日本4位でフィギュア団体初メダルに期待 チェンと宇野の自己新を無良崇人が解説

野口美恵

初日から白熱の演技となったフィギュア団体戦。日本は4位発進とメダルを狙える位置につけた 【Photo by Elsa/Getty Images】

 2月4日に開幕した2022年北京五輪。初日から冬季五輪の醍醐味とも言えるダイナミックかつ華麗な美技の競演となったのが、フィギュアスケート団体戦だ。4日は男子ショートプログラム(SP)、アイスダンス・リズムダンス(RD)、ペア・ショートプログラム(SP)が行われ、日本は4位スタートと上々の出だし。団体戦での五輪初メダルを十分に狙える位置につけた。

 男子SPでは、ネイサン・チェン(米国)が羽生結弦(ANA)の世界記録に0.11点に迫る111.71点、宇野昌磨(トヨタ自動車)が105.46点と自己ベスト競演。初日から最高峰の演技が見られた。2014年四大陸選手権王者の無良崇人さんに、初日の熱戦を振り返ってもらった。

SP自己ベストで日本の良い流れを作った宇野

惜しくも2位だったが、SPの自己ベストを記録して素晴らしい仕上がりを見せた宇野 【写真は共同】

――団体戦の男子SPは非常にハイレベルな戦いとなりました。

 男子は、宇野選手とチェン選手の一騎打ちとなりました。宇野選手の演技でキーとなったのは、「4回転トウループ+3回転トウループ」です。ここしばらく、4回転トウループの着氷で回り過ぎそうなところを踏ん張るシーンが多かったので、3回転をつけられずにいました。今回はしっかり余裕を持って着氷したので、後ろに3回転トウループをつけられました。これは個人戦に向けても、良い自信になると思います。4回転フリップも含め、ジャンプは全般的にすごく良かったと思います。
――宇野選手が苦手とする朝の試合でしたが、調子はどのように見受けられましたか?

 6分間練習ではジャンプのパンクもあり心配しましたが、本番のスタート前の顔つきを見て「大丈夫だな」と思いました。しっかりした表情で集中していましたよね。演技も全体的に良い動きでした。
――ステファン・ランビエルコーチが、出国前のPCR検査で陽性となり、団体戦は不在でした。その影響はあるでしょうか?

 昨年末の全日本選手権でも、ランビエルコーチはリンクサイドに立っていましたし、コーチが居ないのはイレギュラーな事態です。ただ、試合前の宇野選手も「不安はない」というコメントにもありましたが、コーチ不在の影響をそこまで感じさせない雰囲気でした。いつも帯同しているトレーナーさんがリンクサイドに立っていたので、安心感はあったでしょう。あそこまで落ち着いて演技できるなら、もし個人戦にもランビエルコーチが間に合わなかったとしても、「団体戦でしっかりできた」という自信を胸に、個人戦に臨めると思います。
――団体戦のトップバッターとなる男子ショートで2位。この順位はいかがでしょう?

 1人目を滑る難しさのなか、いつも通りの力を発揮して期待に応えました。日本チームの流れを作る意味で大きな役割を果たしたと思います。男子SPからアイスダンス、ペアと良い流れのままいけたことを振り返っても、トップバッターとして素晴らしい仕事をしたと思います。

平昌五輪での悪夢を払しょくする会心の演技のチェン

自己ベストで男子SPの1位になったチェン。4年前の悪夢は完全にふっしょくした印象だ 【写真は共同】

――次にチェン選手ですが、見事な首位発進となりました。

 五輪の舞台に気負いもあるかなと思いましたが、まったくブレずに「さすが」という感じの演技でした。SPの演技に不安な要素は何ひとつありません。ジャンプだけでなく、スピンもステップもすべて。特に演技後半に入れた「4回転ルッツ+3回転トウループ」は、一発のジャンプで20.72点も稼いでおり、これ以上は望めない大技です。
――4年前の平昌五輪では、団体戦も個人戦も、SPでミスがありました。

 4年前の悪夢は払しょくできたのではないかと思います。今日の演技を見る限り、個人戦もこの勢いをキープしそうですね。
――米国チームは早めに北京入りし、チェン選手は1月29日に初練習。試合6日前から現地で調整してきました。

 もし僕が同じ立場だとしたら、現地で調整する期間が長くなればなるほど、だんだん集中力が落ちていくと思います。良い集中力、良い状態で試合に臨めるスケジューリングの視点では、現地入りが早いように感じました。一方で、氷の感触をしっかりつかむこと、また米国と中国では時差も大きいので時差調整という意味で、早めの現地入りをしたのかもしれません。
――結果的にしっかりとピークを合わせてきたようですね。

 全米選手権に比べて、身のこなしが軽やかでした。余裕を持って4回転ルッツも4回転フリップも跳んでおり、「フリー(FS)でも他の4回転も安定して跳べそう」という動きでした。それだけピークを合わせた良い状態なのだろうと感じさせました。
――宇野選手は105.46点、チェン選手は111.71点となりました。個人戦に向けて、この点数をどう評価されますか?

 2人ともパーフェクトの演技で、もう少し高い点が出るかなと思いました。ただ、ソチ五輪や平昌五輪の団体戦を見ていても、少し点数は抑え気味になっている印象だったので、個人戦で同じ内容を披露できればもう少し高い評価をもらえるかもしれません。

 チェン選手は、スピンやトリプルアクセルで出来映え(GOE)の加点が「+2〜3」が中心だったので、ここで「+4〜5」を出せるようになれば120点台が狙えると思います。宇野選手もスピンとステップでレベルの取りこぼしがあったので、まだ加点を狙えます。個人戦はさらなるハイレベルな戦いが期待されるでしょう。

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著者プロフィール

野口美恵

元毎日新聞記者、スポーツライター。自らのフィギュアスケート経験と審判資格をもとに、ルールや技術に正確な記事を執筆。日本オリンピック委員会広報部ライターとして、バンクーバー五輪を取材した。「Number」、「AERA」、「World Figure Skating」などに寄稿。最新著書は、“絶対王者”羽生結弦が7年にわたって築き上げてきた究極のメソッドと試行錯誤のプロセスが綴られた『羽生結弦 王者のメソッド』(文藝春秋)。

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