“失敗しない男”広島・栗林良吏 「もっとも勇気がいる」意外な攻略法とは
2021年、新人としてセーブ数歴代最多タイの数字を挙げ栗林良吏。早くも球界を代表するクローザーとなった 【写真は共同】
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歴代NPB:シーズン奪三振率ランキング
【データ提供:データスタジアム】
では、この難攻不落の守護神から、いかにして得点を奪うかを考えていきたい。圧倒的なピッチングを見せた栗林ではあるものの、四球が多い点は攻略のカギとなるだろう。昨季許したヒットが23本であるのに対し、与四球はそれを上回る28個。出塁だけを考えたときは、ヒットよりも四球を狙う方が理にかなっているとも言える。
2021年:ストライクカウント別ボールゾーン投球割合
【データ提供:データスタジアム】
さらに、2ストライク時には65.3%までボールゾーンへの投球が増え、ますますヒットを放つのも困難になる。より慎重な選球判断が求められるが、これだけの奪三振力を誇る投手ともなると、ボール球の見極めやスイングしてファウルで逃げることも簡単な話ではないだろう。
よって追い込まれた際は、スイングするゾーンをある程度限定して対応したい。具体的な目付けは、ゾーンの高めである。なぜなら、2ストライクではフォークが投球の54%を占め、リリースされた直後に打者が低めのストライクと感じるような投球は、そこから落下してボールゾーンとなる可能性が高いからだ。2ストライクに追い込まれながらも出塁のチャンスをうかがうのであれば、高めのストライクには食らいついていき、低めのゾーンは見逃し三振でも構わないというある種の潔さが必要になりそうだ。栗林は3ボールになると被出塁率が.725(リーグ平均は.558)となるため、そこまで持ち込めれば活路を見いだせる。
そして、何とか出塁できたランナーを得点圏まで進めることができたとしよう。ここからいよいよ、どのようにタイムリーを放つかという話に入る。
2021年度後半戦:球種別割合
【データ提供:データスタジアム】
ただし、注意点も付記しておこう。そもそも栗林はピンチを招く機会があまりなく、配球のサンプルが非常に少ない。今回は限られたデータで攻略法を導き出したが、今季もこうした傾向が見られるのかは、観戦時のポイントにしていただきたい。
今回はヒットの確率と四球を獲得する確率とを天秤(てんびん)にかけ、出塁のためにはあえてバットを振らないことも有効ではないか、と述べた。実際には、打者がスイングしない雰囲気をバッテリーが嗅ぎ取ったときに、甘い球でストライクを奪うといった駆け引きもあるだろう。バットを振らないという行為は誰にでもできるが、それを貫き通すことは勝負を放棄したようにも映りかねない。ある意味、もっとも勇気がいる作戦だろう。それだけの割り切りなくして、防御率0点台のクローザーを攻略することは困難ということでもある。デビューからここまでセーブ失敗のない栗林だが、果たして今季は攻略するチームが現れるだろうか。
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