日本4位でフィギュア団体初メダルに期待 チェンと宇野の自己新を無良崇人が解説

野口美恵

個人戦とは空気感が異なる団体戦の男子SP

リンクサイドにチームメイトがいるなど、いつも個人戦とは異なる雰囲気も団体戦の魅力だ 【写真は共同】

――3位は、欧州選手権で優勝した18歳のマルク・コンドラチュク選手(ROC/ロシアオリンピック委員会)です。

 欧州選手権での活躍が印象的でしたが、好成績をキープしましたね。4回転はサルコウとトウループを決めてパーフェクト。着氷がすこし詰まり気味だったので、出来映え点(GOE)の加点は「+1」あるいは「+2」と伸びませんでしたが、「やるべきことをやりきった」という印象です。3位は素晴らしい成績ですし、ROCの男子を背負う存在になり得ると思います。

 2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪に向けて、期待の1人ですね。今回の五輪を経験して、4年後までにはさらに4回転の種類を増やすのではないでしょうか。まだ若いので粗さもありますが、そのぶん伸びしろを感じさせる選手です。
――金博洋選手(中国)は自国開催の五輪を迎えました。

 平昌五輪は4位となり、その後は、腰や背中を痛めてなかなか調子を取り戻せずに苦しんできました。その中、自国開催の五輪に向けて、限界を超えたトレーニングを積んできたのだと思います。4回転トウループは痛そうな転倒をしましたが、4回転ルッツは飛距離もあり良いジャンプでした。着氷で勢いを止めてしまったので流れが作れず、2つ目は2回転トウループになりましたが、大きな得点源になりました。
――やはり金選手といえば4回転ルッツですね。

 4回転ルッツの先駆者である彼が、2015年の国際大会での初成功後から7シーズンたった現在でも維持しているのは凄いことです。やはり自国開催での五輪という舞台で、4回転ルッツを決められたのは、素晴らしいことだと思います。
――男子SPを振り返っていかがでしたか?

 団体戦はリンクサイドにチームメイトがいたり、メンバーも10カ国の選手だけだったりするので、個人戦とは空気感が異なりますね。さらに五輪という特殊な状況や、その初戦であることも加わり、モチベーションの持っていき方で難しい面があったと思います。その空気に飲まれず、いつも通りやった選手が良い結果を残していますね。一方で、ミスが得た選手は、五輪ということで力が入りすぎてしまったのかなという印象でした。

三浦/木原組は五輪の舞台で自己ベストを更新

74.45点で自己ベスト更新の三浦/木原組。五輪の舞台で堂々たる演技を披露した 【Photo by Justin Setterfield/Getty Images】

――ペア種目ですが、“りくりゅう”こと三浦璃来/木原龍一組は、素晴らしい演技で4位発進となりました。

 三浦選手、木原選手ともすごく上手な演技でした。五輪という空気感に飲まれることなく、「自信を持っていつも通りの演技をやるんだ」という気持ちが伝わってきました。
――木原選手は演技後、スピンの回転がズレたことをとても気にされていました。

 全体の印象としては、スロージャンプもツイストも素晴らしかったですし、スピンもしっかり加点がついていました。ただ、レベルは3でしたし、今後の個人戦に向けての反省点を確認する意味で、気にしていたのかも知れません。細かい出来不出来よりも、この演技全体で存在感をしっかりアピールできて、良い形のスタートを切れたことが大きいと思います。
――リフトはスピード感もあり、レベル4。出来映えで「+5」をつけたジャッジもいました。

 勢いのあるリフトでした。ただし、片手のリフトのところでフェンスにぶつかりそうになり、「ドキッ」としました。五輪の会場は、ショートトラックと併用になるため、分厚いクッションが全体を囲んでいます。あの形状だと、壁に近づいていった時の距離感が異なるので、感覚的につかみにくかったのではないかと思います。とっさに動きを変えて、ぶつからずに済んだのは素晴らしかったと思います。
――演技構成点は、米国勢を抜いて3位の評価でした。

 素晴らしいですね。順位自体は4位ですが、ロシア、中国に次いで滑りとしては3位の実力があることを示しました。自信をもって、この勢いでFSに臨めると思います。

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著者プロフィール

元毎日新聞記者、スポーツライター。自らのフィギュアスケート経験と審判資格をもとに、ルールや技術に正確な記事を執筆。日本オリンピック委員会広報部ライターとして、バンクーバー五輪を取材した。「Number」、「AERA」、「World Figure Skating」などに寄稿。最新著書は、“絶対王者”羽生結弦が7年にわたって築き上げてきた究極のメソッドと試行錯誤のプロセスが綴られた『羽生結弦 王者のメソッド』(文藝春秋)。

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