「オオタニ、半端ないって」 ピッチングニンジャが語る大谷翔平の凄さ
「軌道から球種を予測することは不可能」
大谷の投球について「軌道から球種を予測することは不可能」とピッチングニンジャは分析 【スポーツナビ】
ピッチトンネルとは、米データサイト『ベースボール・プロスペクタス』が2017年1月に言語化したもの。ホームベースの手前約7メートルの位置に小さな輪(トンネル)があるとイメージし、もしも複数の球種がその狭い輪の中を通るなら、打者は球種の判断が困難となり、仮にその輪を通過した後で球種を判別できたとしても、もはやボールは打者の手元にあり、反応する時間が残されていない――という理論構成になっている。
文字だけではその意味を伝えにくいが、映像を重ね合わせることで、そのことがイメージしやすくなる。ピッチングニンジャがオーバーレイの映像をSNSに投稿を始めたのも、「みんなにそのことを理解してほしかったから」だそうだ。
今回も、そうした理解を深める前提で大谷のオーバーレイを作成してもらったが、でき上がった映像は、想定を超えた。YouTubeスポーツナビ公式チャンネル内でも説明しているが、フォーシームとスライダーの軌道が、見事に一致したのである。
もちろん、軌道が似通っていると仮説を立てた上で作成を依頼したわけだが、特定のシーンを切り出したのでもなく、同じ打者に対してフォーシーム、スライダー、スプリットの3球種を投げているシーンを無作為に抽出しただけ。それですでに紹介した動画のような結果が得られたのである。
では、この映像から具体的にどんなことが分かるのか。
それがYouTubeの第2回動画で紹介している内容でもあるので、ここではそのさわりだけに留めるが、真っすぐとスライダーの軌道が一致することの効果を、ピッチングニンジャはこう解説した。
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実際このときも、打者のバットが大谷のスライダーに空を切ったあとで、捕手のミットにボールが収まった。完全にタイミングを外されていた。
また、この動画では大谷が高い位置からスプリットを落としているが、その利点についてはこう説明する。
「スプリットを高めから落とすことで、打者は真っすぐとより錯覚しやすくなる」
スプリットは、低ければ低い方がいい、というわけではない。大谷のスプリットは90マイル(約145キロ)前後。これが高めに来ると体感ではもう少し速く感じられるので、もはや打者にはフォーシームとしか映らない。ただでさえ大谷のスプリットはフォーシームと横の変化量がほぼ一致し、区別がつきにくいのに、高めに投じることで、より相手の錯覚を誘う。仮に低めから落ちるスプリットには目が慣れていたとしても、高めからというのは稀なので、さらに手に負えない。被打率が低くて、当然なのである。
打者は0.25秒前まで球種を判断できない
大谷は打者が0.25秒前まで球種を判断できないボールを投げている 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】
『ベースボール・プロスペクタス』は、ピッチトンネルの位置をホームベース手前約7メートルとしているが、それを時間に置き換えた場合、どの地点でそれぞれの球種の枝分かれが始まるのか。
それを映像のコマ送りでざっくり算出したところ、ホームベースに到達する約0.25秒前だった。つまり打者は、ホームにボールが到達する約0.25秒前まで、大谷の球種を判断できない、ということになる。
理論上、打者が球種を判別し、ストライクかボールかを含めて、振る、振らないの決断を下し、ボールにコンタクトするのに要する時間は約0.15秒とされる。
STATCASTのデータを検索できる『ベースボール・サバント』では、ホームプレート到達0.167秒前が、打者が最終的に決断を下す地点としている。そう考えると0.25秒というのは、まだ打者に余裕があるようにも感じられるが、大谷の真っすぐは100マイル近いので、0.25秒前に球種が分かったところで、どこまで反応できるか。
ピッチングニンジャも、「気付いたときにはもう、手遅れではないか」と指摘した。
さて、動画の内容に触れるのはここまでにしておきたいが、ピッチングニンジャは、他にも動画の中で投手・大谷の長所について触れている。
ここでは、ひとつだけ紹介したい。
「彼は、状況が厳しければ厳しいほど、ギアを上げる。それは過去の偉大な投手に共通する部分だ。だから、彼を見ていると本当に楽しい。同時に素晴らしいアスリートであり、闘争心を前面に出す。時にユニークな表情を見せるのも楽しめる部分だ」
参考までに関連するデータを紹介する――。
★被打率(2021)
・走者なし .238
・走者あり .154
・得点圏 .122
こうしたデータも踏まえた上で、ピッチングニンジャはこう大谷を評した。
「FORCE OF NATURE」
意訳すると、「オオタニ、半端ないって」である。
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