重圧と戦った張本智和の東京五輪 復調のきっかけ、水谷への思い、パリへ

平野貴也

「張本なら大丈夫だ」と思われる選手に

張本智和「水谷選手がいなくなっても、自分が引っ張っていける選手になりたい」 【Getty Images】

――張本選手は、小学校1年生のときに東日本大震災を経験されています。翌12年にロンドン五輪で女子団体の銀メダルを獲得した福原愛さんが、張本選手の通う仙台市立東宮城野小学校を訪問されたという話を記事で読みました。当時の自分のように喜んでもらえるのではないでしょうか?

 福原さんが小学校に来たときは、多分、全校生徒がメダルを触らせてもらったと思います。すごく重くて、格好良くて、感動しました。当時は、すごいなという気持ちが90%くらいを占めていましたけど、10%くらいは「いつか自分も」という気持ちがありました。昨日、ふと、メダルを取ったということよりも、あのときの自分と同じような気持ちになってもらえるかもしれない、メダルを見せる側になったんだと思って、そのことの方がすごいんじゃないかと感じました。

――今回の活躍も素晴らしいですが、張本選手はまだ18歳と若く、早くも次の2024年パリ大会での活躍が期待される選手でもあります。次の目標に向けては、どのように意識していますか?

 まずは、これからも日本代表に入っていくことが大事だと思っています。今回の東京五輪の代表選考会もすごく難しいものでした。水谷さんや、丹羽さんは、チームメートとしては頼もしいですけど、個人戦でライバルになれば、すごく手ごわいです。それに2人だけではなくて、日本には強い選手がほかにもたくさんいますから。

――水谷選手が引退の意向を表明していて、おそらく、今度は引っ張ってくれる選手のいないチームのエースという立場になると思います。試合後の会見では、団体戦で全勝したけど、16年リオデジャネイロ五輪のときの水谷選手のような安定感を身につけたいとも仰っていました。

 今回は、自分がプレッシャーに苦しんでいる中で、しっかり戦っている先輩たちの姿から学ぶものは多かったですし、ドイツ戦を終わった後は、この後、もしもメダルが取れなくても、すごくたくさんのことを学べたなという感覚を持っていました。水谷選手がいなくなっても、自分が引っ張っていける選手になりたいと思います。やっぱり、今回は勝った試合でもリードされている展開が多くて、水谷さんや丹羽さんもそうですし、見ている人が大丈夫かなと心配になってしまうようなところがあったと思います。でも、そうではなくて、水谷さんみたいにリードをしながら試合を進めて、「これなら大丈夫だ」「張本なら大丈夫だ」と思われるような試合ができる選手になりたいと思いました。団体戦は流れもあるので、ただ勝つだけじゃなくて、どういう内容で勝つかというのも大事です。チームに勢いを与えたり、安心感を与えたりできるようになりたいです。

――具体的に、プレー面で3年後に向けて進化したい部分は、どこですか。今回は、以前に中国の選手を破ったようなバックハンドが出せなかったと話していましたよね?

 大きく分けると、フォアハンド、バックハンドでどうするかというのはあります。ただ、練習では思い切ったフォアハンドなどをみんな打つんですけれども、実際の試合では1回、2回あるかないか。そういうところを考えると、やっぱり、もっとサーブ、レシーブで優位な展開に持っていくことを考えないといけないなと思いました。水谷さんは、本当にサーブがうまくて、対戦したら、うまく打たせてもらえませんし、そういうところは今回も見させてもらったので、すごく学べたところです。

水谷選手の後をしっかり引き継ぐ

写真を一緒に撮る卓球男子団体メンバーの張本智和(写真左)、水谷隼(写真中央)、丹羽孝希(写真右) 【写真は共同】

――なるほど。まだまだ進化が期待できそうで楽しみです。ところで、試合の話ばかり聞いてしまいましたが、五輪ならではの刺激や楽しみを感じた部分はありましたか?

 選手村には2回行きました。限定品のお土産を買ったり、五輪のマークのところで写真を撮ったりしたときは、楽しかったですね。ほかの競技に刺激を受けた部分もありました。特に、体操競技の橋本大輝選手には、刺激を受けました(団体で銀メダル、個人総合と種目別の鉄棒で金メダル)。僕の1つか2つ年上(編集注:張本が2003年、橋本が2001年生まれ。現年齢は1歳違いだが、2学年上)だったと思うのですが、内村航平選手という偉大な先輩の後を、今大会で完璧に引き継いだんだな、すごいなと思いました。僕も水谷選手の後をしっかり継いでいきたいと思いました。

――最後に、読者へメッセージをお願いします。

 応援ありがとうございました。今回は、無観客ではありましたけど、本当にたくさんの方のおかげで東京五輪が開催されて、メダルを取ることができました。本当に感謝しています。次は、もっと良いメダルを取れるように頑張りますので、引き続き応援をよろしくお願いします。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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