ベイスターズ再建録―「継承と革新」その途上の10年―

横浜の街に三浦大輔があふれた“奇跡の光景” 「プロジェクト番長引退」の舞台裏

二宮寿朗
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少数の人間で動かしていた「プロジェクト番長引退」。数日で一気に動かしていって、引退会見翌日に間に合わせた 【横浜DeNAベイスターズ】

 2016年9月19日、横浜スタジアムは異様な盛り上がりを見せていた。

 はしゃぐのも無理はない。万年BクラスだったベイスターズはDeNA体制に生まれ変わって、初めてのクライマックスシリーズ出場まであと「1」と迫っていたからだ。

 25年ぶりのセ・リーグ優勝を決めていた広島東洋カープとの2連戦。前日は6回に2ランを放っていたホセ・ロペスの10回サヨナラ3ランで劇的な勝利を手にしてチームのムードも最高潮だった。

 前日から続いているような押せ押せムード。1回裏にはまたしてもロペスの2ランが飛び出し、先発の今永昇太は7回二死まで1失点と好投。須田幸太がバトンを受けて、最後は山崎康晃が登場する。

 雨のなか、ヤスアキジャンプがスタンドを揺らす。

 代打の松山竜平をショートゴロに打ち取った瞬間、3位が確定。人々は抱き合い、立ち上がり、拳を突き上る。スタンドの揺れがマックスになる。

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♬お〜おーおーおお、DeNAベイスターズ。

 大勢の歓喜が絡み合って雨天に響く。

 アレックス・ラミレス監督は ・スターマンとハイタッチ、整列してファンに一礼する。スクリーンには「これから本当の戦いが始まる」の文字が浮かび上がった。

 スタジアムの揺れがまだ収まらない。

 挨拶を終えたベテラン三浦大輔は、後輩である筒香嘉智の肩に手を掛けて耳元で小さく告げた。

「俺、引退するから」
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著者プロフィール

1972年、愛媛県生まれ。日本大学卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社し、格闘技 、ラグビー、ボクシング、サッカーなどを担当。退社後、文藝春秋「Number」の編集者を経て独立。 様々な現場取材で培った観察眼と対象に迫る確かな筆致には定評がある。著書に「 松田直樹を忘れない」(三栄書房)、「中村俊輔 サッカー覚書」(文藝春秋、共著)「 鉄人の思考法〜1980年生まれ、戦い続けるアスリート」(集英社)など。スポーツサイト「SPOAL(スポール)」編集長。

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