チームのサポートで蘇った“エース”張本 卓球男子「一丸」でつかんだ団体銅メダル
転機となった準々決勝のスウェーデン戦
男子団体準々決勝 スウェーデン戦の第1試合でプレーする丹羽孝希(左)、張本智和組=東京体育館 【共同】
このさい配は、スウェーデン戦を勝つというところにとどまらない効果があったように思う。初戦の豪州戦は、3-0のストレート勝ちだったが、張本の不調が気掛かりだった。プレーにも表情にも覇気がなく、メダル争いを期待されたシングルスで4回戦敗退を喫した影響が懸念された。スウェーデン戦でも通常オーダーで臨んでいた場合、もし勝ち上がったとしても、張本が敗れたり、苦戦したりするようであれば、準決勝以降でエースシングルスに起用することは難しかったはずだ。
シングルスで相手のエース格2人を倒さなければならないというプレッシャーから解放された張本は、スウェーデン戦で復調の兆しを見せた。そして準決勝のドイツ戦は、チームとしては敗れたが、張本は相手のシングルス2枚を1人で撃破して本来のミッションを達成。持ち味の気迫あふれるプレーが復活した。
24年パリ五輪では圧倒的エースに
水谷からエースの座を引き継いだ張本。24年パリ五輪ではチームを引っ張る存在になってほしい 【Getty Images】
「団体戦では全勝でしたが、リオ五輪のときの水谷さんの全勝と比べると、まだ安心感が足りないと思っています。リードされる場面も多かった。リオのときの水谷さんは、常にリードして、ちょっと粘られても最後逃げ切る戦いを見せていた。次の五輪ではもっと安心感を与えられるようなエースになれたらいいなと思います」
チームを引っ張るエースの役割とは、振る舞いとは何か。それを東京五輪という最大の舞台で、周囲にサポートされながら身をもって学んだ経験が、次の飛躍につながるはずだ。倉嶋監督は「序盤は、本来のプレーができなかったと思いますが、団体戦では結局全勝。次の五輪につながる五輪になりました。最後、銅メダルがついてきて、メダリストになって勝って終われた」と話した。張本は仙台の出身。2011年東北大震災の被災地である東北、仙台にメダルを持ち帰って見せられることを喜んでいた。
24年パリ五輪の顔ぶれがどうなるのかは、分からない。倉嶋監督は「張本は当然ながら、あと3年で下も伸びてくる。水谷はこの大会を集大成と言っているけど、僕はまだできると言っている。すごい若手が出てくるかも、水谷や丹羽がベテランの意地を見せるかも、張本以外のエースが出てくるかもしれない。そういう楽しみが3年後にあるんじゃないかと思います」と次の舞台への期待を語った。次の歩みの中心となる張本を育て、その力で進んだ張本が今度は引っ張る。そこから生まれる新たなエネルギーで卓球男子は、24年パリ五輪へと進んでいく。