東京五輪100日前、最新のメダル展望 金メダル獲得数を更新できるか?

矢内由美子

卓球は“打倒中国”なるか

金メダル獲得には絶対に乗り越えなくてはならない卓球王国・中国の牙城。伊藤美誠(写真)、石川佳純、平野美宇の3人で団体には出場する 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 卓球では女子シングルス、団体、混合ダブルスで3冠を目指す伊藤美誠(スターツ)に注目だ。団体では石川佳純(全農)、平野美宇(日本生命)と、混合ダブルスでは水谷隼(木下グループ)とともに頂点を目指す。卓球界の合言葉は“打倒中国”。過去の五輪で卓球の金メダルの8割以上を奪っている王国を倒すべく、全員が一丸となって戦う。

 金メダル量産の期待が膨らむのは、リオ五輪で男子が全階級で表彰台を確保した柔道だ。リオに続く連覇を狙うのは、男子73キロ級の大野将平(旭化成)。19年世界選手権をオール一本勝ちで制した最強選手だ。コロナ禍による大会中止で実戦不足はいたしかたないが、海外勢にとっては研究材料の映像もない状態。大野に隙はないだろう。

 男子66キロ級の阿部一二三(パーク24)と女子52キロ級の阿部詩(日本体育大)は兄妹とも金メダル候補ナンバー1として期待度も注目度も高い。また、柔道には今回から採用されている男女混合団体があり、2つの金メダルを取る選手が何人出るかという楽しみもある。

 1964年東京五輪で、体操と並ぶ競技団体別最多となる5個の金メダルを獲得したレスリングでは、グレコローマン60キロ級の文田健一郎(ミキハウス)、フリースタイル65キロ級の乙黒拓斗(自衛隊)に注目だ。今回も金メダル候補がずらりと並ぶ女子では、57キロ級の川井梨紗子と同62キロ級の妹・友香子(ともにジャパンビバレッジ)の姉妹優勝に期待が懸かる。

プロ選手の活躍に期待

大坂なおみ(写真)や渋野日向子らがプロの大舞台で結果を出している昨今。東京五輪での活躍にも注目だ 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 今回は過去にないほどプロ選手に注目が集まりそうだ。男女を通じて日本人初の四大大会優勝(2018、20年全米オープン、19、21年全豪オープン)と世界ランク1位の偉業を達成したテニス女子シングルスの大坂なおみ(日清食品)。ゴルフでは日本人として初めてマスターズを制し、今まさに時の人となっている松山英樹(LEXUS)、19年全英女子オープンで日本勢として42年ぶりの優勝を飾った渋野日向子(サントリー)と、男女の両輪に期待が懸かる。

 今回から加わった新競技も楽しみだ。スポーツクライミングの楢崎智亜、野口啓代(ともにTEAM au)はいずれも金メダルに近い。自転車競技の新種目であるBMXフリースタイル・パークの男子には19歳の中村輪夢(ウイングアーク1st)がいる。スケートボード女子パークの四十住さくら(ベンヌ)、岡本碧優(MKグループ)、男子ストリートの堀米優斗(XFLAG)ら、五輪の今後をけん引するアーバンスポーツの顔たちは見逃せない。沖縄で発祥し、今や全世界に広まっている空手では、男女の形が盤石の強さで本番を迎える。男子形の喜友名諒(劉衛流龍鳳会)、女子形の清水希容(ミキハウス)の力強い演舞は五輪会場で輝くこと間違いなしだ。

団体競技も金メダル候補多い

総合種目ではなく、鉄棒での代表入りを目指す内村 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 団体競技に目を移すと、北京五輪以来3大会ぶりに五輪種目に復活した女子ソフトボールが、エース上野由岐子(ビックカメラ高崎)を軸に13年越しの連覇を目指している。24年のパリ五輪では開催競技から外れたが、20歳の速球左腕・後藤希友(トヨタ自動車)をはじめ若い選手も育っており、28年ロサンゼルス五輪での再復活のためにも東京五輪で勝ってアピールしたいと意気込んでいる。

「フェアリージャパン」の愛称を持つ新体操団体は、日本が近年めきめき力をつけている種目だ。世界選手権ではここ4大会連続で表彰台に上がり、19年には種目別ボールで団体史上初の金メダルに輝いた。複雑な手具の交換やスピード感にあふれた演技から目が離せない。なお、これまでの五輪で最も獲得メダルの多い体操競技の出場メンバーは、今月から6月にかけて行われる代表選考会を経て決定していく。3大会連続金メダルの期待が懸かる内村航平(ジョイカル)は、種目別鉄棒に絞って代表入りを目指す。

 日本オリンピック委員会が掲げる金メダルの目標数は、16個を獲得した57年前の東京五輪の約2倍に相当する30個。日本がメダルを最も多く獲得したのは16年リオデジャネイロ五輪の40個(金12、銀8、銅21)。また、金メダルを最も多く獲得したのは64年東京五輪と04年アテネ五輪の16個だった。21年夏、日本は歴史を塗り替えられるか。期待を抱いて注目したい。

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著者プロフィール

北海道生まれ。北海道大卒業後にスポーツニッポン新聞社に入社し、五輪、サッカーなどを担当。06年に退社し、以後フリーランスとして活動。Jリーグ浦和レッズオフィシャルメディア『REDS TOMORROW』編集長を務める。近著に『ザック・ジャパンの流儀』(学研新書)

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