連載:2020年プロ野球・守備のベストナイン

セ・パ両リーグでゴールデン・グラブ賞9回 平野謙が選ぶ「パ・守備のベストナイン」

平尾類
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現役時代には広い守備範囲と、素早く、強く、正確な送球で当代きっての外野の名手として活躍した平野氏。GG賞9度受賞のレジェンドが選んだ「パ・リーグ守備のベストナイン」の顔ぶれは? 【平尾類】

 今季のパ・リーグの「守備のベストナイン」を選んでくれたのは、1980年代から90年代にかけて外野手としてNPB史上4位となる135補殺をマークし、ゴールデン・グラブ賞(GG賞)を9度獲得した平野謙氏だ。中日では不動のセンターとして活躍し、西武ではライトに定着してセンターの秋山幸二と「鉄壁の右中間」を形成した。セ・パ両リーグで名手として鳴らしたレジェンドは、各ポジションに誰を選出したのだろうか。

守備率は当てにならない

投手で選んだのは、過去にGG賞を4度受賞している涌井。「内野手みたいな動きをする」と、その巧みなフィールディングを称賛する 【写真は共同】

 セ・パ両リーグでゴールデン・グラブ賞を通算9度獲得した(中日で3回、西武で6回)平野謙氏。現役時代は従来の外野守備の常識を覆した“革命家”だった。

 当時は外野に転がった打球に対し、右利きの選手は左足を前に出して捕球するのがセオリーだったが、平野氏は「捕球してからいかに速く投げるか」を追求して、右足を踏み出すタイミングで捕球して3歩で送球していた。また、フライに対してはジャンプして捕球し、右足で着地して左足を踏み出してわずか2歩で返球する新たなスタイルを確立。現在では主流になっている外野手の動きを平野氏は先取りしていた。

 守備で大事なのは「創意工夫」。チームが勝つことに誰よりも執着した現役時代のプレースタイルと同様に、“忖度がない”分析は興味深く、選手に対する厳しい言葉も愛情に満ちていた。


――平野さんが選手の守備を分析するうえで重視していることは何でしょうか?

 僕は数字だけで選手を評価しないようにしています。例えば守備率ですね。難しい打球に突っ込んだ選手がボールを弾いて、それが失策になるケースがある。逆に難しい打球に対してトライせず、安打になったら守備率は下がらない。特に外野手の場合は守備率が当てにならないんです。

 できるだけ試合で直接見た選手の動きを基準に「名手」を決めたいと考えています。例えば、西武のスパンジェンバーグ選手は好きですよ。上手い下手ではなく、外野でも打球を目一杯追う。ああいう姿は好感が持てますね。あと、「格好良さ」にも目がいきますね。走塁で言えばソフトバンクの周東(佑京)選手の走る姿はきれいだなと感じるように、守備も見栄えがする捕球、スローイングをする選手は総じてうまい。そういう部分には惹きつけられます。

――なるほど。では早速、投手からいきましょう。ゴールデン・グラブ賞はソフトバンクの千賀滉大投手が受賞しました。

 僕はアマチュアで投手として評価され、中日にも投手で入団しています。ウエスタン・リーグで2勝しているんですよ。これはアピールしておかないとね(笑)。

 投手はフィールディングが得意ではない選手が少なくない。千賀投手はうまいけど、僕が選ぶのは楽天の涌井(秀章)投手ですね。打球を捕ってからのフットワーク、切り返しなど、すべての動作が速くて巧み。内野手みたいな動きをする。他ではソフトバンクの和田(毅)投手もフィールディング能力が高い。両投手に共通するのは、緊迫した場面でもきっちりこなすこと。場数を踏んでいるから変な緊張感もないのでしょう。

 ちなみに僕の現役時代は中日の郭源治がすごかった。投手の中でもずば抜けて俊敏で、送球も正確でしたね。
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著者プロフィール

1980年4月10日、神奈川県横浜市生まれ。スポーツ新聞に勤務していた当時はDeNA、巨人、ヤクルト、西武の担当記者を歴任。現在はライター、アスリートのマネジメント業などの活動をしている。

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