「どん底」を乗り越えてメダルを獲得した宇野昌磨 最終目標はオリンピックではなく、成長し続けること

沢田聡子

磨いたのは難度よりも、ジャンプの完成度

4回転4種類5本を取り入れている宇野。ジャンプの難度をあげることは難しいが別のアプローチで向上を図る 【Getty Images】

 今季の宇野が繰り返し口にしていたのは、成長したいという強い意志だ。この北京五輪でも宇野は自分に足りないものを見つけ、身に着けようとしていた。

 宇野は今季を通じて、4回転を4種類5本プログラムに組み込む高難度のフリーに取り組んでいる。ルッツが得意ではないという宇野にとって、さらにジャンプの難度を上げることは現実的に難しい。ならばと、それとは別のアプローチで向上を図った。

「やはり、ジャンプの完成度というのは大切だなと思いました。ショートでは少しずつジャンプの着氷後のステップなど取り入れているのですが、フリーではその余裕がまだないですし、まだ今の構成でそういった部分をたくさん詰められると思います」

 続けて、宇野は銀メダリストとなった鍵山優真に、大きな刺激を受けていることをうかがわせた。

「そして、コンビネーションでも優真くんのようにセカンドループを練習しなければいけないなとも思っていますし、新たなジャンプも自分に合う種類を探していきながらやっていきたい」

「世界選手権に向けて、僕はもっと絶対成長できる」

ネイサン・チェンらライバルのレベルアップが、宇野自身も成長することにつながったと言う 【Getty Images】

 宇野は、今回金メダルを獲得したネーサン・チェン、鍵山、そして4回転アクセルに挑んだ羽生結弦ら、トップスケーターの存在がモチベーションになっていると言う。

「僕は今季、どうやったら自分が成長できるかということをずっと掲げて練習して、試合に取り組んできました。そしてこのような3位という素晴らしい結果も、獲得することができました。ゆづくん(羽生)、ネーサン、優真くん、トップの選手がどんどんレベルアップしてフィギュアスケート界を引っ張ってくれているからこそ、僕ももっとうまくなりたいという気持ちにさせてくれる」

 2大会続けて五輪のメダルを獲得した宇野だが、達成感よりもさらに向上することに意識が向いているようだった。

「2大会連続出場させていただいて、1大会目よりもいろんな経験を経てオリンピックを迎えたことで、変わった心境はあるのかなと思いましたが、やはり僕が今シーズン掲げている“成長したい”という意志が一番強かったのかなと思います。その結果、やはり僕にとってはどの大会も特別な1つの試合で、そして試合だけではなく、練習1日1日も全てが僕にとって特別、すべてがかけがえのない特別な時間なんだなって、改めて認識しました」

「このオリンピックが、僕の最終目標ではないので。僕にとって何が最終目標か分からないですが、今の目標は成長をし続けることです」

 2回目の五輪を戦い終えた宇野に今あるのは、帰って一刻も早く練習したいという意欲だという。

「次の世界選手権に向けて、僕はもっと絶対成長できるって思っているので。もっともっとうまくなりたいって思っています」

 平昌五輪で銀メダリストとなり、自分らしい戦い方を見失って苦しい時期を過ごした宇野。幼い頃から温かく育まれてきた環境を離れた直後は調子を落としたが、ランビエールコーチという存在に出会い、今は期待に応えたいという思いが大きな意欲となっている。また、背中を追い続けてきた羽生、現状最も完成度の高いスケーターとして尊敬するチェン、その急成長ぶりに刺激を受ける鍵山の3人も、宇野の成長を促しているのだ。

 3月21日にフランス・モンペリエで幕を開ける世界選手権に向け、ランビエールコーチが喜ぶような『ボレロ』を滑り切ることを目標に、また特別な日々を積み重ねていく。

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著者プロフィール

沢田聡子

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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