水面下で進むプロ野球「16球団構想」 賛成か反対か、ファンの意見はどっち?
「16球団構想」賛成派の声
1954年以来、50年ぶりに誕生した新球団・楽天。創設9年目の13年にパ・リーグを制し、日本一に 【写真は共同】
「既存のチームは太平洋側に偏っているので日本海側のチームを増やす等、各地域に根ざしたチームを作ってほしい」
「1リーグを8球団とし、4球団ずつ4ブロックに分けて地区優勝を決め、地区優勝同士でリーグ優勝、リーグ優勝チーム同士で日本シリーズを行うべき」
プロ野球チームの本拠地がない地域に新球団を誕生させ、本拠地を全国各地に分散させたいというのが、賛成派の大多数の意見だ。全国16か所に“おらが町のチーム”を作り、地域に根ざした活動を行う。リーグ編成はメジャーリーグのように地区別とし、移動の負担を減らしながら、ポストシーズンゲームを盛り上げる。なるほど、理に適った意見である。
「Jリーグを見倣ってもっとチームを増やして二部制にするくらいが盛り上がる! 落ちたくない、上がりたいで切磋琢磨する。選手の枠も増えることで、子どもに夢を与えられる」
「チームが増えることによって、興行的にも新たな可能性が生まれる。また選手の移籍に関する考え方も変わってくるのではないか」
これらはJリーグから着想を得た意見だ。プロ野球選手の移籍は昔と比べると前向きなイメージに変わったが、Jリーグほど活発に行われていないのが現状だ。また、チーム数が増えることで、Jリーグのような「期限付き移籍」実現の可能性も浮上するか。
「新球団にファンを取られまいと、既存の球団の運営努力が期待できるから」
「プロ野球の将来へ向けて、裾野を広げて、活動の場を増やすべき。1950年の2リーグ分裂からほとんど変わっていないのは、ビジネスとして残念な状態」
昭和の時代のプロ野球チームは、企業の広告塔としての役割があったが、平成、令和と時代が変遷し、プロ野球チームの運営はビジネスとしての側面が色濃くなった。プロ野球界もさらなる変化を遂げるべきと考えるユーザーの声は、賛成派に散見された。
「各地に球団ができると、旅の楽しみもできる」
「クライマックスシリーズに少しは正当性を与えることができる」
遠征をいとわないファンにとっては、球団数が増え、かつ本拠地が全国に広がることは願ったり叶ったりということか。16球団の本拠地めぐりは、想像するだけで楽しそうだ。また、上記のようなクライマックスシリーズに関する皮肉交じりのコメントが届いたことも、きっちり付け加えておきたい。
「16球団構想」反対派の声
04年に消滅した大阪近鉄。9月24日のホーム最終戦は、延長11回サヨナラ勝利という劇的な幕切れとなった 【写真は共同】
「出資候補どこよ」
「まず根本に球団を保有できるような企業が4つもあるのか?という問題がある」
「移動が大変になるのでは。主催試合が減り、球団経営がきつくなる可能性がある」
莫大な支出が求められる球団経営。コロナ禍の状況が不透明な状況下で、こうした意見が出るのはもっともだ。また、ホームゲームの数が減ることに対する不満も、球場観戦派と見られるユーザーの間で見られた。
「競技人口が減っている中で球団を増やすと、プロ野球全体のレベルが下がってしまうから」
「今でも本当のプロ!って思える選手が少なくなったと感じているし、そうなるとさらに外国人の当たり外れでチームの強弱が決まってしまい、レベルダウンに繋がるように思う」
「今の楽天の創設時でも明確な戦力差があった。そんな球団がいきなり4つも出てきたら見てられない」
球団数が増えることによって、球界全体のレベルがダウンするのではないか――。こうした危惧を、反対派のユーザーの多くが唱えている。04年の球界再編騒動後に分配ドラフトを経て誕生した東北楽天が、1年目のシーズンに挙げた成績「38勝97敗1分け(勝率.281)」の記憶が、いまだ鮮烈に残っているのだろう。
「16球団構想」賛成派は、球界全体のレベルがダウンすることへの不安を解消するために、
「外国人枠の撤廃などでチームレベルが下がらないようにすれば、いい試合がたくさん見られるのではないかと思います」
「選手が増えすぎるとレベルが落ちるが、韓国、台湾の有望な選手が加われば面白いと思う」
と期待を寄せるが、反対派の中にはこうしたアイデアを
「お金がない球団は補強ができない」
とバッサリ切り捨てるユーザーもいた。
「狭い日本の中、12球団で十分では」
「多すぎてわからなくなる」
こうした声もあながち無視はできないだろう。1993年の開幕以来、年々チーム数を増やしてきたJリーグには現在、J1、J2、J3合わせて57ものチームがある。裾野が広がる一方で、「多すぎて覚えられない」という声があがっていることも事実だ。筆者もそのひとりである。
(構成:スリーライト)