東京五輪100日前、最新のメダル展望 金メダル獲得数を更新できるか?

矢内由美子

日本人選手で初めてマスターズ優勝を果たした松山にも金メダルの期待が高まる 【写真:ロイター/アフロ】

 4月14日は東京五輪の100日前。各競技で五輪代表へ名乗りを上げる選手たちが続々と誕生している今、100日後に始まるメダル争いや注目選手を展望した。

競泳は歴史的快挙が生まれる?

 4月10日に代表選考会である日本選手権が終わったばかりの競泳では、世界中が感動する“サプライズ”があった。白血病から復帰した池江璃花子(ルネサンス)の代表入りだ。リレー種目のみの代表入りだが存在感は別格。まだ復活の途上にあるため過度の期待は慎みたいが、五輪で泳ぐ姿そのものが勇気や希望を与えてくれるだろう。

 競泳には新旧の金メダル候補が目白押しだ。選考会で勢いを見せたのは、お家芸の男子200メートル平泳ぎで初代表入りした20歳の佐藤翔馬(東京SC/慶應義塾大)。アテネ五輪と北京五輪で2大会連続2冠という金字塔を打ち立てているあの北島康介さんと同じスイミングスクールで育ち、今回の選考会では2分6秒12の世界記録に迫る2分6秒40の日本記録で優勝した。

 男子の自由形で85年ぶりとなる金メダルを狙う200メートル自由形の松元克央(セントラルスポーツ)にも注目したい。選考会では自身が持つ日本記録を0秒48更新する1分44秒65で優勝したが、これはリオ五輪の優勝記録とまったく同じで、2019年世界選手権の優勝タイムを0秒28上回っている。東京五輪で歴史的快挙が生まれる可能性は十分にある。

 いち早く内定が出ていた男子個人メドレーの瀬戸大也(TEAM DAIYA)は、200メートルと400メートルで2冠を目指すほか、200メートルバタフライでも表彰台を狙える。400メートル個人メドレーは競技初日に行われるため、勝てば日本チーム全体を勢いづかせることになる。五輪3大会連続出場を決めた萩野公介(ブリヂストン)は、リオで金メダルに輝いた400メートルを回避し、200メートル個人メドレーに絞って頂点を見据える。

 女子に目を向けると、200メートルと400メートルの個人メドレーで優勝を狙える大橋悠依(イトマン東進)に期待がかかる。3大会連続出場となる200メートル平泳ぎの渡部香生子(JSS)も満を持して頂点を狙っている。また、男子100メートルバタフライの水沼尚輝(新潟医療福祉大職員)、川本武史(トヨタ自動車)はそろって表彰台に立てる可能性がある。

1年延期で桃田の準備も整った

 近年、新記録樹立が目覚ましい陸上では、2019年世界選手権で20キロと50キロの2種目を制した男子競歩陣が充実している。20キロの山西利和(愛知製鋼)、50キロの鈴木雄介(富士通)は金メダルに最も近い。また、“9秒台トリオ”のサニブラウン・ハキーム(フロリダ大)、桐生祥秀(日本生命)、小池祐貴(住友電工)が競い合う男子短距離は、4×100メートルリレーのメンバーがどうなるかも含めて楽しみが大きい。

 陸上競技は4月下旬からトラック&フィールドのシーズンが本格的に始まる。男子走り幅跳びの橋岡優輝(富士通)、女子やり投げの北口榛花(JAL)ら勢いのある選手も多く、どんな記録を出すか、期待が大きい。

1年前は右目眼窩底の骨折で不安視された桃田だったが、延期によって試合勘を取り戻す時間ができた 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 この10年で最も躍進した競技であるバドミントンには、金メダル候補が目白押しだ。注目選手の筆頭は、2020年1月の交通事故から復活した男子シングルス世界ランク1位の桃田賢斗(NTT東日本)。事故で右目眼窩底を骨折して手術をしたため、五輪が予定通りに昨夏に開催されていたら金メダル獲得はかなり厳しかったが、1年の延期でコンディションを戻す時間があった。1年2カ月ぶりの国際大会となった3月の全英オープンではベスト8で姿を消したが、試合勘を取り戻したことは大きい。課題が明確になったこともプラスに考えており、今はその修正に取り組んでいるはずだ。

 16年リオデジャネイロ五輪で“タカマツ”こと高橋礼華・松友美佐紀(日本ユニシス)ペアが金メダルを獲得した女子ダブルスでは、“フクヒロ”こと福島由紀・廣田彩花(アメリカンベイプ岐阜)ペアと“ナガマツ”こと永原和可那・松本麻佑(北都銀行)ペアが頂点に挑む。渡辺勇大は遠藤大由と組む男子ダブルスと、東野有紗(3人とも日本ユニシス)と組む混合ダブルスで2冠を狙える。女子シングルスの奥原希望(太陽ホールディングス)、山口茜(再春館製薬所)も金メダル候補だ。

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著者プロフィール

北海道生まれ。北海道大卒業後にスポーツニッポン新聞社に入社し、五輪、サッカーなどを担当。06年に退社し、以後フリーランスとして活動。Jリーグ浦和レッズオフィシャルメディア『REDS TOMORROW』編集長を務める。近著に『ザック・ジャパンの流儀』(学研新書)

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