

 三遠の頃は63キロと発表されていましたけど、実際は65キロくらいでした。今は日によって誤差があり、試合をした直後は68キロまで落ちることもありますが、68キロから70キロの間くらいです。大学に入って1年間で2キロから3キロほど増えて、2年になってまた2キロくらい増えました。まだまだですけど、現時点でPGとしての体の強さ、キレのちょうどいい体重が68キロから70キロです。シーズンを過ごしながら、何キロが適正なのかを探っていきたいですね。

――前に東海大OBのBリーガーから「ウエイトトレーニングは思い出したくないくらいキツかった」と聞いたことがあります。

 かなりキツいと思います……。重りもしっかり担いでやりますし、頻度も多い時は多いので、そういう期間はめちゃくちゃキツいです。

――河村選手は例えばベンチプレスだとどれくらい上げるんですか?

 自分はそんなに上げないので……。100キロも上がらないかもしれないです。上がって95キロくらいですかね。

――大学の体育学部ではどんな勉強をしているんですか?

 解剖学やスポーツ心理学、スポーツ生理学を学んでいます。

――授業はすべてリモートですか?

 7割か8割はリモートですね。教職課程の授業は対面でやっています。

――大学生ならレポート、試験の苦労はあると思いますが、そこはどうですか?

 大変ですけど、同じ学年のバスケットボール部の子が一緒の競技スポーツ学科にいるので、お互いに助け合いながら、助けてもらっている一方かもしれないですけど……(笑)。教えてもらったりして、何とかやっています。単位は取れていますよ。
――大倉選手も千葉で主力級の活躍をしていますし、昨シーズンの寺嶋良(広島ドラゴンフライズ)選手や西田優大(シーホース三河)選手、津屋一球(三遠ネオフェニックス)選手も大学4年生の時に特別指定で即戦力級の活躍を見せました。「東海大の主力ならB1レベルと実は差がないのではないか?」という感覚があります。

 バスケットボールの質や内容には、全然差がないと感じています。

――逆に「プロはここが違う」、「難しい」と感じる部分はありますか?

 やはり外国籍選手ですね。アジア枠や帰化選手も含めて(外国出身の)割合が増えていて、一番の違いはそこです。トレーニングの環境もそうですが、経験値以外は東海大も遜色なくプロレベルでできていると思います。「Bリーグで活躍したい」という目標を掲げて入学してくる選手が多いので、自分に対しても厳しくやれています。

――無責任な意見かもしれないですけど、「大学のバスケットボール部を辞めて、すぐプロの世界に入るべき」というファンの声があるのはご存じだと思います。それに対してはどう答えますか?

 いろいろな考えがありますけど、まずは自分の気持ちに正直になることが一番だと思っています。(筑波大学在学中にアルバルク東京と契約を結んだ)馬場(雄大/現テキサス・レジェンズ)さんのような前例もありますし、意見も聞きながらですけど、流されないようにしたいですね。最終的に自分の軸はブラしたくないので、自分に正直でいたいと思っています。

――2月の中旬にアジア競技大会に向けた日本代表合宿に参加しました。そこで得たものはありましたか?

 4日間いて、実戦的な練習は2日間しかありませんでした。技術的なものより、トム(・ホーバス)さんがPGに求めているものを確認できたのが大きかったです。自分のバスケットスタイルに似ていたので、これまでやってきたこと、今のスタイルは間違ってないというのを確認できました。

――やはりトランジション、スピード、シュートの部分ですか?

 そうです。

――ホーバスHCから個人的に伝えられたことは何かありましたか?

 「若いのに、あまり波がない」みたいなことは言われました。練習の中でも気持ちの上げ下げがないからすごくいいと言われたんですけど、どうなんですかね……。普通にいつもと変わらずやっていただけなので。

――表情には出ないタイプなのかもしれませんが、実は内心怒っていることもあるんですか?

 全然あります。言う時はちゃんと言うようにしていますし、レフェリーともコミュニケーションを取ってやってはいますけど、ただ熱くなりすぎないようにしています。

――ビーコルでプレーするのは2シーズン目ですが、ブースターの方へのメッセージをお願いします。

 ビーコルファン・ブースターの方の熱いブーストは、モチベーションになっています。昨年はなかなかファン・ブースターの皆さんの期待を超えることができませんでした。横浜に戻ってきた一つの理由が、ファン・ブースターの皆さんに去年の借りをお返したいという気持ちです。皆さんに自分の成長した姿を見てもらって、勝利で恩返ししたいという思いがありました。そういった意味で成長のきっかけを作ってくださったファン・ブースターの皆さんには、本当に感謝しています。これからまだまだ試合は続くので、一つでも多くの勝利をお届けできるよう、チームとしてやっていくしかないなという思いです。

――河村選手はバスケットボール少年、バスケットボール少女に人気のあるプレーヤーですが、最後に応援している、注目しているファンに向けてメッセージをお願いします。

 自分は小さい頃に田臥勇太(宇都宮ブレックス)選手であったり、富樫勇樹(千葉)選手であったり、小柄でも大きな選手を相手に戦っていく姿を見てすごく興奮して、それでここまでバスケットを続けてきました。自分もそういった存在になりたいという気持ちがあります。小さな子どもたち、バスケットボールをしているみんなに少しでも希望を与えて、元気づけられればいいなと考えています。新型コロナウイルスの影響で我慢が続く日々ではありますけど、この経験はこれからの人生で一つのいい分岐点になる可能性もあると思うので、ぜひ今できることを最大限やってほしいなと思います。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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