Bリーグ月間MVP特集

信州・岡田侑大が自身2度目の月間MVP 新天地で点取り屋の才能が一層開花

大島和人

10月今季初の「月間MVP」を受賞した、信州ブレイブウォリアーズの若きエース岡田侑大(中央) 【(C)B.LEAGUE】

 B.LEAGUEは月間MVPに相当する「B.LEAGUE Monthly MVP by 日本郵便 2021-22」を、昨シーズンからファン投票で選んでいる。2021年10月の受賞者は信州ブレイブウォリアーズの岡田侑大に決まった。富山グラウジーズ時代の2021年3月に次ぐ2度目の受賞だ。

 岡田は拓殖大を中退してプロ入りし、2021-22シーズンがキャリアの4季目となる23歳の若武者。シーホース三河でプレーしていた2018-19シーズンにはBリーグの新人王にも輝いている。189センチ・80キロのポイントガード兼シューティングガードで、今季は開幕からスコアラーとして、トップレベルの数字を残している。

 彼は11月下旬のFIBAバスケットボールワールドカップ2023 アジア地区予選(中国戦)に向けた日本代表候補合宿にも招集されおり、そちらの活躍も楽しみだ。今回はそんな注目株にじっくり話を聞いた。

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勢いに乗るきっかけは古巣との開幕戦

――11月も引き続いて好調ですが、2021年10月の「B.LEAGUE Monthly MVP by 日本郵便 2021-22」受賞、おめでとうございます。

 ありがとうございます!

――率直に月間MVPの感想をお聞かせください。

 個人としてもいいゲームをいくつかすることができました。それはやっぱりパスを出してくれるチームメート、自分を使うコールをしてくれるポイントガードのおかげです。自分もストレスなくオフェンスにエナジーを注げました。

――「いいゲームがいくつかできた」と仰いましたが、10月を振り返って特に印象深い試合はありますか?

 開幕の富山戦は調子が良くなるきっかけになった、ターニングポイントなのかなと思います。

――岡田選手が終盤に3ポイントを連続で決めて、接戦を制した展開でした。

 古巣相手だったので、僕のクセも炎さん(富山の浜口炎HC)は全部知っていました。前半は苦戦したんですけど、それでもチームメートが大事な場面でボールを託してくれて、決めきることができました。自分として本当に自信になった試合なのかなと思います。

――10月は1試合平均で18.6得点を記録しました。帰化選手を除く日本人の最多ですけれど、この成績はどうご覧になっていますか?

 自分がプロになったときから目標にしていたのは、3ポイントが入らない試合でも点数の取れる選手になることです。それをいくつかの試合でできたのは良かったですし、プラス3ポイントが入れば点数は伸びるというイメージで今はプレーしています。まだノーマークの3ポイント、決めきれる3ポイントを落としているので、そこをもっとアジャストして決めていきたいです。

――仲がいい、感謝しているチームメートはいますか?

 本当にいい人ばかりです。(熊谷)航さんとは2年ぶりにチームメートになって、自分のやりたいオフェンスを分かってくれています。(PGとして)コールもしてくれるし、言ったことに耳を傾けてくれるので本当に感謝しています。あとマック(アンソニー・マクヘンリー)さん、ウェイン(マーシャル)さんは本当にIQが高いセンターなので、2メンゲームをしていても本当にやりやすいですね。

――ウェイン・マーシャル選手は体の幅もありますし、見ていて「こんな選手がスクリーンをかけてくれたらウイングは助かるな」って思います。

 マックさんもウェインさんも、信州のバスケットを深く理解していますね。自分はむちゃぶりというか、「そこでそのプレーをするの?」というタイミングでステップバックをしたり、ドライブをしたりするのが持ち味です。それに対しても合わせてくれる、スクリーンを掛けてくれるのは今までになかった経験でした。「こんなに合わせるのがうまいプレーヤーがいるんだ」という初めての感覚を持っています。

――今の信州が目指しているバスケットは、岡田選手の目から見てどういうものですか?

