重圧と戦った張本智和の東京五輪 復調のきっかけ、水谷への思い、パリへ

平野貴也

卓球男子団体で銅メダルを獲得した張本。若きエースは東京五輪で何を感じたのか 【スポーツナビ】

 日本男子卓球界に現れた新たなエースは、世界の頂点を期待されるポテンシャルの持ち主だ。世界ランク4位の張本智和(木下グループ)は、18歳にして優勝候補の一角という大きな期待を背負い、初めての五輪という舞台に挑戦した。

 シングルスでは、まさかの4回戦敗退。プレッシャーに負け、力を出し切れない悔しさを味わった。一方、団体戦では気持ちの切り替えに苦悩しながら、監督のさい配や、頼もしい先輩たちに支えられて復活。準決勝では強豪ドイツのエース格2人を破って、その強さを誇示した。3位決定戦を制して銅メダルを獲得すると、仙台出身の張本は、被災地から応援、サポートしてくれた人たちにメダルを見せられることを喜んだ。

 初の五輪で経験した悔しさ、難しさ、そして楽しさと喜び。若きエースは東京五輪で何を感じたのか。競技を終えて間もない張本に、オンラインでインタビューを行った。(取材日:8月8日)

エースポジションから外れ、プレッシャーから解放

3位決定戦で銅メダルを獲得した瞬間、素早い飛び出しで水谷隼に抱きついた張本 【写真は共同】

――いきなりしんどいところからお聞きするのですが、今大会は、プレッシャーと戦う姿がすごく印象的でした。シングルスを終えたときには「怖さを感じた」とも話されていました。まず、この大会に、どのような重圧を感じていたのか教えてください。

 ほかの試合でも緊張はするのですが、もし負けたとしても次の大会で頑張れるというところがあります。でも、五輪は4年に1回。負けたら、3年後、4年後まで再挑戦できる機会がありません。今回は東京ということで、自国開催も特別でした。そういう部分で緊張してしまいました。3月のWTT中東シリーズ・スターコンテンダードーハ大会が終わった後から、ラケットを変えたわけでもないのに、急に(しっくりと来る)ラケットの握り方が分からなくなってしまったり、試合でも足が動かなかったりして、プレッシャーを感じていました。練習ではできていることが試合でできなくなって、ちょっとでもミスをすると、悪いイメージが膨らんでしまい、力を出し切れなくて、シングルスでは本当に悔しい思いをしました。

――ただ、団体戦では途中から闘志が戻ったというか、相手に向かっていくような強気な姿勢が蘇ったと感じました。どの辺りからプレッシャーを乗り越えたと感じましたか?

 1回戦の豪州戦でも苦戦をしてしまったのですが、2回戦のスウェーデン戦でオーダーが変わりました(※編集注:シングルス2試合に出場だったのが、ダブルスとシングルスの起用に変わり、シングルスで2試合を戦うエースポジションには水谷隼が起用された)。いつもだったら、シングルスの2点使いをしてもらえなかったら、悔しい気持ちになるのですが、あのときは正直に言って「良かった」と思いました。そこで一度、絶対に勝たなくちゃいけないというプレッシャーから解放されて、楽な気持ちで思い切ってプレーできました。

 それまでは不安で、プレーがちょっと悪いと、次の球も入らないんじゃないかとか良くないイメージもあったのですが、ドイツ戦からは、自分は勝てると思って、楽しみながらプレーができました。ドイツ戦も第1シングルスのオフチャロフ選手との試合の最初は、良くなかったのですが、そのあとは思い切ったプレーができて、第3シングルスのフランツィスカ選手との試合も含めると、ドイツ戦が、自分の一番良いパフォーマンスを出すことができて良かったです(※編集注:ドイツに2-3で敗れたが、張本はシングルスで2勝)。

――3位決定戦で銅メダルを獲得した瞬間は、素早い飛び出しで水谷隼選手に抱きついていましたが、この試合の感想もあらためて教えてください。

 まず、水谷さんと丹羽(孝希)さんのダブルスに勇気をもらいました。(ダブルスは不利と思われていたこともあり)あそこで勝ってくれたおかげで、気持ちを楽にして第1シングルスを戦えました。本当に2人には感謝しています。勝った瞬間はうれしかったですし、最後に勝って、メダルを取って終わることができたのは、本当に良かったです。昨日、家族にはメダルを見せたので、早く仙台、東北の人たちにもメダルを見せたいです。

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著者プロフィール

平野貴也

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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