“悔し涙の銅メダル”に四元奈生美が提言 「打倒中国」へ、伊藤美誠の課題とは?

吉田治良

銅メダルをもたらした高いサービス力

ユー・モンユの“ツッツキのレシーブ”にも即座に対応。第1ゲームを先取された伊藤だが、その後は質の高いサービスで圧倒し、4-1で3位決定戦を制した 【写真は共同】

 でも、その悔しい負けから、3位決定戦まで時間がないなかでよく気持ちを切り替え、確実にメダルを獲ったのは、本当にすごいことだと思います。

 やはり、彼女のメンタルは普通じゃない(笑)。あらためて強靭(きょうじん)なメンタルの持ち主なんだと感服しましたね。だって、オリンピックでメダルを獲ったんですよ。「やったー!」って喜ぶのが当たり前なのに、試合後の伊藤選手は「準決勝の負けが悔しかった」と涙を流すんですから。

 モンユ・ユ選手との3位決定戦は第1ゲームを6-11で落としましたが、準決勝のショックを引きずっていたわけではありません。

 今大会のユー選手は、準々決勝で石川佳純選手を倒したように調子がとても良かった。そして、「ツッツキのレシーブ」と言って、強いカットをかけて、当てると下に落ちてしまうレシーブを伊藤選手のバックに送り、これがかなり有効だったんです。下から持ち上げてつないで入れたところを、長い手足を生かした威力のあるドライブで決められていましたね。

 でも、すぐに伊藤選手も対応します。第2ゲームの後半から、そのレシーブをさせないように、上回転のサーブ、当てると上に飛んでしまうようなサービスを混ぜながら、うまく自分のリズムを作っていったんです。

 そこからはもう圧倒的で、メダルの懸かった試合で、サービスがこんなに効くことがあるのかなって思うくらいのサービスエースの数でしたよね。精神的に重圧がかかるなかでもきっちり勝てたのは、サービス力の高さの賜物だったと思います。

 第4ゲームの途中、スマッシュのミスから連続失点すると、自分からタイムアウトを取って悪い流れを断ち切りましたが、あのあたりもさすがでした。しかも、戻ってすぐにサービスエース。本当にこの試合はサービスがよく効きましたね。

 では今後、シングルスで中国選手を倒して金メダルを獲るにはどうすればいいか?

 中国の選手は、伊藤選手に対しては、あえて打たせてミスを誘うようなプレーが多いんです。今回の混合ダブルスの試合でもそうでしたが、伊藤選手は男子選手に強打されても逆にカウンターで返せるほどの力がある。そうであれば、自分からどんどん攻めていくだけではなく、焦らず、相手にもう少し攻撃をさせて、それをカウンターで狙っていくというプレーを、もう少し織り交ぜてもいいと思います。

 強気な攻めが魅力の伊藤選手ですが、ブロック力もあるので、相手の打ちミスを誘うようなプレーをもっと取り入れてもいい。重要なのは、攻めと守りのバランス。このあたりが、今後の課題かもしれませんね。

 さて、次は団体戦です。石川選手と伊藤選手は、それぞれシングルスでの悔しい思いをぶつけてほしいし、ようやく出番が訪れる平野美宇選手は、思い切って初の大舞台に臨んでほしい。3人で協力しながら、まずは油断をせずに、中国が待ち構えるところまで勝ち上がり、最後は全員の晴れ晴れとした笑顔が見れたらいいなと思っています。

(企画構成:YOJI-GEN)
四元奈生美(よつもと・なおみ)
1978年9月21日生まれ、東京都立川市出身。4歳から卓球を始め、数多くの大会で優勝。2001年4月、大学卒業と同時にプロに転向する。 04年には中国超級リーグに参戦。北京チームに所属。同チームの超級クラスでは外国人初の所属選手となり、この年の総合優勝に貢献した。08年には全日本選手権、混合ダブルスで準優勝。11年に結婚・出産後、13年1月の全日本選手権に出場。カラフルなユニフォームを着用して試合に出場し、「卓球界のジャンヌ・ダルク」とも呼ばれた。現在は、コメンテーター&スポーツウェアデザイナー、ママプレーヤーとして活動中だ。

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著者プロフィール

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

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