薄氷の勝利だった高梨沙羅の全日本5連覇 後輩らの成長で五輪シーズンが楽しみに

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 北京五輪シーズンの国内開幕戦となる、スキー・ジャンプの全日本選手権ノーマルヒルが男女とも22日に札幌市の宮の森ジャンプ競技場で行われた。女子では1本目で3位だった高梨沙羅(クラレ)が2本目で逆転し、合計236.1点で5大会連続7度目の優勝を果たした。2位には高梨とわずか0.3点差の235.8点だった丸山希(北野建設SC)、3位には1本目で首位だった伊藤有希(土屋ホーム)がそれぞれ入った。

厳しい条件を言い訳にしない、高梨の強さ

大会5連覇を果たした高梨。1本目は向かい風、2本目は追い風という異なる条件にも対処し、逆転を果たした 【写真は共同】

 薄氷に見える勝利も着実につかみ取る、これが高梨の強さなのだろうか。1本目では、直前でスタート位置が男子並みの6番ゲートに下げられたことも影響したのか、伊藤と飛距離で8.5メートル差、8.1ポイント差をつけられた3位となり、リードを奪えず。「厳しいとは思わなかったけど、びっくりしました」と、一般的に飛距離が出やすいとされる向かい風の影響から、通常よりもかなり低い位置からの滑走となった。だが、それを言い訳にしないのが女子ジャンプ界の第一人者だ。「男子ってこういうところから出ているんだと思った。いい経験をさせてもらった。(男子と同じゲートで飛び、同じ距離を飛ぶのが)夢だったので、試合でかなってうれしいです」と前向きにとらえ、厳しい条件の中でも90.5メートルとK点超えの飛距離を記録し、優勝争いに踏みとどまった。

 迎えた2本目は1本目とは打って変わり、飛距離が出にくい追い風の状況に。それでも「この期間は(シーズン本格化前)最後のベースづくり。自分のやりたいことに集中していた。逆転したい、風がどうだというのはあまり考えられなかった」と自分のジャンプをすることだけに意識を集中させ、2本目では全選手の中で最長となる飛距離90.5メートルを記録。高梨の後に飛んだ丸山、伊藤がそれぞれ、80メートル台に終わったことで、前人未到の5連覇を達成した。

25歳となった第一人者は、後輩たちの成長にも意欲

 出場すれば高梨にとって3度目となる五輪開幕まで、あと100日あまり。「この4年間、ゼロから自分のジャンプを作り直してようやく形が見えてきた。オリンピックで成長した姿を見ていただけるように目指してやってきているので、自分のやるべきことを全部出せるようにしたいです」と前日取材で心境を明かしていたが、その視線は女子ジャンプ界全体にも向けられている。

 2014年ソチ大会に17歳で五輪初出場を果たした高梨も、今月8日で25歳になる。

「年々、女子も男子も(ゲート位置が)落ちている感じはします。初めての国際大会では、たしか30番ゲート(からの滑走)で、(滑走距離が)半分以下になったんだなと自分の成長、女子ジャンプ界の成長がすごく見えている感じがします」と振り返ると、ユーモアを交えつつ次のように語った。

「四捨五入したらアラサー。女子ジャンプ界の中では(自分は)若手ではない。後輩もたくさん出てきて、知らない子、若い子も出てきているので(彼女たちに)影響を与えて、いろいろなことを教えられるようにしていきたいと思います」。3度目の大舞台を目指していく先に、後輩たちの成長にも意欲を見せた。

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