連載:2020年プロ野球・守備のベストナイン

飯田哲也選出「セ・守備のベストナイン」 GG賞と同じ選手は半分以下の4人

平尾類
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セ・リーグの「守備のベストナイン」を選んでくれた飯田氏。専門である外野守備を中心に、熱い口調で分析、技術解説をしてくれた 【平尾類】

 プロの視点で2020年セ・リーグの「守備のベストナイン」を選んでくれたのは、1990年代にヤクルトの外野手として7年連続でゴールデン・グラブ賞(GG賞)に輝いた飯田哲也氏だ。現役引退後は古巣の東京ヤクルト、そして福岡ソフトバンクで外野守備・走塁コーチも務めた「外野守備の達人」は、各ポジションにどの選手を選出したのか。

巨人・小林の名前が挙がらないのは寂しい

投手には昨年GG賞を受賞している阪神の西を選出。フィールディングも高く評価しているが、何より素晴らしいのが、けん制だという 【写真は共同】

 現役時代、球界屈指の外野手としてヤクルトスワローズの黄金期を支えた飯田哲也氏は、1991年から7年連続でGG賞を獲得。俊足を生かした広い守備範囲と球際の強さでチームを幾度も救ってきた。外野フェンスを“駆け上がって”大飛球を好捕した美技を鮮明に覚えている野球ファンも多いだろう。ただ、抜群の身体能力を誇り、その守備は華やかなイメージが強いが、実は確実性を追求し、一つひとつのプレーに強い信念を持っていた理論派である。

 拓大紅陵高では、強肩強打の捕手として甲子園に出場。プロ入団後はまずセカンドで定位置をつかんでいる。外野だけでなく、さまざまなポジションを経験しているだけに、その分析、技術論には説得力がある。そんな飯田氏が選んだセ・リーグの「守備のベストナイン」は、先日発表されたGG賞とは顔ぶれがかなり異なり、重なったのは4人のみ。深い洞察力と鋭い観察眼で分析したうえで、GG賞が記者投票によって選出されることに疑問も呈した。
――投手はMVPに輝いた巨人の菅野智之がGG賞も受賞しました。

 2020年の菅野投手は素晴らしかったです。史上初の開幕から13連勝でチームに勢いをつけましたしね。沢村賞を獲得した中日の大野(雄大)投手もすごかった。分業制の時代にあれだけ完投したことには大きな価値があります。ただ「守備の名手」という観点で言うと、僕が選ぶのは阪神の西(勇輝)投手ですね。

 フィールディングは(動きが)俊敏で(送球が)正確ですが、なんといってもけん制が素晴らしい。テンポがよくてターンが速い。あと、感覚的な話ですが、間がいいんです。テンポよく投げたり、時間を長く取って投げたりとリズムが一定ではないので走者が走りにくい。あの間の取り方は絶妙です。投球はスライダーとシュートを駆使した横の揺さぶりが軸でベースの幅をうまく使えているし、制球も良い。けん制だけでなく投球技術も高いです。昨年は11勝しましたが、毎年コンスタントに勝てるのも納得ですね。

――西と阪神でバッテリーを組む梅野隆太郎が、3年連続でGG賞を獲得した捕手はいかがでしょう?

 中日の木下(拓哉)選手がリーグトップの盗塁阻止率.455と飛躍の年になりましたが、まだ現時点では梅野選手のほうが上かなと思います。

 捕手に求められるのは投手とのコミュニケーション能力。僕は高校2年秋から捕手をやって、プロ入り後は最初に内野、次に外野にコンバートされたので捕手の経験が長いわけではありません。ですので、あまり大きなことは言えませんが、梅野選手はサインの意図を投手に理解させて投げさせているのが伝わってくる。一朝一夕でなく、信頼関係を築かないとこの部分は難しい。阪神の投手陣が安定しているのは梅野選手の力が大きいと思います。

 ただ、本来ならば巨人の小林(誠司)選手の名前が挙がらないといけないので、寂しいですね。木下選手も肩は強いですが、小林選手とソフトバンクの甲斐(拓也)選手は別格です。捕手は走らせない時点で勝ちです。投手は走者が出ても「小林に任せておけばいい」と打者に集中できるので、強い球が投げられるし制球も良くなる。甲斐選手と差がついちゃいましたけど、もったいないですね。投手の良さも引き出しますし、好きな捕手です。
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著者プロフィール

1980年4月10日、神奈川県横浜市生まれ。スポーツ新聞に勤務していた当時はDeNA、巨人、ヤクルト、西武の担当記者を歴任。現在はライター、アスリートのマネジメント業などの活動をしている。

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