 信州は1日1日を大切にするチームです。勝てたからいいというわけでもなくて……もちろん勝つのは大事なんですけど「日々成長」がコーチの理念です。どんな試合でも成長できるように、みんなが取り組んでいます。日本一を目指すチームは細かいところまでしっかりやるんだなと個人的に思っています。

――ヘッドコーチやチームメートから、普段はどんなことを言われているんですか?

 オフェンス面は特にそんなに言われません。誰かがピック(スクリーン)を使っているときのスペーシングをこうしなさいとは言われます。でも自分がハンドラーをやっているときに「このプレーをしたらいけない」とは言われません。攻撃は自由にのびのびプレーできています。

――対戦相手のHCに話を聞くと「信州は遂行力がすごい」「やることが徹底している」というコメントが返ってきます。

 今までにないくらい、スカウティングは多いです。1週間の中でバスケ以外のことを考えられないくらい、いっぱいいろんな情報をスカウティングするので……。

――頭が疲れるとか、消化しきれない……みたいなことは起こっていないですか?

 ありますね。自分は特にディフェンス(DF)を得意にしていないですし、その中でも堅い信州のDFについていかないといけないから精一杯。試合中に忘れるスカウティングもあるんですけど、毎回毎回アシスタントコーチが丁寧に教えてくれるので、とても助かっていますし、ついていけているのかなと思います。

――信州の中で岡田選手の役割、立ち位置をどう捉えていますか?

 特に自分がエースとは思っていません。大事な場面ではボールを欲しいですけど、チームオフェンス、チームディフェンスが信州のバスケットです。5つのピースの一つとしてコートに立っているというのは、自分の中で考えています。

――「自分がエース」という自覚を持ってプレーしているのかなと思っていました。

 終盤や当たっているときは「ボールをくれ」と言います。でも1試合を通してずっと自分がボールを欲しがっていても、我を出しすぎていてもうまく回りません。自分が『ここはいける』というときに(熊谷)航さんに言って、フォーメーションを組んでもらう。点数を取りに行く時間帯が、はっきりしているのかなと思います。

――第4クォーターの勝負所は「僕に持ってこいよ」という感じですか?

 第4クォーターは、自分もボールを欲しがる(タイミング)かな……と思います。

――単純に信州で楽しくプレーできていますか?

 楽しくプレーできています。チーム全員でバスケをしているので、勝ったときの喜びをすごく感じられますね。

――どのチームも「全員で」とは言いますけど、信州は特にそこを強調しているということですか?

 1週間の練習量も多いですし、ミーティングやスカウティングの部分で今まで以上に時間を費やしています。その分勝ったとき、やってきたことが実って勝てたことがうれしさに変わるのかなと思います。

――ミーティングはどれくらいやるんですか?

 気にしたことはないですけど、かなり長い時間やっています。1時間は超えていると思います。スカウティングのファイルをプリントしてもらって、映像を見ながらですね。(ファイルの枚数は)結構多いですね。

――英語や社会の勉強みたいですね。バスケの話なら楽しく聞けますか?

 バスケのことなので嫌いな勉強とは全然違いますね。ファイルには相手チーム、マッチアップする選手の特徴が書いてあります。それを見ながら相手がどういうプレーをするのか、どういうDFをするのかイメージしながら、ビデオを見ています。疲れているときはしんどい部分があるんですけど、最近は慣れてきました。

――コーチになったとき、そういう勉強が役に立ちますね。

 そうですね。でもマイケルさんやアシスタントコーチの人は時間がない中で、寝ないであの量のビデオを作っていると思うので、スゴいというか……。大変な仕事だなと。

――その姿を見ていると、簡単に「コーチになりたい」って言えなくなるんですね(笑)

 そうです、そう簡単には言えません。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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