チームのサポートで蘇った“エース”張本 卓球男子「一丸」でつかんだ団体銅メダル

平野貴也

男子団体で銅メダルを獲得し、笑顔でポーズをとる(左から)張本智和、倉嶋監督、丹羽孝希、水谷隼=東京体育館 【共同】

 新しいエースを盛り立て、育て、さらなる前進のための銅メダルを手に入れた。東京五輪の卓球競技は6日に最終日を迎え、男子団体の3位決定戦に臨んだ日本は、3-1で韓国を破って銅メダルを獲得した。2日前の準決勝でドイツに2-3と惜敗し、前回の銀メダルには及ばなかったが、2大会連続のメダル獲得となった。倉嶋洋介監督は「選手もスタッフも一丸で5年間戦ってきた。特に最後の1年は、苦しいことが多かった。すべての計画を4年で進めてきて、順調にやっていたものが総崩れになり、練習ができなくなったり、チームランキングが落ちたりした。みんなが一生懸命にサポートしてくれたり、そういうところでも努力を続け、ここまで来れた。非常に、感謝しかない」と崩れかけたチームへのサポートに感謝を示した。

 最後は、まさに「一丸」の勝利だった。最初のダブルスに出場した水谷隼(木下グループ)、丹羽孝希(スヴェンソン)が第1ゲームの出だしで得点すると、スタンドで見守っていたチームスタッフと前日に銀メダルで戦いを終えた女子チームの面々が、1点を取るごとに総立ちで拍手を送り、後押しした。勝利を決めた第3シングルスでは、水谷が奮闘。最終第4シングルスを戦う張本智和(木下グループ)は、ウォーミングアップには行かずにベンチから応援し、勝利が決まった瞬間には、隣にいた倉嶋監督が「試合でもあれくらいのフットワークを……」と冗談めかした素早い飛び出しで水谷に抱きつき、遅れて丹羽、倉嶋監督が加わって歓喜の輪ができた。

ルーキーとしてではなく、エースとして

男子団体で銅メダル獲得を決めて喜ぶ水谷隼と、抱きつく張本智和=東京体育館 【共同】

 この銅メダルは、きっと先につながるものになる。その象徴は、18歳でルーキーとしてではなくエースとしてこのチームに加わった張本だ。そして、彼の将来性を大きくしたのは、チーム全体のサポートと言える。倉嶋監督は「彼を育てないといけないという思いが僕も含めてスタッフにはあって、それが実を結んだ形になったかどうかは今回は分からないんですけど、最後、団体戦で全勝を果たしてメダルも取れたので、本当に日本のエースとして活躍してくれたと思う」と期待に応える活躍だったという見方で総括したが、張本が団体戦の初戦で見せた動きは、良くなかった。張本自身も認めるもので、彼がよみがえる環境を作ったのは、間違いなくチームのサポートだった。

 たとえば、3位決定戦では、最初のダブルスが世界ランク1位のペアに先勝し、これ以上ない内容で張本につなげた。倉嶋監督が「一番でかい。はちゃめちゃでかい。今まで一番良いプレーを出してくれた」と評したダブルスの1勝は、経験のある水谷と丹羽が、左・左vs.右・右の読み合いを制した。普段はクールな丹羽もガッツポーズを見せて、勢いに乗った。続く第1シングルスの張本は、1-1で迎えた第3ゲームで5-8とリードを許す苦しい展開。高く上がった球の強打をミスするなど少し気負った場面もあった。しかし、ダブルスの奮闘で心に火がついていた張本は、折れなかった。

「準決勝も決勝も、ダブルスがフルゲームまで競ったり、勝ったりしてくれた。あんなに不利な一番手で良い試合をしてくれたのに、自分がちょっと調子が悪いだけでエース対決に負けるわけにはいかないと思った。この2試合、本当に勇気をもらった」(張本)

 勝負所で強気の姿勢を取り戻し、10-8と一気に逆転。相手の粘りでデュースに持ち込まれたが、最後はフォアハンドのカウンターで12-10とし、キーポイントを押さえた。自信を取り戻した張本は、無双状態。第4ゲームでは、得意のチキータ(横回転バックハンド強打)で相手のサーブを瞬殺するなど連続得点を挙げて圧倒。最後は再びフォアハンドのカウンター。11点目を決めるとラケットを投げ上げ、試合に込めていた気合いと喜びを表した。第2シングルスの丹羽は0-3で敗れたが、第3シングルスの水谷は、ベテランらしい試合運び。大接戦の第1ゲームを14-12でものにすると、要所で変化をつけたサーブから得点を奪い、強烈な3球目攻撃も仕掛けるなどストレート勝ち。2大会連続のメダルを勝ち取った。

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著者プロフィール

平野貴也

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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