チームのサポートで蘇った“エース”張本 卓球男子「一丸」でつかんだ団体銅メダル
男子団体で銅メダルを獲得し、笑顔でポーズをとる(左から)張本智和、倉嶋監督、丹羽孝希、水谷隼=東京体育館 【共同】
最後は、まさに「一丸」の勝利だった。最初のダブルスに出場した水谷隼(木下グループ)、丹羽孝希(スヴェンソン)が第1ゲームの出だしで得点すると、スタンドで見守っていたチームスタッフと前日に銀メダルで戦いを終えた女子チームの面々が、1点を取るごとに総立ちで拍手を送り、後押しした。勝利を決めた第3シングルスでは、水谷が奮闘。最終第4シングルスを戦う張本智和(木下グループ)は、ウォーミングアップには行かずにベンチから応援し、勝利が決まった瞬間には、隣にいた倉嶋監督が「試合でもあれくらいのフットワークを……」と冗談めかした素早い飛び出しで水谷に抱きつき、遅れて丹羽、倉嶋監督が加わって歓喜の輪ができた。
ルーキーとしてではなく、エースとして
男子団体で銅メダル獲得を決めて喜ぶ水谷隼と、抱きつく張本智和=東京体育館 【共同】
たとえば、3位決定戦では、最初のダブルスが世界ランク1位のペアに先勝し、これ以上ない内容で張本につなげた。倉嶋監督が「一番でかい。はちゃめちゃでかい。今まで一番良いプレーを出してくれた」と評したダブルスの1勝は、経験のある水谷と丹羽が、左・左vs.右・右の読み合いを制した。普段はクールな丹羽もガッツポーズを見せて、勢いに乗った。続く第1シングルスの張本は、1-1で迎えた第3ゲームで5-8とリードを許す苦しい展開。高く上がった球の強打をミスするなど少し気負った場面もあった。しかし、ダブルスの奮闘で心に火がついていた張本は、折れなかった。
「準決勝も決勝も、ダブルスがフルゲームまで競ったり、勝ったりしてくれた。あんなに不利な一番手で良い試合をしてくれたのに、自分がちょっと調子が悪いだけでエース対決に負けるわけにはいかないと思った。この2試合、本当に勇気をもらった」(張本)
勝負所で強気の姿勢を取り戻し、10-8と一気に逆転。相手の粘りでデュースに持ち込まれたが、最後はフォアハンドのカウンターで12-10とし、キーポイントを押さえた。自信を取り戻した張本は、無双状態。第4ゲームでは、得意のチキータ(横回転バックハンド強打)で相手のサーブを瞬殺するなど連続得点を挙げて圧倒。最後は再びフォアハンドのカウンター。11点目を決めるとラケットを投げ上げ、試合に込めていた気合いと喜びを表した。第2シングルスの丹羽は0-3で敗れたが、第3シングルスの水谷は、ベテランらしい試合運び。大接戦の第1ゲームを14-12でものにすると、要所で変化をつけたサーブから得点を奪い、強烈な3球目攻撃も仕掛けるなどストレート勝ち。2大会連続のメダルを勝ち取った。