【YouTube企画】星野ジャパン同窓会 ―北京の記憶―

里崎が提言「勝つために使わない覚悟」 星野ジャパン同窓会・バッテリー編(2)

ベースボール・タイムズ

北京の練習環境、ブルペンは…

北京五輪では「(川上)憲伸さんとバッテリーを組めたのが一番嬉しかった」と里崎。同じ徳島出身の2人が日の丸を背負って戦った 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 さらに両氏は北京五輪期間中の生活を振り返り、特に練習環境について「厳しかった」、「キツかった」と振り返る。「まともな練習なんてさせてもらえなかった」と里崎氏。「打撃練習が3分4人とか2分3人とかだった」と十分な時間が取れなかったことを訴える。さらに、前の試合が延長戦にもつれ込んだ際には、球場内の通路で長時間待機し、試合終了から30分後に次の試合が開始されることもあった。

 その“ドタバタぶり”は、試合中のブルペンでも同様だった。五輪では選手以外のスタッフの人数も限られ、プルペンキャッチャーも人手不足で、里崎氏は「光山(英和)さんがトレーナーの肩書きで入って、3人(里崎、阿部、矢野)が順番でブルペンを回っていた」と記憶する。そのような普段とは異なる“忙しさ”はあったが、両氏は「ベンチよりブルペンの方が平和だった」と口を揃える。グラウンド、ベンチから物理的にも距離があったブルペンでは、「シンプルに試合の状況を見ているだけ」。大会を通してチーム内に漂っていた緊張感と重苦しさとはまた違った空気感が、ブルペンにはあったという。

「調子の悪い選手は使う必要がない」

故障明けの強化試合で不安を残した千賀滉大。短期決戦の中、稲葉監督の起用法が注目される 【写真は共同】

 いよいよ始まる稲葉ジャパンの戦い。果たして東京五輪のベンチ、ブルペンは、どのような雰囲気になるのだろうか。改めて代表メンバーを見た里崎氏は、今大会でのキーマンに鈴木誠也(広島)を挙げ、「4番を打つと思うけど、やっぱり4番が長打も含めて打たないとなかなか厳しい」力を込める。さらに「ピッチャーは山本由伸。最短で5試合。決勝に山本由伸を見据えてローテーションを組んで行くんじゃないかなと思う」と予想する。

 日本代表に選ばれた選手たちの実力に疑いの余地はない。その中で稲葉監督の起用法、采配が鍵になるが、里崎氏は「調子の悪い選手は使う必要がない」と言い切る。東京五輪での大会形式、試合数の少なさも指摘し、「先発完投でもいい。無理に代えなくてもいい」と提言。「良い選手が揃っているから使わないといけないと思ったらダメ。情が絡んで悪い方向に転がると取り返しのつかないことになる。勝つためには使わない選手が出ることも覚悟の上」と訴えた。

 今度こそ金メダルを。里崎氏は「メジャーリーガーも出ないんだから。その中で日本の野球が負けちゃだめだよ」と鼓舞する。「と言いながら、俺らは北京で4位(苦笑)。お前が言うなと世の中のみなさんが言うのは百も承知。当時もバッシングを受けた」と、改めて北京五輪の“苦い思い出”を振り返りながらも、最後には「思い切ってやってもらいたい」とエール。成瀬氏も「頑張ってもらいたいですし、金メダルを獲れるはず」と力を込めた。13年ぶりの五輪野球で悲願達成へ――。多くの選手、ファン、そして北京戦士たちの想いを受けた稲葉ジャパンの戦いが、いよいよ始まる。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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