“モンスター”井上尚弥の「ベストバウト」は? 識者が選ぶ名勝負ランキング
ライターの船橋真二郎氏に井上尚弥の「ベストバウト」をランキング形式で選んでもらった 【写真:ロイター/アフロ】
10位:リカルド・ロドリゲス(アメリカ)
【写真:西村尚己/アフロスポーツ】
日付、場所:2017年5月21日 有明コロシアム
WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ12回戦
WBOスーパーフライ級王座の5度目の防衛戦。この試合がベストバウトのひとつに挙がることは、あまりないのかもしれない。挑戦者は無敗の世界ランカーとの指名挑戦者決定戦を勝ち抜いてきたとはいえ、戦績は16勝(5KO)3敗と平凡。予想は王者の圧勝に傾いていた。ポイントは5大世界戦、2日連続イベントの大トリを務めたシチュエーションだった。
前日、寺地拳四朗(BMB)、比嘉大吾(現Ambition)とフレッシュな王者が誕生したが、村田諒太(帝拳)は論議を呼ぶ判定で王座奪取ならず。さらに翌日、八重樫東(大橋)がまさかの初回TKO負けで王座から陥落。会場の有明コロシアムは凍りついた。不穏な空気のなか、井上の肩に大きなものが背負わされたように感じられたのである。それでも2回にはサウスポーにスイッチして左で腰を落とさせるなど、力の差を見せつけた井上が、3回に左フックで2度倒してKO勝ち。期待通り、あるいはそれ以上の結果を出す平常心が実に頼もしく映った。
9位:佐野友樹(松田)
【写真:アフロスポーツ】
日付、場所:2013年4月16日 後楽園ホール
ライトフライ級10回戦
プロ3戦目、20歳になったばかりの若者には大きな試練になるはずだった。日本ライトフライ級1位の佐野を立ち上がりからハイテンポな攻撃で圧倒。初回に右目上を切り裂き、2回には左フックでダウンも奪った。圧勝ペースで突き進む井上が右拳を痛めるのは3回途中。以降、ほぼ左手のみの戦いを強いられるが、逆にハイレベルな攻防技術がどんな状況にも動じない心の上にあることを証明する。
佐野は沖縄尚学高、東洋大の豊富なアマキャリアがベースにあり、プロのキャリアも10年近く。2年前には日本タイトルに挑戦し、判定で惜敗(1-2)している。そんな31歳を井上は左一本で寄せつけない。4回にはダウンを追加。多彩なタイミング、角度から左を放ち、ダブル、トリプルとつなぐボディワーク、ステップも見事だった。判定決着と思われた最終ラウンド。左を畳みかけ、レフェリーストップを呼び込む。その後も何度となく見せることになる高い対応力、発想力を見せつけた。
8位:ワルリト・パレナス(フィリピン)
【写真:ロイター/アフロ】
日付、場所:2015年12月29日 有明コロシアム
WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ12回戦
1年前、鉄壁を誇った名王者オマール・ナルバエスをわずか2ラウンドで沈め、当時の世界最短記録8戦目で2階級制覇を果たした代償は大きかった。負傷の右拳は脱臼骨折が判明し、手術。ブランクを余儀なくされた。復帰戦で迎えたパレナスは日本のジムと契約し、24勝21KO(6敗1分)の強打を見せつける一方、打たれもろさも露呈していた。が、井上の離脱を受けた暫定王座決定戦で引き分け、WBOに指名された1位挑戦者。大きな期待と一抹の不安が交差した。
井上は早々に不安を一蹴してみせる。俊敏かつ的確な位置取りでパレナスにさわらせない。再びの衝撃は2回だった。井上の左フックから右の強打。一瞬フラッとしたところを逃さず右を叩きつけると、フィリピン人挑戦者が崩れ落ちる。この3発はいずれもガードの上を叩いたもの。それでも完全に効いた。井上の詰めは鋭い。速攻で倒し、レフェリーがカウント途中でストップ。センセーショナルなKO劇で復活を告げた。
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