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鈴木満FDが語る、鹿島が30年で築いた財産
と未来への自負【未来へのキセキ-EPISODE 14】
鹿島アントラーズの鈴木満FD(右)はこの30年で、選手の編成、マネジメント、監督のサポートと数多くの引き出しがあると自負する
鹿島アントラーズの鈴木満FD(右)はこの30年で、選手の編成、マネジメント、監督のサポートと数多くの引き出しがあると自負する【(C)KASHIMA ANTLERS】

 Jリーグ史上最多となる20冠を獲得してきた鹿島アントラーズが、歴史を刻んできた30年間を鈴木満は見届けてきた。チームの強化を担うフットボールダイレクター(FD)として、その軌跡はどのような歩みだったのか。そして、次の10年、20年……鹿島が未来に向けて描いている方針について聞いた。

主力を担える選手の獲得と育成

――アントラーズはこれまで20個のタイトルを獲得してきましたが、16年のリーグ優勝を最後に国内タイトルからは遠ざかっています。その現状をどのように捉えていますか?


 2007年から09年までリーグ3連覇した後、16年にもリーグ優勝することができましたが、ここ数年は、若い選手がヨーロッパに移籍する流れに拍車がかかっています。それにより選手を育て主力として活躍が期待できるようになっても、すぐにヨーロッパに引き抜かれてしまう状況を抑えきれなくなりました。その穴を埋める補強(獲得)がなかなか難しく、そこがうまくできなかったことが、ここ数年、タイトルから遠ざかっている要因につながっていると考えています。


――各クラブにも言える大きなうねりですが、アントラーズとしても計算していた以上に、若手選手の海外移籍が加速している傾向にあるということでしょうか?


 スピードが速いというよりも、そういう時代になってきているのだと思います。柴崎岳、昌子源と、小笠原満男や中田浩二たちの次代を担う優秀な選手たちが少しずつ集まってきたなかで、16年にリーグ優勝でき、『さあ、ここからだ』となった状況で、主力選手たちが次から次に抜けてしまいました。ただ、この流れはもはや止められないと考えています。


――そうした状況を踏まえ、チーム強化・編成という視点においても、考え方を変えざるを得なかったところもあるのではないでしょうか?


 これまでは高卒や大卒、アカデミー出身者など、いわゆる生え抜きと言われる選手たちを、3年くらい時間をかけて鍛え、その後の主力を担ってもらうというサイクルを考えてきました。でも今は、選手を育てても海外移籍してしまう流れは止められないだけに、どうしても移籍(獲得)に頼らざるを得ないところが増えてきました。日本人選手はもちろん、外国籍の選手も含め、移籍により主力を担える選手をそろえることで対応していかなければいけなくなった。そのため体制も含めて今後はさらに、選手のスカウティングを強化し、他チームや外国籍選手の獲得に向けた調査を、より強化していく必要があると考えています。


 これまではどうしても自分たちで育てた選手を主力に据えていくという考え方でしたが、これからは、たとえ他チームの主力であったとしても、戦力として必要と考えれば補強していく考え方にシフトしていかなければいけない。安西幸輝は、今季途中からチームに復帰してくれましたが、彼のように若い年齢で獲得して鍛えても、2〜3年で海外移籍してしまうケースもありますから。これまでは適正戦力を意識してチーム編成を行ってきましたが、世の中の流れも鑑みて、多少、選手をだぶつかせるというか、移籍する可能性を考慮していく必要があるでしょう。


――選手のスカウティングを強化していこうとしている一方で、アカデミーの拡充に力を注いでいます。


 基本的には自前で選手を育てていく方針に変わりはありません。アカデミーから多くの選手が育てば、クラブの財政面としても助かります。また、選手供給の安定化においても、アカデミーからトップに昇格する選手が出てくることは理想的です。アカデミーから一定して、選手が育つ環境を築くことができれば、今より高いレベルをベースにすることができるようになる。安定性、継続性という意味でも、選手育成はクラブとして最も力を入れなければならない部分。そのため、アカデミーの強化という視点だけでなく、アカデミーを含めた一貫体制に力を注いでいくと表現した方がいいと思っています。


――最も力を注いでいきたいと考えているアカデミーの位置付けにも、この30年で変化はあるのでしょうか?


 正直、10年くらい前まではアカデミーとプロを一貫した体制でやっていこうという考えではありませんでした。鹿嶋という土地は、どうしてもアクセスや環境面で、他と見劣りする部分がありましたからね。そこから10年前に『VISION KA41』を発表したときには、50年後である2041年にアカデミー出身者がレギュラーとして5人くらい出場しているチームを目指そうということでやってきました。


 その目標に向けて、アカデミーとトップの一貫体制を築き、ソフトとしてはアントラーズ技術委員会を設置して、アカデミーにおいてもテクニカルスタッフやコーチを見るスタッフなど、人材を増やしてきました。ハードとしてはアカデミーハウス(ユース寮)を作り、今またアカデミー専用のグラウンドを建設するためのふるさと納税型のクラウドファンディングを実施しています。


 10年前から30周年を迎えた今年、その目標を『トップに昇格する選手を輩出する』のではなく、『トップで主力になれる選手を輩出する』ということでアップデートしました。そのために、アカデミーのテクニカルアドバイザーに小笠原、ユースの監督に柳沢敦と、プロとして成功した経験のある人材をアカデミーに加え、体制を整えています。30周年を期に、アカデミー自体の目標設定をレベルアップさせ、さらに強化していく。先ほど、移籍により主力を担える選手を補強していくという話をしましたが、優先順位としてはアカデミーの重要性が一番、上にあります。

原田大輔

1977年、東京都生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』の編集長を務めた後、2008年に独立。編集プロダクション「SCエディトリアル」を立ち上げ、書籍・雑誌の編集・執筆を行っている。ぴあ刊行の『FOOTBALL PEOPLE』シリーズやTAC出版刊行の『ワールドカップ観戦ガイド完全版』などを監修。Jリーグの取材も精力的に行っており、各クラブのオフィシャルメディアをはじめ、さまざまな媒体に記事を寄稿している。

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