連載:#BAYSTARS - 横浜DeNAベイスターズ連載企画 -

ベイスターズとアイドルマスターの共通点 ファンを増やす「連帯感」の作り方

中島大輔

この10年、横浜DeNAベイスターズの事業革新とともに突き進んできた木村洋太球団社長は、次の一手を画策している 【スリーライト】

 スマートフォンが生活に不可欠なものとなり、エンターテインメントビジネスのあり方にも大きな影響を及ぼしている。39歳でプロ野球事業のトップに立つ横浜DeNAベイスターズの木村洋太社長と、バンダイナムコエンターテインメントで「ガンダム成長の立役者」と言われる宮河恭夫社長はそれぞれどう考えているのか。明日の“成功”を見据えて語り合った。(取材日:7月9日)

時代に合った楽しみ方を提案する

――昨今、若者が映像コンテンツを倍速視聴したり、そもそも長いコンテンツを敬遠したりという傾向が見られます。エンタメを提供する側として、若者の傾向をどう受け止めて制作していますか?

宮河 若い人に視聴方法を聞くと、確かに1倍で見る人はなかなかいないですね。1.3倍くらいが多い。でも、1倍で見たい人はスポーツなら会場に行けば1倍で見られるわけじゃないですか。逆に「2時間も見ているなんて、やっていられないよ」という人はネットで1.3倍とか1.5倍で見ればいい。僕が作った映像を「1.5倍で見ています」と言われたら「できれば通常の速度で見てほしいな(笑)」と思うけど、それが今の時代です。見てくれているのだから、良しとするのが一番いいかな。

――ユーザーが、自分の好きな見方を選択できるのはいいことだと?

宮河 そう思いますね。「3分以上の作品は見られません」となってくると話は別だけど、倍速視聴なら良いのではと。世の中に迎合する気はないけれど、いろいろな見方をしている人がいるということはきちんと把握し、そのニーズや時代に合わせることは必要ですね。

木村 我々も心のどこかで「1回から9回まで、3時間見ていってください」という思いは強くあります。ただ、そのことで新たにファンになり得る方の入り口を閉ざしたら本末転倒だという気がします。コンパクトにダイジェスト映像を配信するとか、球場での観戦もイニング別に座席を売ることも必要になってくるかもしれません。「こういう見方もありますよ」と提案していくなかで、いつか3時間のコンテンツを見てもらえるようにコミュニケーションしていくのが我々の仕事だと思います。

「共感」と「連帯感」は何が違うのか

横浜スタジアム外周でボールパークの雰囲気を楽しめる「ハマスタBAYビアガーデン」(写真は2018年の様子) 【(C)YDB】

――DeNAがベイスターズの経営を始めた頃、球場を「居酒屋感覚」で楽しんでほしいとしたのと通じる部分を感じます。

木村 「居酒屋感覚」というコンセプトは、一緒に来た人たちとワイワイガヤガヤ楽しんでほしいという思いがベースにあります。だんだんスタンドが埋まるようになってきて、その場にいる約3万人の一体感は球場特有の観戦価値だと感じるようになりました。

宮河 それがリアルの良さですよね。

木村 はい。スタジアムには野球という共通言語があるなか、見方はいろいろあって、応援しているチームが逆の人たちもいます。なんとなく「あの人たちと一緒で楽しかったね」という光景を作っていくことに、2016、7年くらいから力を入れています。それは今後、我々のビジネスが成長していくキーワードになっていく気がするので、“居酒屋”から“新たな出会いも含めた場所”に進化させていきたいと考えています。

宮河 球場には基本的にベイスターズと、対戦相手が好きな人しかいないわけですよね。弊社が保有しているIP(編注:Intellectual Property の略で、キャラクターなどの知的財産のことを指す)の「アイドルマスター」のライブにはアイドルマスターのファンしかいない。そうすると、「この空間には自分が好きな人たちしかいない」という安心感みたいな気持ちが会場にあふれ返るわけです。そうした連帯感がリアルの良さ。自分が手がけているアーティストや球団の連帯感をどうやって維持し、100人から200人、200人から300人にしていくのが木村さんや僕の役割かもしれません。

木村 私はコロナ以前、趣味で夏フェスに行っていました。音楽をこういう空間で楽しみたいという前提を持った人たちがいるからこそ、できる雰囲気がありますよね。たとえアーティストでなくても、太鼓をたたいている方がそのあたりにいても許される空気感がある。それはすごく大きな意味があるのかもしれません。

バンダイナムコエンターテインメントが作り上げる音楽ライブにあふれ返る“連帯感”……これがリアルの良さだという 【(c) BANDAI NAMCO Entertainment Inc.】

――よくエンタメビジネスでは「共感が大事」と言われますが、それは同じものですか。

宮河 共感はいい言葉だけど、安心とか、「そこにいて良かったな」というくらい緩い感じの方が僕は好きですね。個人の問題ですが。共感と言うと、強制的にワーってみんなで盛り上がる感じがする。木村さんがおっしゃったフェスは共感ではなく、もっと緩い雰囲気です。どちらかと言うとスポーツは感動とか共感に持っていこうとする傾向があるけど、安心は自然とそこにあるもの。その方が居場所としてすごく和む感じがします。

木村 フェスではメインコンテンツもすごく重要ですが、「周りのみんなと一緒に雨に打たれた」という思い出も心の中に残るんですよね。共感までいくと、もっとちゃんとしたものになっていく気がしますけど、その空気の中で始まったいろんな体験がフェスの雰囲気を作っていく。球場に入った瞬間から感じる匂い、空気も含めて、なんとなく「共感」という言葉に入っているのかは改めて考えないといけないかもしれません。

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著者プロフィール

中島大輔

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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