川島永嗣に聞く、日本と世界の距離 GK目線でのユーロ2020の注目ポイントは?
日本と世界との差は確実に縮まっているが……
5月下旬から6月上旬に行われた日本代表の活動では2試合に出場。38歳となったいまもプレーの安定感は抜群だ 【Gettyimages】
――長く日本人GKが世界で戦うのは難しいと言われてきましたが、そうした認識についてはどう捉えていますか?
僕は18歳でイタリアに留学したときから、日本人GKは世界でも通用すると思っていましたし、その思いはいまでも変わらないです。最近の日本の若いGKを見ても、ポテンシャルは高いですし、あとは自信を持つだけというか。サッカーをやっている人の心の中には、どこか日本人GKは海外で成功するのは難しいという刷り込みがあるのかもしれませんが、まずはそうした劣等感を取ることが大切だと思います。
例えば、かつて世界ナンバーワンと言われた元スペイン代表の(イケル・)カシージャスの身長は184センチでしたし、パリ・サンジェルマンのケイラー・ナバス(コスタリカ代表)も185センチと、日本のGKと背の高さはほとんど変わりません。いまユーロ2020に出場しているスイス代表の守護神(ヤン・)ゾマーだって身長は183センチですから高さで日本人が極端に劣っていることはないわけです。日本人GKの技術は高いですし、自信を持って自分のプレーさえ表現できれば、海外でも問題なく活躍ができると僕は信じています。
――では、GK目線で、世界と日本は距離についてはどう考えていますか?
確実に縮まっているとは思います。でも、同時に世界も進化しているので自分たちの成長スピードを上げないと、少し差が縮まったと思ってもすぐにまた差をつけられてしまいます。日本が世界に追いつくには、走るスピードやボールスピードはもちろん、判断の速さやプレー強度、球際の強さやサッカーと切り離せないフィジカルなど全体的に上げていかないといけない部分が多いのは事実です。
5月から6月にかけての日本代表のキャンプでは、スピード感があって強度の高い練習ができているという印象を持っていました。でも、いま行われているユーロ2020を見るとやっぱりすごい。自分たちがいい方向に向かっていたとしても、それ以上に周りは成長しているかもしれません。日本が世界に近づいているのは間違ないですが、ちょっとでも過信すれば、またすぐに取り残されてしまう、そのことは忘れてはいけないと思います。
イタリアの守護神ドンナルンマに注目。優勝予想は!?
16歳8カ月でプロデビューを果たし、17歳6カ月の若さでイタリア代表初キャップを飾っているドンナルンマ。31試合連続無敗のチームを最後尾から支えており、チームには欠かせない存在だ 【Gettyimages】
――今回ユーロ2020で、注目している点があれば教えてください。
昨季のCLを振り返ると、やはりマンチェスター・シティのポゼッションサッカーが印象に残りました。それにサッカー界全体を見ると、年々フィジカル要素の重要性が増してきているなか、どういうチームが頂点に立つのかは興味深く思ってます。
――GKで特に注目している選手はいますか?
ユーロを見て思うのは、本当にどの国もいいGKがいるということです。強豪国でなくても、安定感のあるGKは増えましたし、全体的なレベルが上がっているのは間違いない。そんななかドイツの(マヌエル・)ノイアーは実力者の1人かもしれません。ただ、今回僕が注目しているのはイタリアの(ジャンルイジ・)ドンナルンマですね。まだ22歳と若いですが、GKとしてのポテンシャルはすごく高いものを感じます。
イタリアは18年のロシアW杯出場を逃していますし、ドンナルンマにとっては初の国際舞台。経験値でいえばほかの偉大なGKに比べると劣っているのはやむを得ません。そんな彼が、ユーロという大舞台でどんな仕事をするのかは興味がありますし、それがチーム(イタリア)の結果にどんな影響を与えるのかということも気になりますね。
――ここまでの戦いで気になったチームなどはありますか?(注:インタビューは6月22日に実施)
なかなか、どこと言うのは難しいですが……。ただ、やはり強豪国はいいチームですよね。オランダ、ベルギー、(イタリア)はグループリーグ全勝ですし、フランスもタレントは豊富。そういうレベルの高いチームが、トーナメントの一発勝負になったときに、どういう試合をするのかに注目したいです。
――ズバリ優勝予想は?
フランス、ベルギー、オランダ(決勝トーナメント1回戦敗退)。それにイングランドも気になるし、あとはドイツも。ベルギーは18年のロシアW杯で対戦しましたけど、あのときよりも選手の経験値は上がっているような気がします。やっぱりいまはフランスでやっていますし、ベルギーでもプレーしていたので、そうした国が気になってしまいますね(笑)。
(取材・文 栗原正夫)
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