創設30周年記念 鹿島アントラーズ 未来へのキセキ

アントラーズは子どものような存在 ジーコTDが語る過去・現在・未来【未来へのキセキ-EPISODE 31】

池田博一

サッカーは人の感情を扱うスポーツ

試合に帯同するジーコはテクニカルディレクターとして、常に選手や監督にアドバイスを送り続けている。その存在、言葉はチームが成長するうえで欠かせない。 【(C)KASHIMA ANTLERS】

――近年、時代が変化するスピードも速まっています。そのなかで、アントラーズとして変えてはいけないもの、守らないといけないものとは何でしょうか。

 変わらないこと、変える必要のないこと。それはジーコスピリットと言ってもらっている「献身・誠実・尊重」になるでしょう。ただ、これはアントラーズに限らず、組織で働くうえで持っていなければならない、ごく当たり前のことだと思っています。会社の歴史を知り、事業内容を把握し、今後、それをどのように発展させていくかを考えながら仕事をするのは当たり前のことだと考えています。それはクラブも同じです。クラブが存在する以上、そうした当たり前のことを、まずは続けていかなければならない。

 一方、今後やるべきこととして考えるのは、やはり設備投資です。テクノロジーの発展とともに、サッカー自体が細分化されて、いろいろな分野の方が携わるようになりました。極端な話ですが、今のクラブが赤字になってでも、先行投資をして早急に新たなインフラ設備をプロとアカデミーに作って稼働させることが、第一にやるべきことだと思います。そういったところがないと、今の時代に沿った対応や情報収集を含めて、時代についていけなくなるのではないかと思っています。

 合わせて、インフラ設備を整えることは、優秀な人材獲得につながります。選手はもちろん、スタッフもそう。人事部門やスカウト部門において、しっかりとした体制づくりをしなければいけません。アントラーズでプレーしたい、仕事をしたいという人を採用するのではなく、本当の意味でクラブに貢献できる人材を、選手もスタッフも含めて連れてこなければいけません。無闇に投資をするのはリスクが伴います。人からの薦めに対して聞く耳を持つことはもちろん、最新のテクノロジーを駆使していろいろな情報を集めなければいけません。人が足りないからと慌てて入れようとするのはもっとも危険なことです。純粋にクラブに対して貢献できる人を連れてこなければいけません。

――クラブがひとつの目安として位置づける2041年に向けて、ジーコTDが期待する未来のアントラーズはどう描いていますか?

 どんな大会でも優勝するということ。それは国内だけでなく、アジアはもちろんクラブワールドカップ(W杯)を制することもそう。これまでクラブW杯には2回出場しましたが、そもそもこれはそう簡単にできないことです。世界的にも、アジアのクラブで決勝の舞台に立ったのはアントラーズが初めてでした。そういった高い水準の目標を、これからも置くこと。

 また、そこで満足することなく、もっと上を目指していかなければいけません。トップに立つのはどのプロジェクトでもできることです。もっとも大変であり難しいのは、そこを継続していけるかどうか。頂点までたどり着いたからといって、すぐに降格するということなどはあってはならない。そこを理解したうえで、継続していけるのか。世界一という目標をきっちりと設定しながら、今後を歩んでいく必要があると思います。

――今後、アントラーズがそれを実現するためには何が必要だと考えますか。ジーコTDが今まで残してきた数多くの発言のなかで、「記憶力が大事」という言葉が印象的です。「デビューしたときやタイトルを獲ったときの記憶を持ち続けられれば、人としての成長は継続される」というものでした。

 まず、今後それを伝えていく人が必要になると思っています。その言葉の真意については、クラブ内で話がされることもあるでしょう。培ってきた経験を、また伝え続けること。今後、そういったことができる役割の人が重要になってくるのではないかと思っています。また、結果を出すためには、能力が高ければ高い人ほど、成功する確率が高くなっていくものです。

 その意味でも、やはり人事部門にきちんとした人を採用して、さらなる補強をしていかなければいけません。ただ単に学歴がいい、能力が高いという人ではなくて、組織の一員として働ける人材が、選手スタッフを含めて必要になるのではないかと思っています。たとえ能力が高かったとしても、結束や団結のスピリットを持ち合わせていなければ、なかなかうまくいきません。投資額に見返りある人材を、しっかりと選ぶ必要性があるのではないかと思います。

――それでは最後に、アントラーズの未来の軌跡に期待するサポーターへメッセージをお願いします。

 サッカーは、人の感情を扱うスポーツです。勝敗が問われて、勝利したときには喜びがあり、負けたときには悲しみや怒りがあるもの。どのクラブにとっても、サポーターなくして成長することはできません。そのなかで、アントラーズというクラブは、サポーターを大切にしてきて、ともに歩み、ともに戦い、ともに喜び、ともに悲しみを味わってきました。私からのお願いとしては、サポーターとしてクラブにまつわるフロントスタッフを含めたアントラーズを、今後も支え続けてもらいたい。サポーターの皆さんが信じなければ、私たちが何を頑張っても意味がありません。

 また、サポーターの皆さんにお願いです。今後の未来のアントラーズが強くあり続けるために。今、アカデミーのクラウドファンディングを実施しています。新たにアカデミー専用グラウンドを作り、新たな未来のアントラーズの選手を輩出していくための大事なプロジェクトです。小額でも構いません。金額の大小にかかわらず、それは大事な支えです。これによって、将来的に曽ケ端準、土居聖真、町田浩樹、上田綺世、沖悠哉のようなアントラーズで育った選手が活躍することが、ファン・サポーターの喜びを与えることにつながってくるわけです。

 この将来、アントラーズが強くあり続けるために、ぜひとも皆さんに投資をしていただいて、その投資がいつか喜びに変わるように、ともに未来を築いていければと思います。トモニガンバリマショウ!

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