ヤクルト・村上の弱点をアナリストが徹底分析 滅多打ちにされた球団は必見?
2021年シーズン、ヤクルトを日本一に導き、自らもセ・リーグMVPに輝いた村上は今や球界を代表する強打者となった 【写真は共同】
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2019-21年NPB:期間通算本塁打ランキング
【データ提供:データスタジアム】
過去3年間の通算本塁打ランキングの面々を見れば分かる通り、長距離打者の育成には時間が掛かるもので、20代中盤〜後半に開花して本塁打を量産していく傾向にある。村上は高卒2年目に36本塁打を放つなど、異例のスピードで本格化。九州学院高時代から長距離砲として期待を集める逸材ではあったが、期待を上回る速度で球界を代表する打者に成長している。
ヤクルト生え抜きの長距離砲といえば、通算304本塁打の池山隆寛の名前が挙がるが、その池山でも初めて30本塁打に到達したのがプロ入り5年目の1988年(31本塁打)。順調にいけば、村上は20代のうちに300本塁打を達成する可能性がある。現在248本塁打の山田哲人もいることから、近いうちに球団通算本塁打記録が更新される可能性は高い。
2018-21年S村上:球速帯別対ストレート通算成績
【データ提供:データスタジアム】
キャリアを通じた球種への対応を見ても、ストレートに対して打率.278、変化球では打率.262と大きな差はない。本塁打のペースもストレートには約12打数に1本、変化球は約16打数に1本となっている。村上に限らず、一軍でプレーを続けるためにはまずストレートに力負けしないことが重要で、その上で変化球にも対応できるとチームの中心打者として期待できる。
褒める点ばかりで欠点の無い打者のようにも見える村上だが、攻略に際してポイントになりそうなのがストレートの球速だ。トータルではストレートに対して打率.278を記録している村上だが、球速が上がるごとに打率は低下し、長打率も連動して低下。特に150キロを超えるストレートに対しては打率.141、長打率.315にとどまっている。
球速が上がるほど打率が低下する傾向は村上に限ったことではないが、2021年NPB平均の150キロ以上のストレートに対する打率は.231で、長打率は.355。村上にとって速球派との力勝負は分が悪いようだ。
150キロ超のストレートを打つことが難しい原因のひとつとして、「見極め」が難しいことが挙げられる。スピードを意識するあまりか高めのボール球に手を出しやすく、バットに当てたとしても本塁打、あるいはヒットゾーンに運ぶのは難しい。
村上もトータルのボールゾーンスイング率は20%台前半と優秀(NPB平均は20%台後半)だが、150キロ以上のストレートになると約33%まで上昇する。また、高めのボールゾーンに投じられた150キロ以上のストレートに対しては17打数0安打と結果が出ていない。近年は高めのボールゾーンにストレートをあえて投げ込む配球は珍しくないが、村上に対しても今後そうした配球が続くことが予想される。
2012-21年NPB:ストレートの平均球速・150キロ以上の割合
【データ提供:データスタジアム】
高速化の背景としては、2010年代中盤から各球場に従来のスピードガンより正確で球速の出やすいとされるトラッキング機器の導入が進んだことも影響しているが、高校時代に160キロを記録した大谷翔平(エンゼルス)や佐々木朗希(ロッテ)などアマチュアの大器が次々と誕生していることや、プロ・アマを通じてトレーニング全般が進化してより速いストレートを求めるトレンドの影響が大きいものと考えられる。
また、近年はセットアッパーや抑え投手として160キロ近いストレートを投げる外国人投手が各球団に増えており、これまで長距離砲や先発投手が主だった外国人選手の役回りに変化が見られる。特にこのコロナ禍では特例による外国人枠の増加によって柔軟な運用が可能となっており、消耗の大きいリリーフ投手のポジションを担当してもらうことが合理的な外国人枠の活用手段であると考えられる。
高速化の進む球界の中で、村上は果たしてどのように対処していくのか。キャリアトータルでの150キロ以上のストレート打率は.141と紹介したが、実はこの3年で対応の兆しを見せている。2019年は同打率.061、0本塁打。2020年は同打率.143、2本塁打。そして2021年は同打率.226、3本塁打。昨季の時点でもNPB平均(.231)には達していないが、ほとんど打てなかった2019年とは様相が異なっている。若きヤクルトの主砲・村上と各球団の速球派投手との力勝負は、2022年シーズンの大きな楽しみとなりそうだ。
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