ジャンプに悪戦苦闘続く渡部暁斗 3大会連続メダル逃しLHへ「首の皮一枚」

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今季はW杯からジャンプで苦戦

98メートルのK点超えもジャンプ9位発進となった渡部暁。巻き返しにはジャンプの復調が欠かせない 【写真は共同】

「いやー、最悪ですね」

 7日に行われた北京五輪ノルディック複合個人ノーマルヒルのジャンプ練習後、2大会連続銀メダリスト渡部暁斗は苦笑いしながら記者陣に現状を語った。

 1992年アルベールビル五輪、94年リレハンメル五輪と2大会連続で団体金メダル、“キングオブスキー”荻原健司が君臨した時代から変わらない日本の複合の戦い方。それはジャンプで先行してリードを奪い、そのまま後半のクロスカントリーで逃げ切るというスタイルである。だが、今季の渡部暁斗はそれができていない。ここまでグンダーセン方式で行われたW杯の個人戦14戦のうちジャンプでトップ10に入ったのはわずか4戦、そして表彰台は0。2014年ソチ、18年平昌ともにジャンプでメダル圏内に入りそのまま栄光をつかんだ男の戦いではなかった。そして、そこに立ちはだかるのは金メダリスト・小林陵侑ですら大会前に「難しい」と口にしてしまうジャンプ台である。

「全部同じジャンプをしているわけじゃなくて修正点を見つけながらやってみて、どれもうまく行っていない」。この一言に象徴されるように悪戦苦闘しているのは素人目にも明らかだった。

山本の大ジャンプ、直後の渡部暁は

 迎えた前半のジャンプ。渡部暁は44人中40番目、その前、39番目には今回が初の五輪となる山本涼太が控えていた。山本のほうは練習の際に「感覚的にはいい感じはした」と口にするなど、ジャンプの調子は上昇傾向だった。

 順調ならば1分にも満たない間隔で選手が次々と飛んでいくジャンプだが、風はそれ以上の早さで向き、風力を変えていく。先に飛んだ山本は風に恵まれ、「ここに来てから一番いいジャンプがここで出た」と語るヒルサイズ超え108メートルの大ジャンプに成功。2位の選手に38秒の差をつけ、後半のクロカン首位スタートを決める。

 そのジャンプを「下がちょっと盛り上がってる感じだったので(山本が大ジャンプを)飛んだのはわかっていた」とスタート位置で感じていた渡部暁だが、コーチからスタートOKを告げる旗はなかなか振られず。それでも98メートルとK点超えを記録し、山本と1分16秒差の9位でクロカンを迎えることになった。

「結局いいジャンプは最後までできなかったですね。あんまり、今日も昨日の少し良くなったイメージを持ってやったんですが……」と最後まで景気のいい言葉は出ないまま、ノーマルヒルの攻略とはならず。気持ちを切り替えてクロカンへと向かった。

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