卓球日本初の金メダリスト水谷隼 メディアに出演する理由と指導者を目指さない訳

照井雄太

今は指導者になることは考えていない

Tリーグでは、チーム数を増やして競技レベルを上げていくことが必要になると話した 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

――現在の日本選手についてお聞かせください。先日の世界卓球では、男子チームはシングルスではいい結果を残せませんでした。日本にはTリーグがありますが、水谷さんの目線だと優秀な選手は海外修行に行った方がいいという考えでしょうか。

 Tリーグはチーム数が少ないじゃないですか(男子4チーム、女子5チーム)。でも、各チームには10人近く選手がいて、ほとんど試合に出られない選手が多い。そこがもったいないと思っています。結局、給料をもらって、そこで満足している選手も嫌ですし、本当は試合に出られないのであれば、海外に出た方がいいのではないかと思います。

――海外から強い選手がTリーグに参戦出来れば、海外リーグで戦う必要もなくなってきますか。

 いや、僕はそれよりもチーム数を増やすことが優先ですね。どちらかと言うと海外の選手が来ることには反対です。海外の選手が来るということは、その分、日本選手が出られなくなるので。

 もっと中国選手やヨーロッパの強い選手を呼んで、レベルを上げていこうと言う人は多いですが、それは反対です。やはり日本選手の出場機会を与えるべきだし、その為にもチーム数を増やさないとどうにもならない。4チームと言うのは、他国のリーグでも見たことなくて、ロシアもドイツもフランスも10チームくらいはあるので。最低6チームは欲しいし、8〜10チームくらいが理想です。

――チーム数が増えると、全体のレベルは下がりますが、それでも日本選手の出場機会が増えた方がいいという考えですか。

 5年ぐらい行ったロシアには10チーム位ありましたが、本当に強いのは2チームだけです。そこを倒すのが目標だし、対戦する時はバチバチです。他のチームもそこまで強いわけではないですが、自分がいい準備をしないと負ける可能性はあるチームでした。

 多分、Tリーグもそんな感じになってくると思います。弱いチームは弱いチームで1つでも順位を上げようと頑張りますし、例えばピラミッド方式で2部とか3部とかがあれば、降格しないように頑張ると思います。出場機会を与え、それで結果を残せなかったらクビになるとか降格するとか、プレッシャーを与えないと選手は強くならないと思います。

――コーチや指導者への道は考えていますか。

 あまりないですね。あまりないというのは、今の自分がやる仕事ではないと思っているんですよ。メダルを獲ってコーチをするっていうのは、みんなと同じじゃないですか。自分がやりたい、どうこうではなくやるべきではないと思っています。

 ただ、金メダルを獲っているので、後輩たちにノウハウを教えていく必要はあると思っています。将来、こいつには自分の全てを教えてもいいと思う選手が出てくればですけど。今のところ、僕の中では魅力がある選手がいないから、教えてもダメだなと(笑)。この選手だったら、世界で勝てるなとか、自分を超えてくれるなとか、ワクワクするような選手が出てきたら、指導をしてみたいという気持ちはあります。


取材/文:照井雄太
構成:スポーツ企画工房

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著者プロフィール

1986年神奈川県生まれ。滝川第二高校、筑波大学で卓球に打ち込む。卒業後は、一般企業就職後、卓球の仕事がしたいと思い、2018年10月開幕直前から卓球の「Tリーグ」に転職。Tリーグでは試合運営の他、メルマガのコラム担当し、また不定期でスポーツメディアの卓球コラムを執筆している。

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