フェンシングで最注目の女子フルーレ団体 元代表選手がメンバーの特徴と素顔を解説

田中夕子

多彩な選手が揃う「チームJAPAN」

過去にない大人数で出場する今回の五輪。西岡(右から2番目)は「大きなチームで臨めるのはうらやましい」と語る 【写真:アフロ】

――個人戦ももちろんですが、団体戦も日本は世界ランク5位。活躍が期待されます。

 イタリア、ロシア、フランス、アメリカが強豪ですが、フランス、アメリカとは同レベルだと思います。ロシアとイタリアは身長も高く、強い選手が揃っているので厳しい相手ではありますが、勝つ可能性も十分ある。受け身になってしまうと勝機は減りますが、彼女たちは「(相手が)強いからどうしよう」と言いながら、臆せずバーンと攻める。見ているこちらからすれば、どこがびびってんねん、というプレーで突っ込んで、戻ってきたら「あー怖かった」と(笑)。こんなに平均年齢が若いチームは世界を見渡してもありません。可能性は無限大です。

――東京五輪には女子フルーレを含む団体5種目、個人6種目が出場します。全種目、西岡さんから見て「チームJAPAN」の印象は?

 まずこれほどの大人数で出場するオリンピックが初めて。純粋に「チームJAPAN」という大きなチームで臨めるのはうらやましいです。若いフルーレに対して、サーブルは男女ともベテランと若手が融合したチーム。特に男子は20代から37歳の最年長、島村智博選手まで年齢は幅広いですが、オリンピック出場は徳南賢太選手以外初めての選手ばかりなので、全員がチャレンジャーとして一丸となって臨むはずです。

 女子サーブルも同様に、経験者の青木千佳選手が中心ではありますが、田村紀佳選手や江村美咲選手、みんな責任感が強い。心配なのは、みんな「自分がやらなきゃ」と追い込み過ぎてしまうこともあるので、追い込むのではなく、最後は気分を盛り上げて臨んでほしい。個人的には、女子フルーレに続いて気になるのが女子サーブルなので、頑張ってほしいですね。

 男子エペは、これまで何度もグランプリやワールドカップで優勝したり、結果を出している経験者が揃ったチームです。見延(和靖)先輩も前回のオリンピックを経験していますし、東京では団体で勝ちたい気持ちが強い。いつも通りの力を出せれば勝てるチームなので、やってくれると信じています。

 そして女子エペは個人で佐藤(希望)選手が出場するのですが、二児の母でロンドン、リオに続いて3大会出場。尊敬しかないですね。フェンシングが大好きだからできることですが、女子エペのみ団体の出場枠を逃がした中、唯一女子エペの代表として出場する。責任感も苦しさもあると思いますが、それを見せないのが佐藤選手の強さでもあります。とにかく「頑張って!」と応援したくなる選手です。

 そして、女子同様に男子フルーレも若い選手が揃いました。みんな「やってやろう」という気持ちの強い選手なのですが、同じフルーレの太田(雄貴・前会長)先輩の影響が大きく、「太田会長のようになりたい、太田会長を超えたい」というのが強すぎる。もちろん太田先輩は素晴らしく、大きな存在であるのは間違いありませんが、1人1人力もあるし、もっと自分に自信を持ってほしいな、と思いますね。これが自分だ、というものを作り上げて、一皮むければもっと強くなる選手ばかり。オリンピックで勝つ可能性を十分に持った選手なので、「あれこれ考えずに思いきりやれ!」と言いたいですね(笑)。

五輪は「自分のために戦ってほしい」

西岡は「誰かのために頑張るという気持ちも強いと思いますが、それ以上にオリンピックでは自分のために戦ってほしい」とエールを送った 【スポーツナビ】

――改めて、共に戦ってきた女子フルーレの選手を含めた日本代表選手に東京五輪でこんな戦いをしてほしい、こんな姿を見てほしい、と西岡さんのメッセージをお願いします。

 出られなかった選手や、応援してくれる人。誰かのために頑張るという気持ちも強いと思いますが、それ以上にオリンピックでは自分のために戦ってほしいですね。ここまで苦しんで、頑張って来たのは自分が結果を求めてきたからで、そのために最後まで必死で戦う姿を見ることが、一緒に戦った人、応援してきた人からすれば何よりの喜びです。時間は限られていますが、「もうやり残したことはない」と思えるぐらい惜しみなく時間を使って、自信を持って、楽しんでほしい。そんな姿が見られたら、間違いなく私は泣きます。実はもうすでに、みんながオリンピックの舞台に立つことをイメージしたのですが、ちょっと考えただけで泣きそうになったぐらい(笑)。ここまでのストーリー、どれだけ頑張って来たか、戦う姿から見ている人にも伝わるので、思いきり戦ってほしいですね。

 そして見る方々には小さな身体で叫びながら、1点1点をもぎ取る姿を見てほしい。フェンシングは残り1秒まで大逆転が可能なスポーツですので、最後の瞬間まで一緒に楽しんでください。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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