連載:プロ野球選手の「攻略本」

高い奪三振能力を誇る日本ハム・伊藤大海 攻略法は「得意球種」を狙い打ち?

【写真は共同】

 NPBでトップを走る選手たちをデータから徹底検証。その中で見つけた選手の長所と攻略法を当連載「プロ野球選手の攻略本」にて紹介する。今季はこの「プロ野球選手の攻略本」を手元に置いて、アナリストの気分で観戦を楽しんでみてはいかがだろうか。今回は日本ハム・伊藤大海の攻略法に触れていく。

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 2020年ドラフト1位で日本ハムに入団した伊藤大海。開幕5戦目にプロ初登板を果たすと、1年間ほぼローテーションを外れることなくルーキーイヤーを乗り切った。終わってみれば、両リーグの新人では唯一となる規定投球回に到達し、2ケタ勝利をマーク。夏に行われた東京オリンピックでは日本代表に選出され、アメリカとの決勝戦でも好投を見せるなど、貴重なリリーバーとして侍ジャパンの金メダル獲得に大きく貢献した。
 伊藤の魅力は高い奪三振能力である。プロ初登板の初回からNPBの新人記録に並ぶ23イニング連続奪三振を記録するなど、昨季パ・リーグの規定投球回に到達した投手で3位となる奪三振率8.69を記録。三振を奪った決め球は、54個のストレートが最多で、次に多いのが武器であるスライダーだ。スライダーで奪った三振50個は、楽天・田中将大に次ぐリーグ2位。本人も自信があると語るスライダーがプロのバッターにも通用することを証明した。

2021年:球種別被打率

【データ提供:データスタジアム株式会社】

 球種別被打率を見ても、スライダーは.171と数多くある持ち球の中で最も低い。特に対右打者に限ると、82打数10安打で被打率.122とほとんど打たれなかった。これは右投手の右打者に対するスライダーでリーグトップの数値である(30打数以上の投手を対象)。

2021年:対左右打者別被打率・奪三振割合・与四球割合

【データ提供:データスタジアム株式会社】

 では、伊藤を攻略するにはどのような対策が必要だろうか。ひとつのポイントとなるのが、左打者である。対左右打者別の成績を見てみると、右打者に対しての被打率は.211だが、左打者に対しては.252。奪三振割合、与四球割合も対右打者より対左打者の成績が良くないことが分かる。要因としては、伊藤の武器であるスライダーが挙げられる。一般的に右投手のスライダーは外に逃げていく軌道になる右打者よりも、外から内に入ってくる軌道になる左打者の方が対応はしやすい(21年パ・リーグ右投手の対右打者スライダー被打率.202、対左打者被打率.235)。
 伊藤も例に漏れず、右打者に対してのスライダー被打率は.122だが、左打者に対しては.224と比較的打たれている。また、右投手が左打者と対戦する際は、スライダーなどの曲がる球が対応されやすいこともあり、フォーク(スプリット)やチェンジアップなどの落ちる球を有効に使う投手が多い。伊藤も落ちる球は投げるものの、左打者に対する投球割合は13.0%と低く(21年パ・リーグ右投手の左打者に対する落ちる球の投球割合は21.5%)、絶対的な球にはなっていないようだ。以上の点から左打者が攻略のポイントとなるだろう。

2021年:対左打者・カウント・球種別投球割合

【データ提供:データスタジアム株式会社】

 次に、左打者に対する配球の傾向から狙い球を絞っていきたい。持ち球の多い伊藤だが、カウントがボール先行の場面では、スプリットやチェンジアップのような落ちる球はほとんど投じず、スライダーの割合が上昇。スライダーのコントロールに自信を持っていることが伺え、得意な球種でカウントを整えにくる傾向があるようだ。
 その際の投球はカウントを取ることが主な目的なので、60.2%がストライクゾーンに投げ込まれる(ストライク先行時34.5%、並行時54.6%)。そして、左打者の外角からストライクゾーンに入れてくる配球が多く、ストライクゾーンのうち、内角に投じられる割合はわずか20.0%で、80.0%は真ん中から外側に配球される。左打者は右打者に比べると、右投手のスライダーを苦にしないため、ボール先行時にカウントを取りにくる真ん中から外寄りのスライダーがひとつの狙い目といえるだろう。
 今回の分析はあくまでも昨季の傾向から導き出した攻略法の一例であり、球種を8つ投げ分ける上に、超スローカーブを投げたり、横手からスライダーを投げたりと、器用さを持ち合わせる伊藤が、今季も同じような投球を見せるとは限らない。また、スプリットやチェンジアップなどの完成度はまだ高くないが、今後これらの球種に磨きをかけ、決め球として機能するようになったら、左打者も寄せ付けないような投球を見せる可能性もあるだろう。2年目を迎える今季、各球団がどのように伊藤を攻略し、伊藤はそれにどのように対応していくのか、注目していきたい。
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